間話 少女達の午後のティータイム
2012/07/20 指摘のあった誤字を修正しました。
進級試験の結果発表のあった日から進級が決定した生徒は進級式まで休校になっていた。その間生徒達は来年からの勉強に備え自主的に予習や復習をしていた。
その日エルレアはクラスメイトのラミィ、元ハジメ団のリニスと街での買い物を楽しみ、〔黄天亭〕で午後のティータイムを過ごしていた。
「今日はいい物手に入っちゃったなぁ」
ラミィは髪留めを見つめてニヤニヤしている。
「かわいいのが見つかってよかったねラミィちゃん」
「うん、さすがリニスちゃんのオススメのお店だね!」
「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しい」
「エルレアちゃんは何かいいモノ見つかった?」
「うん、これ」
エルレアはテーブルに置いていた本をポンポンと叩いた。
「私達がアクセサリー見てる間何処か行ってたと思ったら本見てたのね・・・」
「エルレアちゃんらしいと言えばらしいけど・・・。ちなみにどんな本?」
「小動物図鑑。めずらしい動物載ってたから」
「うーん・・・エルレアちゃんもアクセサリーとか付けたらいいのに。それだけ可愛いんだからきっと似合うのになぁ」
リニスの言葉にラミィもうんうんと頷いている。だが当の本人はその気がないのかニコリと微笑むだけだった。歳の近い3人だが成長が遅いエルフ族のエルレアだけだいぶ幼く見えた。将来間違いなく美人になるであろう美少女の乗り気じゃない反応を見て溜息を吐くリニスとラミィ。しかたなくラミィは話題をリニスに変えた。
「リニスちゃんは道具屋の仕事はどう? やっぱり大変そう?」
「うーん、まだ雑用をしてるだけだけどやる事って沢山あるんだなぁって驚いてるよ。今までお手伝いくらいしかしてなかったけど、大した事してなかったんだなぁってちょっと反省してるんだ」
「お店をやっていくって思ってる以上に大変そうだね」
「うん、お父さんの仕事を知るほど大変なのがわかるね。がんばらないと!」
「がんばってね、リニスちゃん。応援してる」
「私も! がんばって!」
「ありがとう! エルレアちゃん、ラミィちゃん」
それから買ってきた物や食べているお菓子の話で盛り上がっていた3人だが話題はハジメ達男子の事になった。
「そういえばボス・・・ハジメ君やヒルナン君って学園の女の子に人気なんだってね。・・・ラニアン君も人気みたいだし」
「あれ? ラニアン君が人気だと困る?」
リニスの発言にすぐさまツッコミを入れるラミィ。リニスは慌てて否定する。顔を真っ赤にしながら。
「ち、ちがうよ! 別にそんなんじゃないよ! ラニアン君も商人目指してるからお店の事とかたまに話すだけで・・・。す、好きとかそういうんじゃ・・・。そりゃ、話してて楽しいから話込んじゃうけど・・・って、えっと・・・」
「リニスちゃん混乱してるとこ悪いけど墓穴掘ってるよ」
ラミィがニヤニヤしながら言うと、リニスは真っ赤になったまま俯いてしまった。
「まぁこれ以上は可哀そうだしこの辺にしておこっか。で、ハジメ君とヒルナン君って学園で結構人気だよね。エルレアちゃんも含めて同じ村出身の3人がそれぞれ人気者なんだからすごいよね」
「私はそんなに人気じゃないと思うけど」
否定するエルレアだったが、ラミィはブンブン首を横に振りそれを否定した。
「3人の中で一番人気だよ。これは間違いないね! 隣にいるとすごい分るよ。周りの視線がすごいもの」
「そうかな?」
「気付いてないんだ・・・」
首を傾げるエルレアにラミィはあきれ顔になった。そこで俯いていたリニスが復活して話に参加してきた。
「そ、そうだ。ハジメ君とヒルナン君って村ではどんな子だったの?」
「あ、それは私も知りたい。小さい頃の2人って気になる」
2人はエルレアをじっと見つめる。少し考えてエルレアは口を開く。
