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ジュエル!  作者: asobito
バスティア学園編
20/67

第16話 勉学に勤しむ2年目はサラリと過ぎていく

 村での連休を過ごし、ハジメ達は学園生活2年目を迎えた。

 初等部は主に一般的な知識を学ぶ為にあるので、2年目を終えそのまま家業を継いだり自分のやりたい職業に就くため進級せずに卒業する生徒の数が約半分になる。進級を目指す生徒は自主勉強に時間を費やさなければいけないので授業の時間も1年生の頃より少なくなっている。ハジメ、ヒルナン、エルレア、ラニアンは進級組なのでそれぞれが進みたい科の勉強を重点的にしていく事になった。授業以外は各自自主勉強をするようになったので1年の頃より一緒にいる事は減ったが、食事の時や休日は一緒に過ごして勉強の愚痴やくだらない雑談をして過ごしていた。





 2年目も3ヶ月程過ぎたある休日。ハジメは街の本屋へ魔法関係の本を見に出掛けていた。適当に本を物色し、気になる本を数冊購入した。シヨナから毎月貰えるハンバーガーの利益の一部があるので、金銭的に学生ではなかなか手が出せない本も買う事が出来た。


(欲しい物がすぐ手に入るのは嬉しいけど手元に大金があると無駄遣いしちゃいそうだな・・・今度ラウにある程度預けておこう)


 そんな事を考えながら昼食を食べる為〔黄天亭〕に向かう。店内に入るとヒルエが出迎えてくれた。


「あら、坊ちゃんいらっしゃいませ」

「ヒルエさん、坊ちゃんはやめてよ。村じゃないんだから」

「いえいえ、坊ちゃんは坊ちゃんですから。あ、ヒルナン達が向こうの席に居ますよ」

「え? ヒルナン達来てるんだ」


 ヒルエの指差す方を見るとヒルナンとラニアン、シヤンがこちらに向かって手を振っていた。


「それじゃオレもあの席にするよ。あ、注文はいつものランチで」

「はい、わかりました」


 ヒルエにそう言うとヒルナン達のテーブルに向かう。


「よぉ! ハジメも街で用事だったか?」

「面白そうな本ないか見に来てただけだけどな」


 ハジメは紐で纏めた数冊の本を見せた。それに食いついたのはラニアンだった。1冊の本を指さしてハジメに聞く。


「あ! それって中級魔法の参考書だよね?」

「ん? ああ、初級はもう使えるし。そろそろ中級魔法も勉強しておこうかなと思ってな」

「あ、あのさ、読み終わったら貸してくれないかな。僕にはとても高くて買えないし学園の図書はいつも貸し出し中で・・・」

「それならオレ他にも本あるし先に読むといいよ」


 ハジメは紐を解いて参考書をラニアンに差し出す。ラニアンは慌てて拒否した。


「いやいや! 読み終わった後でいいよ! 買った人より先に読むなんて」

「自分の属性の中級魔法はだいたい知ってるし急いで読む必要もないんだ。暇つぶしにそのうち読もうかなくらいに思ってただけだしな。だからホラ」


(新しい魔人魔法の参考になるかなと思って買っただけだしな)


「う・・・そういうことなら。ありがとう! でも中級魔法もう覚えてるって・・・初等部の範囲超えてるよね」

「さっすが天才ハジメだな!」

「うっさい! ヒルナン、お前だって初等部のレベルとっくに超えてるだろ。ラニアンだって中級勉強しようってんだから初等部の範囲は問題ないって事だろ?」

「ぼ、僕は2人やエルレアさんとは違うよ!」

「なんかそれだとオレ達常識外れみたいだな」

「え? あ、えっと・・・そうじゃなくって・・・」

「ボス達ってすごいんスねぇ」


 しどろもどろになるラニアンを余所にシヤンはハジメ達に関心するばかりだった。


「そういやシヤン達はどうすんだ? どっかで働くのか?」


 ハジメはハジメ団のメンバー達の事を聞いた。


「リニスは家が道具屋だから家の手伝いッスね。オレや他の連中もそれぞれ来年から見習いとして働く予定ッス。ちなみにオレは鍛冶屋ッス」

「なんだ、もう働くところも決まってんだな」

「街の子供は12,3歳になればどこかの店で働きだすってのが習わしみたいになってるから働き口がないって事はまずないッスね。他の街の知らない奴より生まれた時から知ってる奴の方がいいって事じゃないッスかね」

