第8話 王子達との交流と襲撃
2012/08/16 ご指摘のあった誤字を修正しました。
[とある街の酒場]
「くそっ! なんであんなとこで邪魔する奴が出てくるんだっ!」
男はグラスをテーブルに叩きつけるように置く。同じテーブルに座る男達も一様に顔に苛立ちを浮かべていた。男達は拠点を持たない流れの傭兵達だった。前に居た国での仕事も減ってきたので、十日ほど前にこの国に来ていた。傭兵と言っても金になれば殺しでも人攫いでも何でもする犯罪集団のようなものだった。
事の発端はいつものように稼いだ金で昼間から酒場で酒を煽っていると黒いローブを着た男が話しかけてきた。男は港町から王都に向かう馬車の中にいる人物を殺してほしいというものだった。ローブの男は標的がどんな人物か言わなかったが護衛の騎士は少数で特に問題もなさそうだった。男は出された大金に目がくらんだ事もあり、二つ返事で引き受けた。相手が騎士でも数さえ揃えて挑めばうまくいく自信があった。
計画実行の日、傭兵仲間を10人集め港町の近くで待ち伏せる。ローブの男の言っていた時間通りに町から馬車と騎士を乗せた馬5頭が出発するのを確認できた。人気のなくなるのを待って襲撃。騎士の数人に手傷を負わせ、逃げる馬車を追いかけて馬を潰して足止めさせる。後は手傷を負った者を含む騎士達を始末して標的を殺せば任務完了。あまりに上手く事が進み思わず顔が緩みかけた直後だった。突然騎士とにらみ合っていた仲間の一人が吹き飛ぶのを視界の隅に捉える。周りの仲間も騎士達も止まってそちらを見てしまう。吹き飛んだ男は気を失ってしまったようだ。次の瞬間他の仲間が足を斬られ倒れ、2人が矢に射抜かれる。そこで騎士達に救援が来たことに気付く。それに乗じて騎士達の士気も高まっている様だった。さらに救援に来た男の怒声で仲間達が怯んでいる事に気付いた男はすぐ撤退を仲間達に命じた。怪我をした仲間を馬に乗せ一目散に逃げ出す。そしてこの街まで戻ってきて今に至る。
「これじゃ金にならねぇ、無駄働きじゃねぇか!」
「ボルザよ、怪我した奴らの治療費どうするよ?」
仲間の一人がそう聞くとボルザと呼ばれた男は仲間を怒鳴りつける。
「そんなもんはそいつらの自腹に決まってんだろ! そこまで面倒見るつもりはねぇ!」
怒鳴りつけられた仲間もそれ以上は何も言わなかった。仲間と言っても金の繋がりしかなかったからこれ以上心配する気もなかった。
「まぁまぁ、そんなに苛立つ事はありませんよ。」
ボルザの後ろから声がかかる。ローブを着た男が立っていた。フードを深くかぶり顔は確認できなかったが30~40歳ほどの細身の男だった。
「あ、あんたか・・・わりぃ、依頼は失敗しちまった。」
「えぇ、離れたところから見てましたから知ってます。」
ローブの男は相変わらず温和な口調で話す。まるで失敗を気にしていないようでボルザはホッ安心したようだ。
「み、見てたのかよ・・・。なぁ、もう一回チャンスをくれねぇか? 次こそはうまくやるぜ。」
金が欲しいボルザはダメ元で聞いてみると、ローブの男はニヤリと笑い答えた。
「そう言ってくれると助かります。こちらもこれで諦めるわけにはいかないのでね。」
「おお、ありがてぇ。次はもっと準備をして挑むぜ。」
「なら人数をもっと揃えてもらえると。騎士達は村に滞在しているようです。数日は滞在しているようなのでその間に始末して下さい。村ごと潰してもらっても構いません。」
「へへっ。わかったぜ人数集めて村ごとだな。」
ボルザは下卑た笑みを浮かべるとすぐにその場に居た仲間に人を集めるように命令する。
(使えない馬鹿共だが扱いは楽で助かる。次こそは成功してもらわないとな・・・。)
ローブの男はそんな事を思いながら目の前の男達を見ていた。
[オルタスの家]
「それでは改めまして、オレがこの村の村長のオルタス・アメジストと申します。こちらは妻のクラウです。後ろに立っているのが息子のハジメ、執事のラウスペムス、そして村の警備主任をしているドルガンです。」
