過保護
「にーにー」
「うん?」
「これはさすがに過保護じゃないかな」
にーにーとお外に行く時はいつもこう。
手を握って、決して離さない。
七歳の僕と、十九歳のにーにー。
歳の離れた兄弟…いや、歳の近い親子にすら見えるかもしれない。
でもにーにーは繋いだ手を離さない。
「過保護でもいいじゃない。ようやくバルムに出会えて俺はとても嬉しいんだよ」
「そうだねにーにー、でもちょっと恥ずかしい」
「なにを恥ずかしがることがあるの?愛し合う二人が手繋ぎデートをしているだけなのに」
にーにーと僕をさっきまで微笑ましげに見ていた人たちがぎょっとする。
そしていっせいに目を逸らした。
「…あーあ」
「バルム、どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
絶対ヤバい奴らだと思われただろうけど、どうせにーにーは気にしないので僕も気にしない。
「にーにー、あそこのカフェラテ飲みたい」
「いいね、行こうか」
にーにーのエスコートで喫茶店に入る。
あったかいカフェラテをにーにーが注文してくれた。
にーにーはブラックコーヒーを選んでいた。
「にーにーはかっこいいなぁ、ブラックコーヒーなんて僕無理」
「無理する必要なんてないさ。カフェラテを飲むバルムは可愛いよ。ついでにふわふわパンケーキも注文しよっか」
「え、いいの?」
「うん」
にーにーは店員さんを呼んで追加でパンケーキを注文した。
「にーにー、ありがとう」
「どういたしまして」
そしてパンケーキとカフェラテ、ブラックコーヒーが来た。
「いただきます」
カフェラテを一口飲んで、ほっと息を吐いてからパンケーキを食べる。
「美味しい!」
「よかった。頼んだ甲斐があるよ」
「にーにー、ありがとう!」
「どういたしまして」
美味しそうに食べる僕の顔を、にこにこと見つめるにーにー。
そんなにーにーに、パンケーキを一口差し出した。
「にーにーも一口どうぞ」
「いいのかい!?ありがとう!」
にーにーはあーんと口を開ける。
パンケーキはにーにーの口に呆気なく吸い込まれていった。
「にーにー、美味しい?」
「うん、美味しいよ!ありがとう、バルム」
「うん!」
「これで間接キスだね」
「…!」
たしかに同じフォークだから間接キスだ!
照れちゃう…!
「………えへへ」
照れ笑いをする僕に、にーにーはご機嫌に微笑むばかり。
「にーにーったら、そんな嬉しそうに…」
「俺のバルムが可愛いからつい」
「もう、にーにーったら!」
僕がプンスカしてもなお笑顔のにーにーに、呆れたふりをしつつ嬉しい僕なのでした。