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ジュエル!  作者: asobito
バスティア学園編
22/67

第17話 2人の障害と核人の誕生

2012/3/4 前回の投稿で当初の目標だったお気に入り登録100件を無事突破することができました。ありがとうございます!今後もよろしくお願いいたします。

2012/3/5 この世界でのドラゴンの存在の確認の件をすこし訂正しました。竜人族という種族がいることを失念してました・・・。

2012/8/19 ご指摘のあった誤字を修正しました。

2012/10/9 ご指摘のあった誤字を修正しました。

 高等部での生活が始まって数か月が経ったある日、ハジメはヒルナン、エルレアと〔黄天亭〕に来ていた。案内された席に着いたハジメは店に入ってすぐに気付いた事をヒルナンに聞く。それはエルレアも気になった事だった。


「ヒルエさんなんか元気無いよな?」

「私もそう思う」

「あぁ、それなぁ」


 ヒルナンは「やはり気付いたか」と言う顔で答えた。来店した時ヒルエは他の客の応対をしていたので直接話してはいないが、小さな頃から同じ村で過ごしてきたハジメ達には一見普段通りに振る舞っているようでもすぐに分かる事だった。


「悩みの種はヨークソンさんらしいんだ」

「ヨークソンさん?」

「悩みの種って言うかヨークソンさんが何か悩んでるんじゃないかってさ」

「なるほどね」

「姉ちゃんも聞いていいものなのか悩んじゃってるってわけさ」

「そうか。ヨークソンさんの悩みってなんだろうな・・・」

「うーん、それはわかんねぇなぁ。考えててもわかんないし直接聞いてみようぜ?」


 そう言うとヒルナンは席を立とうとする。ハジメは驚いてヒルナンを止める。


「え? 今からか?」

「こういう事は即実行だ!」

「ヒルナン」

「ん?」


 エルレアは落ち着いた調子でヒルナンに話しかける。


「とりあえず昼食食べてからにしましょ」

「あ、注文したの忘れてた・・・」


 ヒルナンはすぐ浮かせた腰を下ろし料理が来るのを待つ。ハジメとエルレアは苦笑を浮かべながらそれを見ていた。

 食事を終え店を出た3人は街の中央にある広場に来ていた。


「で、ヨークソンさんとどうやって会うんだ? 城には入れないだろ?」

「ふっふっふ」

「なんだよ気味悪いな」

「今日はヨークソンさん姉ちゃんと会う日なんだな」

「お前よく知ってるな」

「会う間隔が決まってるからな。すぐわかるぜ! ヨークソンさんの事だから待ち合わせ時間より早く来るだろうし、広場に来た所を捕まえて問いただそうぜ!」

「こういう時のお前の行動力は感心するよ」


 半分呆れ混じりで言った事だがヒルナンは「だろ?」と自慢げな顔をしていた。


「2人共、あれ」


 エルレアが指す方を見ると丁度ヨークソンが門から出てくる所だった。3人はすぐにヨークソンの元へ駆け寄る。


「ヨークソンさん!」

「む? なんだヒルナンじゃないか。それにハジメ君とエルレアさんも一緒とはどうしたんだ?」

「ちょっと姉ちゃんの事で話があってさ」

「ヒルエ殿? 何かあったのか?」


 ヒルエの事と聞いて真剣な顔になるヨークソンを広場のベンチへ促して話を再開する。


「実はヨークソンさんが何か悩んでるんじゃないかって気にしてるみたいなんだ。だから何か悩んでるのかなと思って聞きに来たんだ」

「・・・君達は頼まれてきた訳ではないのだな?」

「え・・・うん」

「子供が興味本位で大人の事に首を突っ込むものじゃない・・・と、言いたいところだがな。ヒルエ殿の弟なのだから無関係という訳でもないか。それにしてもヒルエ殿に気付かれるとは私もまだまだだな・・・」


