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私、ただの料理人なんですけど、どうやら世界を救ってしまったらしいです  作者: 時雨
第一部:能ある料理人は爪を隠したいけど隠せない

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第十八話:英雄の帰還と新たな船出

 ポルト・ソレイユへの帰還は、凱旋そのものだった。


 『深淵の牙』一味を捕縛した一行は、街を救った英雄として、最大級の歓迎を受けた。

 領主から直々に感謝状と莫大な報奨金が手渡され、ギルドは彼らのランクを特例として銀級から金級へと引き上げた。



 そして、ギルドマスターからの粋な計らいがもう一つ。

「君たちが捕らえた海賊船『アビス・クラーケン』号だが、領主様と話し合い、報酬の一部として君たちに譲渡されることになった。好きに使ってくれて構わん」

 自分たちの船。その言葉に四人は顔を見合わせて喜んだ。



早速、一行は船の名前を決める会議を開いた。

「『腹ペコ探検丸』がいいです!」

「却下だ」

「なら『マッスル・ハリケーン号』でどうだ!」

「それもどうかと思う」

コノハとガルムの案をレオンとクラウスが冷静に却下する、いつもの光景が繰り広げられる。

「では、『ラ・キュイジーヌ・シュプリーム』というのはどうだろうか」

レオンが少し照れながら提案した。

「別の言語で我々のパーティ名と同じ『至高の料理』という意味だ。ただの言い換えではあるが、他国の文化にも触れる機会があるかもしれない」

「おしゃれですね!それにします!」

コノハが目を輝かせ、満場一致で船の名前は『ラ・キュイジーヌ・シュプリーム号』に決定した。



 名前は決まったが、船は海賊が使っていただけあって、汚く、あちこちが傷んでいた。一行の次なる任務は、自分たちの城となる船の大掃除と大改造だった。


 まずは全員で大掃除をすることになった。ガルムが力仕事で不要なものを運び出し、レオンとクラウスが修繕箇所をチェックしながらデッキを磨く。 


 そしてコノハは、厨房の掃除に鬼神の如き情熱を燃やした。

「油汚れは許しません!隅々までピカピカにしますよ!」


 数日後、船内は見違えるように綺麗になり、特に厨房は、新品同様の輝きを取り戻していた。


 次に、改造に取り掛かった。ギルドの全面協力のもと、ポルト・ソレイユ中から最高の職人たちが集められた。

 まずは船体から。ドワーフの船大工たちが、一行が持っていた海竜の鱗を溶かし、特殊な塗料と混ぜて船体に塗り込めた。これにより、船の防御力は軍艦をも凌ぐレベルにまで跳ね上がった。


 次に動力。ギルドの魔導技師が、討伐した海竜の心臓(巨大な魔石)を動力炉に組み込み、通常の帆走に加えて、魔力による高速航行を可能にした。


 そして、コノハの夢だった『究極の厨房』の建設が始まった。彼女が描いた設計図に基づき、巨大な食料庫、燻製室、石窯、最新鋭の魔導コンロ、そして『海竜の涙』を保管するための専用の保冷庫までが設置された。


 各々の個室も作られ、甲板の一角にはコノハが管理するハーブ園まで作られた。

「これでいつでも新鮮なハーブが使えます!航海がもっと楽しくなりますね!」


 数週間後、そこに現れたのは、もはや海賊船の面影もない、優美で堅牢な一隻の冒険船だった。

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