第二十七話:約束の宴と新たなる旅路
核が破壊された瞬間、世界樹を覆っていた黒い穢れは、まるで陽光に溶ける雪のように、急速に消え去っていった。枯れていた大地に緑が戻り、生命の息吹が蘇る。
地上に戻ったレオンたちを出迎えたのは、コノハと、歓喜の涙を流すエルフたちだった。
「皆さん、お疲れ様でした!お腹空いていませんか?」
コノハはいつもの笑顔で仲間たちの帰還をねぎらった。
世界樹は快方へと向かい始めたが、巫女ルミナの表情は晴れやかではなかった。
「穢れの核は破壊できましたが、根本原因である『大いなる災厄』の封印そのものが、今回の事件でかなり弱まってしまいました。このままでは、いずれ邪神は復活してしまうでしょう」
彼女によると邪神を完全に再封印するためには、世界樹の力を全盛期まで取り戻す必要があるという。
「そのためには、このエデン大陸に点在する、四大精霊――火、水、風、土の力を宿した『古代の祭壇』を巡り、その力を解放して、世界樹に捧げなければなりません」
それは、この大陸を巡る、新たで壮大な冒険の始まりを意味していた。
「面白そうじゃないか。精霊巡りか」
「やるべきことがあるのなら、やるしか無いですね」
「世界の危機とあらば、見過ごすわけにはいかんな」
レオンたちが即座に協力を約束すると、コノハも力強く頷いた。
「世界樹さんが完全に元気になるまで、私が最高の栄養食でサポートします!それに、四大精霊さんがいる場所には、きっとそれぞれの土地ならではの珍しい食材があるはずですから!」
その夜、エルフの集落では、世界樹の快復と新たなる仲間たちの旅立ちを祝う、盛大な宴が開かれた。
コノハはエルフたちに、彼らがこれまで食べたことのない、『外の世界』の様々な料理を振る舞った。初めて食べるパスタやグラタンの味に、エルフの子供も大人も夢中になった。
音楽が奏でられ、言葉や文化の違いを超えて、誰もが笑いあう。
案内役として、エルフの戦士アリアが正式にパーティに同行することも決まった。
こうして、五人となった「至高の一皿」は、エデンの未来と、世界の運命を懸けて、四大精霊の祭壇を目指す新たなる旅へと出発するのだった。
伝説の食材と、まだ見ぬ仲間たちが待つ冒険は、まだ、どこまでも続いていく。