 怒られると思ったら一人で反省をし始めるヨークソンにキョトンとする3人。ヒルナンは再び質問をする。


「で、ヨークソンさんの悩みって? 姉ちゃんの事か?」

「む・・・ヒルエ殿も関係あるのだが・・・何と言ったらいいか」


 困った顔をするヨークソンだが3人に見つめられ溜息を吐いて悩みを打ち明けた。


「私も親衛隊の一員という事もあり過去に何度か結婚の話はあったのだ。特に私の身分と立場を利用しようと貴族連中からの話が多くてね。そのすべてを断り続けて結婚に関心がないと察したのか最近は大人しくなっていたのだが・・・」

「だが?」

「私が一般の民であるヒルエ殿と親しくしている事を知った一部の貴族達が猛反対しだしてな。特に自分の娘を薦めてきた者は相当屈辱的だったのだろうな。事あるごとにその事を持ち出してくるので困っているのだ」

「く、くだらねぇ・・・」

「ふ、たしかにくだらない事だな。私も無視したいのだが度を越した貴族たちがヒルエ殿に危害を加えないかが心配でな。どうしたものかと悩んでいたのだ」


(ヨークソンさんは親衛隊の一員とだけ言っていたが、次期国王のシャワルに一番近い人だからな。貴族達が将来の為にも強い繋がりを持ちたいのはわかるけど・・・どうしたものかなぁ)


 話を聞きながらハジメが考えているとヒルナンが思いついた事を口にする。


「シャワルに頼んで貴族に邪魔しないよう命令させればいいんじゃね?」

「ばっ、馬鹿者! 王子にそんな事頼めるわけないだろう!」

「む~、そっかぁいい考えだと思ったんだけどなぁ。貴族より立場が強い奴ってそんなにいないだろうしなぁ」


(貴族より強い立場か・・・。ん?)


「あの、ヨークソンさん」

「なんだね?」

「不満がある貴族達って名家だったりします?」

「ふむ、そこまでではないと思うが・・・」

「例えばバトマス家と比べたら?」

「それは断然バトマス家が上だろうな。あそこは名家中の名家だからな。だがそれがどうかしたのか?」

「いえ、もしかしたらどうにかなるかもしれません」

「?」

「今日は無理なんでまた後日になりますけど」

「あ、ああ。よくわからんが・・・。それでは約束があるので私はそろそろ失礼させてもらう。お前達、あまり変な事をするなよ。問題を起こせば自分だけでは済まないと肝に銘じておくように」