オルタスとクラウは座った状態で頭を下げる。他の3人もそれに合わせて一礼する。テーブルを囲って一方はオルタスとクラウが座り、後ろにはハジメとドルガンとラウが立っていた。反対側にはシャワルが座り、騎士が1人後ろにいた。怪我した騎士は村で治療を受け、残りの騎士は家の前で待機していた。
「オルタス殿にクラウ殿ですね。私はシャワル・グァロキフス。後ろに立つのはヨークソンと言います。」
紹介されたヨークソンは2人に向かって一礼すると「少しよろしいでしょうか。」と喋りだす。
「オルタス殿達は我らを助けてくれた恩人、大変感謝はしておりますが、村長という身分で王子と同じ席で話をするというのはいかがでしょうか。」
ヨークソンは一国の王子と村長が同じ席で対等に話をするのが気に入らなかったらしい。身分で言えば王族と平民なのだからそれは当然だった。だがオルタスは全く気にしてなかった。
「あぁ、それは済まない事をしたね。どうも長生きしてるとそういう事に疎くなっていけない。」
「は?」
オルタスの言葉にヨークソンは首を傾げる。オルタスが自分と5歳ほどしか変わらないように見えるからだった。そんなヨークソンを余所にシャワルは話を始める。
「ヨークソンが大変失礼な事を言いました。気にしないで下さい。ところで、オルタス殿はもしや『軍団』のオルタス殿ですか?」
「うわ、懐かしい名前を知っているね。やっぱりアイツの子孫だからかな?」
驚いたオルタスは思わずいつもの口調に戻る。ヨークソンはそれに対して口調を強めて注意する。
「オルタス殿! 王子に向かって無礼な口は慎んでいただきたい!」
それに対してシャワルが口を開く。
「無礼なのはヨークソンの方です。こちらの方は我々どころか我が国の恩人ですよ!」
それを聞いてヨークソンの頭に疑問符が浮かぶ。グァロキフス国の恩人なら自分が知らないはずはないと思ったからだった。それを見たシャワルはオルタスについて説明する。
「オルタス殿は初代国王オルバスタ様と共にこの大陸を平定したまさにこの国の大恩人。この方がいなければグァロキフスはなかったと言っても過言ではありません。」
「いやいや、それは言い過ぎだよ。そこまで大した事してないよ?」
オルタスは照れながら否定する。それを笑顔で見ているクラウと説明したシャワルとラウ以外は一様に驚きの表情だった。思考停止からいち早く戻ったのはハジメとドルガンだった。2人は魔人のオルタスが300年生きている事を知っていたから「そんな事をしていても不思議じゃないか」と納得していた。それから間を置いてやっとヨークソンも復帰して声を荒げる。
「そんなバカな! 250年以上前の事ですよ!? 生きてるわけないじゃないですか!!」
ヨークソンも『軍団』と呼ばれた英雄がいるという事は知っていた。しかしそれはもはやお伽噺の世界のような昔話だったのでその人物が目の前にいるとは理解できなかった。
「まぁ、普通はそうだよね。王子はよくそう思ったね?」
「はい、先祖代々語り継がれていた事で私も子供の頃に父から聞かされました。どうにもならないほど困った事があれば『軍団』のオルタス・アメジストという人を頼れ。これは王族の中でも王にしか伝えられない秘密ですので。」
「うわ、オルバスタのやつ厄介事全部オレに押し付けて逝ったのか!?」
「オルバスタさんらしいですね。」
呆れるオルタスと笑うクラウ。その2人を見て微笑むシャワルだったが真面目な顔になりヨークソンを見る。
「そういう訳なので今聞いた事は他言無用に願います。わかりましたか?。」
「は、はい!」
狼狽していたヨークソンはシャワルにそう言われすぐ気を引きしめ直す。今聞いた事は王のみにしか伝えられない国家機密より重要事項だったので思わず聞いてしまったヨークソンは冷や汗をダラダラ流している。元々仕事に対しては徹底していたのでヨークソンを信頼してるシャワルは特に心配していなかったのだが。
「オレの話はこの辺にしておいて、襲撃の話をしようか。」
「はい。私達は父の代わりに港町で行われた新しい船の進水式に出席して、それも無事に終わり王都に帰る途中でした。」