「なるほどなぁ」

「その辺は他の村でも一緒だね。僕の村でも学園に行かない子は10歳過ぎたら手に職を持つため働きに出たりするよ」

「皆ちゃんと先の事考えてんだなぁ」


 シヤンの説明にラニアンの補足が加わる。自給自足の村の生活しか知らないハジメとヒルナンは感心して聞いていた。





 試験勉強に重点を置いた2年生の生活はあっという間に過ぎ、進級試験が目前に迫っていた。ハジメ達は元々初等部の中でも優秀な生徒だったので特に心配はなかった。試験内容は事前に聞かせられていたので各自対策と準備に追われていた。

 ハジメが受ける魔法科の試験は入学試験の時と同じように魔法を実際に使って見せるものだった。だが今回は初等部で習う魔法とそれ以外の魔法をなにか1つ見せなければならない。初等部で習う魔法をちゃんと使いこなせられる事はもちろん、独学でさらに上位の魔法を使えるかという才能と意欲を見る事が目的だった。

 ヒルナンやエルレアが受ける騎士科、学術科の試験も入学試験の難易度をさらに上げた物だったが問題はなさそうだったのでハジメは特に心配していなかった。ラニアンは独学で魔法を覚えるのに苦戦していたがハジメも練習に付き合ってどうにか試験までには使いこなせられるようになっていた。





「さて、それじゃがんばりますか」

「うう・・・緊張してきた・・・」


 魔法科進級試験の日、ハジメとラニアンは魔法科棟の試験場に向かっていた。各科の試験日は違っていて騎士科の試験はすでに終わっていた。学術科の試験は数日後にあり、全科の合否の発表は同じ日に行われる予定になっていた。

 魔法科棟に入り試験場の部屋の前で待つハジメ達。緊張した表情のラニアンを見てハジメは入学試験の時を思い出していた。


「そういや入学試験の時も一緒だったよなぁ」

「あ、そうだったね。僕緊張しすぎて周り見えてなかったけど・・・」

「たしか名前呼ばれて声裏返ってたよな」

「うっ・・・よ、よく覚えてるね・・・」

「今日は裏返らないといいな?」

「裏返らないよ!」


 ニヤリとハジメが笑うと、緊張が解けたのかラニアンも笑顔になった。そんな事を話していると部屋の扉が開き、試験官が出てきた。


「では次。ラニアン君、中に入って下さい」

「は、はい!」

「落ち着いて行けば楽勝だ、がんばれよ!」

「うん、行ってくるね」


 名前を呼ばれたラニアンはハジメの声援に応え部屋に向かって行く。それから30分程してラニアンが出てきた。どんな感じだったか聞こうと思ったが、その後ろから試験官が次の生徒を呼ぶ。


「では次、ハジメ・アメジスト君」

「あ、はい!」


 ラニアンの結果を聞く事は断念して部屋に向かう。すれ違うラニアンから声がかかる。


「がんばって!」

「ああ、まかせとけ」


 部屋に入ると試験官が3人座っていた。中央の席には担任のフォケロが座っている。ハジメの顔を確認してフォケロはいつもの笑顔で話しかける。


「それではハジメ君、早速ですがまずは初級の魔法を見せて下さい。ハジメ君は2属性扱えるんでしたね。どちらからでも結構ですよ」

「はい」


 ハジメは初等部で習う火と風の初級魔法を順番に見せる。


「ふむ、やはり優秀ですね。文句なしでしょう。次は個人で覚えた魔法を使ってみてください。あ、使う前にどんな魔法か教えて下さい」

「はい、火と風の中級魔法を一通りやってみます」

「え? 一通り?」


 ハジメの言葉を思わず聞き返してしまったフォケロ。他の試験官も驚きが隠せないのか目が点になっている。中級魔法は魔法科に入ってから学び出す事が一般的で、初等部の段階で1つでも使えたらかなり優秀な部類に入る程だった。