 ヨークソンが去っていくのを見届けながらヒルナンがハジメに話しかけてくる。


「なぁなぁ、どうにかなるかもってどうするんだよ」

「貴族より強い立場は無理でも"問題の貴族達"より強い立場に頼めばいいのさ」

「???」

「そっか、それでバトマス家ね?」

「そう言う事」


 エルレアが納得する隣で未だに話が分かってないヒルナンにハジメは丁寧に説明をする。


「つまりハンバーガーの伝手を使ってバトマス家にお願いするって事だな?」

「まぁそう言う事だな。どんな手段を取ってくれるのか、どんな条件が付くのかがわからないけどな」


 この日はこれで終わり3人は学園に戻ることにした。





 後日、ハジメとヒルナンの2人でバトマス家へ訪問したが主のシヨナは料理店〔バトマス〕の方にいると聞き、商店街へ向かった。


「おや、ハジメ君じゃないか」


 店に入ると〔バトマス〕の料理人が声を掛けてきた。


「こんにちわ。あの、シヨナ様はいらっしゃいますか?」

「オーナーなら奥にいるよ」


 料理人は店の奥を指差す。ハジメは普通に店の奥に進んでいくがヒルナンは料理人の対応に驚いていた。


「おい、ハジメってなんかすごい扱いがよくないか?」

「そうかな? たまに来て新メニュー開発に立ち会ってるからかな」

「お前知らない所でそんな事してるのか・・・」


 呆れてるヒルナンと共に奥にある部屋へ向かうと丁度部屋からシヨナと執事のスカリーが出てきた。


「あらあら、ハジメ君じゃない」

「こんにちわシヨナ様、スカリーさん」


 ハジメを見てニッコリ微笑むシヨナに一礼するハジメ。ヒルナンも慌ててハジメに続く。


「今日はどうしたのかしら?」

「実は、ちょっと相談事がございまして」

「あら、ハジメ君が相談なんて珍しいわね。まぁ立ち話もなんだからあちらで聞きましょう」


 シヨナに案内され、ハジメ達は応接室に向かった。応接室のソファーに腰を下ろすとすぐにスカリーがお茶の用意をする。


「さて、お隣はハジメ君のお友達かしら? 私はシヨナ・バトマス。ここのオーナーをやってます」


 やさしい笑みでヒルナンを見つめるが、相手が名家のバトマス家という事もあり緊張しているヒルナンはバッと立ち上がり自己紹介する。


「あ、オレ、じゃない私はバスティア学園騎士科1年ヒルナンと申します。はじめまして!」


 ガチガチに硬い挨拶を見てハジメは吹き出しそうになったがなんとか堪えることができた。シヨナは変わらない笑みで応えていた。


「ふふふ、元気なお友達ね。それで相談事というのは何かしら?」

「はい、実は―――」


 ハジメはヒルナンの姉ヒルエの事、ヨークソンとヒルエの事、ヨークソンの悩みを説明した。


「なるほど。それでその貴族達の事をどうにかしたいという訳ね」

「なにかいい案がないかと思いまして・・・」

「そうねぇ・・・」


 シヨナは「うーん」と考え込んでいたが何か思いついたのかパッと明るい表情に変わった。


「それじゃヒルエさんをバトマス家の身内という事にしたらどうかしら?」

「え?」

「は?」

「お、奥様!?」


 シヨナの発言にハジメ達は勿論、スカリーも驚く。それを見てクスクスと笑うシヨナ。


「そんなに驚かなくてもいいじゃない。本当に養子にするという訳ではなくてバトマス家の縁者だという事にしておくのよ」

「でっちあげるという事ですか? バレないですかね?」

「夫の方はともかく私の方の身内は商人が多いし大丈夫じゃないかしら。それに・・・」

「それに?」

「でっちあげだと知ってもバトマス家に文句を言ってくる貴族はまずいないでしょう」


 ニッコリと微笑むシヨナにハジメとヒルナンは硬い笑みを浮かべるしかできなかった。

 後日ヒルエも交えてバトマス家の縁者という事で話を合わせる事になった。最初は驚いていたが、ヨークソンの悩みを知ったヒルエは真剣にシヨナの話を聞いていた。

 その後ヨークソンにヒルエの事で文句を言ってくる貴族はパタリといなくなった。それどころか中には相手がバトマス家の縁者だと知った途端手のひらを返したように接してくる貴族もいた。初めは訳がわからなかったヨークソンだったがハジメ達から説明を受けて呆気にとられていた。





 ヒルエとヨークソンの問題を解決してから数か月後、ハジメはいつも通り〔黄天亭〕で昼食を食べ、そのままエルレアから借りていた本を読んでいた。高等部に上がる前に手に入れたという世界の小動物について書かれたものだったのだが、チラリと見た時に目を疑う事が書かれていたので借りてきていた。


「いやぁ、見間違いかと思ったけどそうじゃなさそうだよなぁ」


 あるページに書かれた動物をマジマジと見てそんな独り言をつぶやく。


「名前は違うようだけど・・・これってツチノコだよな・・・」


 そこに書かれていた蛇は前世の世界で幻の生物として扱われていたツチノコだった。


「生息地はこの国じゃないのか。見てみたかったなぁ」

「何を見てみたかったって?」


 声を掛けられて慌てて見上げるとヒルナンとラニアンが立っていた。


「なんだお前等か」

「なんだとはなんだ。で、何が見たかったって?」

「ああ、珍しい生き物が沢山いるなぁと思ってな」


 ハジメは本を指で叩きながら話す。


「他の大陸ではここでは見たことないような生物がいるっていうからね。僕も祖父から色々聞いた事あるよ。角の生えた馬とか首が二つある狼とか火を吐くトカゲとかね」

「へぇそんなのがいるんだな」

「さすがラニアンそういうの詳しいよなぁ」


 ラニアンの話に感心する2人。


(一気にファンタジーな話になったな。魔法があるわけだし、やっぱりこの世界はそういう生物がいるのか・・・。あ、じゃあアレもいるのかなやっぱり)