「あまり大げさな護衛は必要ないと王子の要望でしたので少数精鋭でお守りしていました。街道さえ通れば特に危険な事もなかったのと、行きに何もなかったので油断していたのかもしれません。まさか盗賊の集団がいるとは思いもしませんでしたが。」
シャワルとヨークソンが襲撃までの経緯を教える。ここ数十年は平穏そのもので盗賊などの犯罪者も数が減っていた。その盗賊も農民や商人などを襲うだけで騎士の集団に挑む者は皆無と言ってよかった。そこでそれまで黙っていたドルガンが口を開く。
「オレが思うにアイツ等は盗賊じゃないと思います。どちらかというと傭兵とかそんな感じでした。」
ドルガンは自分が感じた事を話した。それを聞いたオルタスが考える。
「という事は、誰かに雇われて王子達を襲ったって考えた方がいいのかもな。」
「誰かの指図で王子が狙われたのですか!?」
オルタスの予想にヨークソンが驚く。だがドルガンの言うとおり相手が傭兵なら裏で指示している人物がいる可能性が高い。
「うーん、その傭兵達これで諦めると思うかい?」
「さらに人数増やして襲ってくるかもしれませんね。」
オルタスの疑問にドルガンが答える。それを聞いたオルタスはシャワルとヨークソンに提案をする。
「とりあえず騎士達の怪我が治るまで村にいるといい。帰る時は王都まで数人付き添いを付けようか。あと滞在中に襲ってきたら迎撃って感じかな。」
「それでは村に迷惑がかかります。そこまでしてもらう訳には。」
「あ~大丈夫大丈夫、トナイ達から聞いた話じゃ大した事なさそうだし、村に来たらオレが歓迎すればいいしね。」
そう言うとオルタスはニコリと笑った。シャワルとヨークソンは「はぁ。」と答えるしかなかった。
王子一行は2日程村に滞在する事になった。村の空き家を使ってもらいモルヒラ、ヒルエの2人が怪我をした騎士達の面倒を看る事になった。シャワルは村人の生活が珍しく、ヨークソンを引き連れて村を色々見て回っていた。道場にも来て練習風景を見ていた。ヒルナンは誰とも打ち解ける性格と憧れの騎士が目の前にいるという事ですぐヨークソンや他の騎士と仲良くなり稽古をつけてもらったり、騎士について色々聞いている様だった。弓の練習をするエルレアやヨークソンと稽古をするヒルナンを道場の端で座って見ているとシャワルが隣に座り話しかけてきた。
「ハジメ・・・君でよかったかな?」
「ええ、ハジメで合ってますシャワル様」
「そんなに畏まらないでいいよ。歳も同じくらいだしね。普段の話し方で構わないよ。」
「はぁ。・・・・・・じゃあ、オレは呼び捨てで全然いいから。」
「ありがとう、同い年の子供と話す事が無くてね。そういうのに憧れてたりしたんだ。僕の事も呼び捨てで頼むよ。」
(いや、それはさすがにマズイだろ。)
断ろうと思ったが、期待する目をしているシャワルを見て思い切ってそうする事にした。
「じゃあ、シャワルは普段遊んだりする友達少ないのか?」
「少ないというより居ない・・・かな。城の中は大人ばかりだからね。遊ぶという事もほとんどないよ。」
苦笑いをするシャワル。村の子供達が集まり楽しそうに遊んでる(本当は訓練をしているのだが)姿が羨ましかった様だった。そう考えたハジメは立ち上がる。シャワルは「どうしたのだろう」とハジメを見上げる。
「遊ぶってわけじゃないけど一緒に訓練するか?」
「え? ああ!お願いするよ。」
嬉しかったのか素早く立ち上がってハジメの後を付いて行く。練習をしているヒルナンとヨークソンにもシャワルが参加する事を伝えた。ヨークソンは止めようとしたが、シャワルに説得されて「怪我をしない程度にする」と約束させることで許可を出した。ハジメがシャワルを呼び捨てな上に敬語ではなかった事を注意しようとしたが、シャワルが年相応の笑顔で嬉しそうにハジメ達と話しているのを見て注意する事を止めた。常に大人達に囲まれていつも一人でいるシャワルが寂しい思いをしていると知っていたからだった。ちなみにヒルナン達もハジメが話すのを聞いてシャワルに対して普段の口調になっていた。
「んで、シャワルって普段訓練とかしてんのか?」
