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私、ただの料理人なんですけど、どうやら世界を救ってしまったらしいです  作者: 時雨
第一部:能ある料理人は爪を隠したいけど隠せない
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第一話:出会いとギルド登録

 活気あふれるアークランドの港町。様々な人種が行き交い、未知の言語が飛び交う中、長い黒髪を風になびかせ、大きな黒い瞳であたりを興味深そうに見回している。身長は145センチほどと小柄で、華奢な体つきが旅の厳しさを物語っているようにも見えた。


「ここがアークランド……。すごい活気ですね。どんな美味しいものがあるんでしょうか」

期待に胸を膨らませ、コノハはギルド本部を目指して歩き出した。


 路地裏を通りかかった時、壁に寄りかかってお腹を空かせている孤児の男の子が目に入った。コノハは迷わず駆け寄り、背負っていた鞄から手作りの干し肉とパンを取り出して差し出した。


「お腹、空いているんでしょう?よかったらどうぞ」


 突然のことに驚く子供ににっこりと微笑みかけると、彼はおずおずとそれを受け取り、夢中で食べ始めた。その様子を満足げに眺めていたコノハだったが、その背後に二つの人影が忍び寄っていることには気づいていなかった。


「お嬢ちゃん、優しいねぇ。金目のモンも持ってそうだな」

下卑た笑いを浮かべた男たちが、コノハを取り囲む。まずい、と思った瞬間、一陣の風が吹き抜けた。


「待て。その少女に何をしようとしている?」


 凛とした声と共に現れたのは、金色の短髪を揺らす青年だった。青い瞳は鋭く盗賊たちを射抜き、その手には片手剣と盾が握られている。端正な顔立ちに、引き締まった体躯。いかにも手練れといった雰囲気をまとっていた。


 盗賊たちは一瞬怯んだが、相手が一人だと見るやナイフを抜いて襲いかかった。しかし、青年の動きは洗練されていた。盾で攻撃を受け流し、剣の腹で的確に盗賊たちを打ち据える。ものの数分で、二人の男は地面に伸びていた。


「大丈夫でしたか?」

青年がコノハに振り返る。

「は、はい!ありがとうございます!助かりました!」

コノハは深々と頭を下げた。


「女性が一人で旅をするのは危険ですよ?ところで、その髪と瞳……もしや、あなたは『黒曜の民』ではありませんか?」


 青年の言葉に、コノハはきょとんとして首を傾げた。

「こくようのたみ……?なんですか、それ?」

「知らないのですか?東方の島国に住む、黒髪黒目の魔法に長けた民族のことです。まさか人違いでしたか……失礼した」

「いえ、東の島国出身で黒髪黒目なのは合っています。私はオアシス連邦から来ました。静木コノハと申します」


 レオンと名乗った青年は、少し驚いたように目を見開いた。

「オアシス連邦……!やはり。私はレオン。聖アウレア帝国出身の冒険者です」



「助けていただいたお礼がしたいです。もしよろしければ、何かご馳走させていただけませんか?」

「礼には及びません。当然のことをしたまでです。それより、あなたも冒険者ギルドへ向かっているのですか?でしたら、ご一緒しましょう」

「はい!ちょうど冒険者登録をしようと思っていたところなんです!」


 二人は連れ立って、アークランドの中心にそびえる「ユニティ・ワークス」本部へと向かった。石造りの荘厳な建物の中は、多くの冒険者や職人たちでごった返している。コノハは受付窓口へ向かい、登録手続きを申し出た。


「まあ!オアシス連邦からいらしたのですか?珍しい!ようこそアークランドへ!」

受付の女性は目を輝かせた。どうやら「黒曜の民」は、こちらの大陸ではそれだけで注目の的らしい。


「はい。今日着いたばかりで……」

「すぐにランクも上がりそうですね!期待しています!」

「あはは……」


 目立ちたくなくて国を出てきたのに、とコノハは苦笑いを浮かべるしかなかった。

 鉄級のプレートを受け取り、これで自分も冒険者の仲間入りだと、コノハは静かに決意を新たにした。


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