 ハジメは初級魔法の時と同じように淡々と中級魔法を披露していった。こちらも全く問題のない完璧なものだった。


「す、すばらしいですね・・・。いやはや、ここまで優秀だとは」


 フォケロも苦笑いしながら手にしていた書類に書き込みをしていた。


「はい、それでは試験はこれで終わりです退室してもらっていいですよ。お疲れ様でした」

「ありがとうございました」


 ハジメは一礼して部屋を出る。魔法科棟を出るとラニアンが入口で待っていた。


「お疲れ様。どうだった? うまくいった?」

「ああ、なんか驚かれてたけどな」

「驚かれてた?」

「個人で覚えた魔法披露しろって言われて火と風の中級魔法一通り見せたらね」

「そ、それは驚かれるよ・・・っていうかいつの間に使えるようになってたの?」

「練習したのはラニアンに貸してた本返してもらってからかな」

「3ヶ月で全部使えるなんて・・・僕なんか1つ覚えるだけでやっとだったのに」

「1つでも使えるようになってんだから合格間違いナシだろ。これはお互い合格っぽいな」

「同じ合格でもすごい差を感じる合格だね」

「合格に変わりないんだし気にする事じゃないさ。大事なのはこれからさ」


 苦笑するラニアンに笑って応えるハジメだった。

 魔法科の試験の数日後、学術科の試験も終わり結果発表の日がやってきた。結果は4人とも合格。無事進級することができた。試験の手応えからまず合格だろうと考えていた4人は納得の結果に安堵した。

 シヤン達もそれぞれの働き口で見習いとして働きだした。ハジメ団は事実上解散となったが休日には〔黄天亭〕で集まる習慣は変わらなかった。





 魔法科1年目の初日ハジメは新しい腕章を付け学園中央の広場に居た。そこに同じ魔法科の腕章を付けたラニアンがやって来る。


「おはよう、ハジメ君」

「ああ、おはようラニアン。ヒルナンは?」

「えっと・・・あそこに」


 ラニアンが指さす方を見るとフラフラとこちらに歩いてくるヒルナンが居た。


「アイツまた夜更かししたのか・・・」

「なんか緊張して寝れなかったらしいよ」

「アイツでも緊張するんだな」

「ホントにね」


 ラニアンが思わず笑っていると、こちらに来ていたヒルナンがそれに気付く。


「ふぁぁ~・・・オッス。で、なんか面白い事でもあったか?」

「ああ、どっかの誰かさんが柄にもなく緊張してるらしくてさ」

「へぇ~・・・・・・って、それオレの事じゃねぇか!?」

「お、目が覚めてきたみたいだな」

「くっ! でも緊張してるのは否定できない・・・。そういやエルレアが居ないけど寝坊か?」

「お前と一緒にするなよ。エルレアはもう先に行ってるぞ。今日の段取りとかいろいろあるんだってさ」

「おお、さすが学術科1年代表だな。今日の挨拶もエルレアだけにしてくれればいいのに」

「そうはいかんだろ騎士科代表。進級式で各科の1年代表が挨拶するのは決まりらしいしな。まぁ諦めて頑張れ」

「諦めて頑張るってややこしいな! っていうかお前も魔法科代表だから挨拶するんだろ!」

「数行の文を読むだけなんだからそんな大したことないだろ。魔法の詠唱みたいなもんだな」

「大人数の前で挨拶するのと魔法の詠唱一緒にできるお前がすげぇよ・・・」

「あ、二人ともそろそろ講堂に行こうよ」

「ああ、そうだな」

「うう、緊張するな・・・」


 3人は講堂に向かって歩き出した。

そんなわけであっさりですが高等部である魔法科に進級しました。

予定ではここまでで学園編半分というところですかね。計画通りに行けば・・・ですが。次回以降もがんばります。

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