ヒルナンが疑問を口にする。王族の子供が普段どんな事をしているのか知らなかったからだ。
「勉強と剣の稽古。あと魔法の勉強もしているよ。」
「おお! 魔法使えんのか。やってる事もハジメみたいだな。」
「え? ハジメも?」
「コイツはさらに体術もやってるからなぁ。ホント何になりたいんだって感じだよな。」
「うるさいよ、色々やっておくと後々生きてくるんだぞ。たとえばお前の場合勉強とかな。」
「おっさん臭い事言うな。あとそれはオレが馬鹿だと言いたいのか?」
「じゃなきゃ勉強しろなんて言わないだろ?」
いつも通りのケンカが始まるとシャワルはオロオロし始める。だがエルレアに「これいつもの事だから。」と教えてもらい安堵する。一通り終わり、ヒルナンはシャワルとの会話を再開する。
「そうだ、魔法見せてくれよ。ハジメ以外の魔法見たことないんだ。」
「うん、いいよ。僕は雷魔法しかできないのだけど。」
「おお、それでいいよ。見たことないし。」
ヒルナンは嬉しそうに言った。「じゃあ。」と少し離れた場所にあった岩に向かって構えると、ハジメ達はシャワルから少し離れた。それを確認してシャワルは呪文の詠唱を始める。呪文は普段の言葉とは違う言語で、精霊と話すための言語だとハジメはオルタスから教わっていた。前に出していた右手にバチバチと電気が集まっていく。
「雷の矢!」
そう叫ぶと手から岩に向かって雷が飛んで行った。落雷したような音がして岩には黒い焦げ跡が残っていた。
「うおおおおお! すげぇぇぇ!!」
ヒルナンは拍手しながら驚いてた。ハジメ達も拍手しているのを見てシャワルは恥ずかしそうにしていた。
「そうだ、ハジメの魔法も見せてくれないかい?」
「え、オレ? まぁいいけど。」
シャワルと代わってハジメが構える。
(うーん、そうだな。とりあえず火でいいかな。)
右手にグッと力を込めて魔力を集める。ゆっくり手を緩め火が回転するイメージを具現化する。手の中に野球ボールくらいの火の玉ができる。そのまま野球の投球フォームに移るハジメ。ヒルナンとエルレアは何度も見ている普通の事だったがシャワルとヨークソンは目が点になっている。そんな事に気付かずそのまま岩に向かって火の玉を投げつける。真っ直ぐ岩に向かって行き着弾、小さな爆発を起こす。
「ふむ、まぁこんなもんかな。」
そう言って振り返るとシャワルがこちらに向かってすごい勢いで来る。思わずハジメは後退りしてしまった。
「今のは!? あんな魔法見たことないよ!!」
「え、あ~・・・今のは『魔人魔法』だよ。」
「『魔人魔法』? そんなものがあるのか。」
「魔人だけが使える魔法・・・だな。」
「魔人・・・そうか、君はオルタス殿の子だったね・・・。」
シャワルはふむふむと納得している。その後ろからヨークソンが来て話しかけてくる。
「詠唱せずにどうやって精霊に力を借りるのだ?」
「ああ、それは魔力をそのまま自分で火に変えてるんですよ。」
そう言って掌に小さな火を出す。それを見て呆気にとられるシャワルとヨークソン。それを見て「しまった」とハジメは後悔した。『魔人魔法』は普通の人から見ればありえない魔法で色々面倒になりそうだからできるだけ隠しておこうと昔思っていた事を忘れていた。普段村から出ることなく村人は『魔人魔法』を知っていたから失念していたのだった。
「そんな事より剣の練習しようぜ!」
ヒルナンがそう言ってシャワルとヨークソンを誘ったので魔法の話はそこで終わった。ハジメは「ナイスヒルナン!」と称えた。もちろん口には出さず心の中で。
次の日オルタスは用事が出来たので魔法の練習は休みになった。仕方がないので道場で自主練をして休んでいるとシャワルが話しかけて来た。ヨークソンは少し離れたところでヒルナンと何か話をしていた。
「やあ、今日も練習かい?」
「ああ、毎日なにかしらやってるからな。体動かしてないとどうも調子でなくて。」
「なるほどね。そう言えばハジメはなにか目指してるものはあるのかい? ヒルナンは騎士になりたいそうだし、エルレアは学者になりたいそうだね。トナイやレットンも狩人になるって聞いたよ。」