 ハジメは前世でのファンタジーの定番の生物の名前を聞いてみた。


「じゃあさ、ドラゴンもいたりするかな?」

「ドラゴン?」


 ハジメの質問に首を傾げるヒルナン。


「あ、リュウって言うのかもしれないけど。トカゲを大きくした感じで首が長くて羽があったりするんだけど」

「う~ん、竜人族の名前の由来が竜って言う空想上の生き物らしいけどそれの事なのかも。ただ、どんな姿なのかは僕は知らないんだ。ごめんね」

「そうだ、絵に描いてみろよ。もしかしたら名前が違うだけで見たことある生き物かもしれないぜ?」

「ん? ああいいけど・・・」


(オレ絵心に自信があるわけじゃないけどどうにかなるかな・・・)


 紙とペンを用意したハジメは頭の中で自分の知っているドラゴンをイメージする。


(たしかゲームとかのドラゴンって・・・)


 2人が見守る中、姿形を思い出す為考え込んでいると胸元で何かが膨らんでいく感触がした。膨らんだと思ったら今度はガサゴソと動き出すのでハジメは慌てて襟を引っ張り中を見ようとする。すると開いた襟元から白い何かが飛び出してきた。


「うわっ!」

「えっ!?」

「なっ、なんだぁ!?」


 突然の事に驚く3人。飛び出してきた白い物体はテーブルの上に着地すると「キュルルルル」と鳴き声を上げた。


「え? なにこれ・・・」

「ト、トカゲか?」


 今まで見たこともない生き物に驚くラニアンとヒルナン。だがハジメだけは違う理由で驚いていた。


「ド、ドラゴンだ・・・」

「え? これが?」

「ああ、思ってたよりだいぶ小さいけどな・・・」


 そこには真っ赤な眼で純白の鱗に覆われ掌に乗るくらいの大きさのドラゴンがいた。


「でもなんでハジメの胸からそれが出てくるんだ?」


 そう言われてハジメは再び胸元を覗き込む。すると首に掛けていた魔晶石が無くなっている事に気が付いた。


「もしかして核人か・・・?」

「え? 核人?」

「マジで!?」

「キュルルルル!」


 ハジメの問いかけに鳴き声で答えるドラゴン。ハジメが恐る恐る手を出すと羽をパタつかせながら近づき、顔を摺り寄せてきた。それを見て害がないと分かったのか3人ともホッと安心する。


「何が起きたのかと思ったけど核人が生まれたのか・・・」

「すごいよ、僕初めて見た・・・」

「オレも・・・」


 急に慌てだした3人に周りの客も何が起きたのかと注目していたが、次第に視線もなくなっていった。


「んで、どうするんだ?」

「どうするって?」

「コイツの面倒みなきゃいけないだろ? 学園になんて言うんだよ」

「あぁ、そうだな・・・。とりあえずフォケロ先生に相談するかな」

「それが妥当だな。で、コイツ名前どうするんだ?」

「名前かぁ・・・」


 手に寄り添って「キュルキュル」鳴いているドラゴンを見ながら名前を考える。


「・・・・・・パルってのはどうだ?」

「パルかぁ。いいんじゃね?」

「僕もいいと思うよ」

「お前はどうだ?」


 ハジメがドラゴンに問いかけると嬉しそうに鳴いた。


「よし、じゃあ今日からお前はパルだ。よろしくなパル」

「よろしくな!」

「よろしくパル」

「キュルルルルル!」


 その後学園に戻りフォケロに事情を話すとあっさりと許可が下りた。学生が核人の主になることが異例中の異例だったのだが、それは学生の能力の高さを表す意味もあり学園の評価も上がる事だろうという結論になった。ただ、問題を起こさないように厳重に注意は受けた。

というわけで新しく核人パルが誕生しました。

この世界ではツチノコは何と呼ばれているのか・・・気になるところですね!

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