「ヒルナンは今と一緒。昔からワンパクだったよ。村に剣の師匠いてその師匠から学んでいたのだけど一番呑み込みが早かった。剣の才能があったんだと思う。ヒルナンが生まれてすぐに亡くなったお父さんも凄腕の剣士だったって聞いた事もあったしね。皆を守れる騎士になりたいっていうのはお父さんへの憧れがあるのかもね」
「そっか、ヒルナン君が騎士目指すのってそういう理由もあったんだね」
「本人は絶対認めないだろうけど。意外と恥ずかしがり屋だしね」
「恥ずかしいとか無縁だと思ってた・・・」
「私も」
そう言うと3人ともクスクス笑っていた。
「それじゃハジメ君はどんな子だった?」
「うーん・・・不思議な子だったかな」
「不思議な子?」
「小さい頃から勉強とか色々できて村の子供達のお手本になってたの」
「天才ってやつだね」
「たしかに最初はすごく頭がいいって思ったのだけど・・・」
「けど?」
「頭がいいのは確かなんだけど。なんて言ったらいいか・・・すごく要領がいい・・・かな。勉強するにしても勉強の仕方を最初から知ってる感じだったから」
「天才ってそういうものなのかなぁ」
「うーん、周りにそんな子いなかったからなぁ・・・」
3人で悩んでいると店の入り口から声が聞こえてきた。
「あ! やっと見つけましたよ、エルレアさん!」
3人が声のする方へ向くと担任のレーネットがこちらに歩いて来ていた。
「あれ? レーネット先生。どうしたんですか?」
「あら、ラミィさんも一緒だったんですね。えっと・・・そちらの方は?」
「あ、私はリニスって言います。エルレアちゃんとラミィちゃんと仲良くさせてもらっています」
リニスは丁寧にお辞儀をする。さすが商人の娘とエルレアとラミィは感心して見ていた。レーネットは慌ててお辞儀をする。
「これはこれはご丁寧に。私はエルレアさんとラミィさんの担任のレーネットと申します。初等部から引き続き学術部の1年生の担任になりますので2人の担任継続ですね。いやぁ、優秀な生徒さんが居てくれると私も安心です。私の仕事も手伝ってもらえそうですし。あ、私の研究してる題材はですね――――」
「あのレーネット先生・・・用事があって来たんですよね?」
「あ! そうでした! エルレアさんに頼みたい事があってですね」
「頼みたい事?」
「あのですね。エルレアさんに学術部1年代表になってもらいたいのですよ。毎年成績の一番優秀な生徒がなることになってまして」
「代表・・・」
「代表だって! すごいよエルレアちゃん!」
エルレアよりも隣で聞いていたラミィが興奮しだした。だがあまり人前に立つのが好きではないエルレアは回避しようと考えていた。
「他の人はダメですか?」
「うーん・・・毎年恒例な事なのでそれは難しいですねぇ・・・」
「やろうよエルレアちゃん! 私も手伝える事あったら手伝うよ!」
「そうですよ。全部1人でやるわけではないですからね。騎士科と魔法科の代表もいますし」
「騎士科と魔法科?」
「はい! たしか2人共エルレアさんと同じ村出身の生徒だったと思いますよ」
「すごい! ヒルナン君とハジメ君も代表なんだ!」
ラミィはさらに興奮状態になっている。少し考えてエルレアは了承することにした。
「わかりました。代表をやります」
「ありがとうございますエルレアさん! で、早速なんですが進級式は学術部が仕切る事になっていて1年代表は来年の為に打ち合わせから参加する事になってるんでよろしくお願いしますね! それじゃ私はこれで失礼しますね!」
それだけ言うとレーネットはすぐに店を出て行ってしまった。それを3人はポカンと見つめていた。
「先生言いたい事だけ言って行っちゃったね・・・」
「そうだね」
「こ、個性的な先生だね」
「・・・あ!」
ラミィは何か気付いたのか声を出す。
「どうしたの? ラミィちゃん」
「打ち合わせっていつあるんだろう?」
「・・・・・・さぁ?」
後日エルレアはレーネットの元に打ち合わせその他諸々を再度聞きに行く事になる。この日から学術科1年代表と言う名のレーネットの助手をやる事になった。
女の子たちの日常というわけでこんな感じになりました。
当然の事ながらガールズトークの経験はないので想像ですね。まさにファンタジーですね。