「ん~何かになりたいってわけではないけど、世界を旅してみたいってのはあるかな。」
「へぇ、世界か。それは楽しそうだ。」
「だろ?」
シャワルの反応にハジメも笑顔になる。するとシャワルが質問をしてきた。
「学園に通う気はないのかい?」
「学園?」
突然の出たシャワルの話に首を傾げる。
「王都に学園があるんだ。国中から騎士や魔法使い、学者などになりたい子供が集まるんだよ。」
「へぇ、それはヒルナンやエルレアにはピッタリな場所だな。」
「うん、それで君も魔法をもっと勉強してみる気はないかい? 君くらい才能があるなら是非行くべきだと僕は思うんだ。将来何になるかは君の自由だし、学園に行くかどうかも君次第だけどね。」
「うーん。まぁ考えとくよ。」
突然の誘いに曖昧な返事しか返せないハジメ。「わかった。」とシャワルは笑顔で頷く。興味が無いわけではないが学園に通うのもタダではないだろうし、両親に相談してみようと考えた。それと昨日の事でシャワルにお願いをしておく事思い出し口を開く。
「そういえばさ、『魔人魔法』の事なんだけど・・・。」
「うん、それがどうかしたかい?」
「オレが魔人で『魔人魔法』が使えるって事は秘密にしておいてくれないかな。村の人はもう知ってるから気にしてなかったけど、外の人からしたら珍しいものなんだろ? 色々と面倒な事になる気がするからこれからは隠しておこうと思って。」
「なるほど・・・。うん、わかった。ヨークソンにもそう言っておこう。そもそもオルタス殿の事も王しか知らないような事だしね。ハジメの事も踏まえて他言無用ということにしておくよ。それでいいかい?」
「ああ、助かる。ありがとうシャワル。」
シャワルの笑顔にハジメも笑顔で返す。それからしばらく雑談をしていると村の入り口から大声が聞こえてきた。
「盗賊がきたぞーーーーーー!!!」
その声にハジメ達やシャワル、ヨークソン達騎士も一斉に入口に走って行く。入口に着くと遠くの方から数十頭の群れがこちらに走ってくるのが見えた。
「なんだ、あの数は・・・あんな盗賊の集団みたことないぞ・・・。」
ヨークソンは向かってくる集団を見て冷や汗を流す。40人近くはいるように見えた。このまま村に攻め込まれたら村は壊滅してしまうだろう。
「うわー、この国であんな盗賊集団いないのにね。あれじゃ私達は盗賊じゃないですって言ってるようなものだね。」
後ろからの呑気な声にハジメ達が振り返るとオルタスがにこやかに向かってくる盗賊を見ていた。この国は治安がよく盗賊もそれほど多くはない。ましてやあれほどの盗賊団が野放しにされている訳もなかった。
「そんな呑気な事言ってる場合ですか!」
思わずヨークソンが怒鳴るが、オルタスは「まぁまぁ。」と宥めて、連れてきていたクロフレイアに跨ると一人で集団に向かって歩き出した。
「ちょ、ちょっと何する気ですか!?」
慌てたヨークソンがオルタスを引き留める。オルタスは立ち止まると笑顔で言葉を返す。
「いや、村に入って来られても迷惑だから外でやっつけておこうかなってね。」
「は? いやいや、1人でどうなるものでもないでしょう!?」
「あ~、逆に1人じゃないと巻き添えになるから来ないようにしてもらえると助かるかな。」
「え・・・・・・。」
ヨークソンは完全に思考が止まってしまう。それを見てオルタスは再び歩を進める。
「お、王子・・・大丈夫なのでしょうか。」
復活したときにはオルタスは行ってしまっていたので隣にいた王子に話しかける。
「オルタス殿が大丈夫だと言うのなら信じるしかありませんね。」
「はぁ・・・。」
2人と騎士達は不安の入り混じった真剣な顔でオルタスを見つめていた。ハジメを含む村の子供達もオルタスを信じて見守るしかできなかった。村の大人達だけは安心しきっている顔を皆浮かべていた。
ここまで書いてきましたが、主人公が特に何もしてないことに気が付いた。ま、まぁ子供がそんなに活躍するのも変ですよね。どこかの少年探偵じゃないんだから。
そんなわけで次回はオルタス無双です。