意地悪な女性
「ねえ、バルム様。ちょっといいかしら」
「…はい、いいですよ」
話しかけられた時の雰囲気から、ちょっと嫌な感じはしていた。
それでも付いて行ったのは…にーにーが宗教上の大事な会議でその場におらず、いつもの使用人の彼もそちらの手伝いで居なかったから。
付いていくと、暗がりに誘導された。
そして壁ドンされた。
こっわ…!!!
「迫力がすごいですね、お姉さん」
「あんた、どうやって巫女様に取り入ったのよ」
「どうやってもなにも…」
前世では心中した仲なので、なんて言えない。
「どうせ可哀想な出自だからと目を掛けられているだけのくせに!」
「はぁ…」
「なによその気の抜けた返事は!」
だって僕、貴女に興味ないですから。
そう言ったら平手が飛んできた。
…が、途中で止まった。
「何をしているんですか、貴女は」
止めたのは、いつもの使用人の彼。
その後ろには、僕の愛おしい人。
「バルム、大丈夫かい?」
「にーにー、僕は大丈夫」
「でも、怖かったろう」
「彼が助けてくれたから」
「私はただ巫女様に従っただけです」
僕たちのそんな会話の中、彼に腕を掴まれた彼女は暴れる。
「巫女様!どうして私じゃダメなのにこの子にばかり構うのですか!」
「運命の人だからだよ」
「………え」
「バルムは俺の運命の人だ。俺が唯一愛する人。それを害そうとしたな」
「…へ、変態だったの?巫女様」
凍ったように冷たい場の空気にそぐわないその一言に、僕は思わず吹き出した。
「ごふっ…ま、まあ少なくとも高校生…あ、十六歳くらいまでは守備範囲だよ。ねえ、にーにー」
「………ソウダネ」
「同性愛はこの国では認められてるし、歳の差婚も認められる国だからさ」
「ソウダネ」
「にーにー、へこみ過ぎ」
そんなところも可愛いけど。
「…ぅうん、ごほん!まあ、今世ではバルムにもっと長生きしてもらうからね。守備範囲は広がるよ」
「ふふ、うん!」
「…?」
「今世?」
「あ、君たちには関係ない話だよ」
にっこり笑って二人が間に入ってくるのを拒絶するにーにー。
「あ、そうだ。君今日から破門ね。もうこの施設から出て行って」
「え」
「にーにー、それはいくらなんでも」
「バルムに危害を加える奴を置いてはおけない」
「それはまあ…」
僕がにーにーの立場なら確かにそうするけども。
「それよりバルム。会議が早く終わったんだ」
「即行で終わらせたの間違いでは」
「バルムと一緒にお茶にしたいなと思って、どう?」
「すでに準備済みです」
「あー…うん」
ということでお姉さんは破門となり追い出されて、僕は優雅にティータイムとなりました。
ちなみにこの宗教を破門にされると当然この辺りでは暮らしていけなくなります。
可哀想に………。