にーにー、なんの難しいお話?
「にーにー、どうしたの?眉間に皺が寄ってるよ」
「バルム…」
ある日、にーにーが難しい顔をして帰ってきた。
今日は宗教会議はなく、皇帝陛下に呼び出されていたということだったらしいけれど。
「にーにー、なんの難しいお話?」
「それは…」
「出来れば教えてほしいな」
「バルム…」
にーにーは今にも泣きそうな顔をしている。
よしよしとにーにーの頭を撫でる。
身長差があるので、にーにーに屈んでもらってだけど。
「にーにー、大丈夫だよ。心配ないよ」
「バルム…」
「にーにーには僕がいるでしょう?」
「バルム…!」
僕を抱きしめて静かに涙を流すにーにー。
しばらくそうしていた後に、にーにーはようやく泣き止んだ。
その様子をアイドちゃんはいつものようにてぇてぇと拝み、ベルクさんはそんなアイドちゃんに苦笑していた。
「…皇帝陛下が、僕に会いたいの?」
「どうも、そうらしい」
「…面倒くさいことになりそうだね」
「そうだね、確実に」
わぁ。
ということで、皇帝陛下に会いに行くことが決定しました。
「何着て行こうかな」
「いつもの服で構わないと思うけど…バルム、平気なの?」
「会うだけならね」
「そっか…そうだよね、会うだけなら……」
会うだけで済めばいいけど、ね。
「あの、バルム様」
「なに?アイドちゃん」
「その…ご無理なさらないでくださいね」
「うん、もちろん」
そう答えるものの、不安は胸に渦巻く。
どうして皇帝陛下は、僕に会いたいのか。
十中八九、にーにーの婚約者だからだろう。
僕がリュキア教の愛し子であることは、バレるわけがない。
そしてにーにーの婚約者である僕に会いたいというのは…人質に欲しいんじゃないかな。
「ベルクさんも連れて行っていいの?」
「あ、うん。護衛は連れてきて良いらしい」
「なら一安心かな」
「私で大丈夫でしょうか…」
「うん、ベルクさんにも来て欲しいな」
その場で人質に取られても、ベルクさんをそばに置いて良いという条件ならいくらかマシだ。
「…バルム、皇帝陛下はおそらく」
「うん、わかってるよにーにー。でも大丈夫」
にーにーはとても頭がいいから、この先のことなんて予見しているだろう。
でも、今生の別ではない。
大丈夫また会える。
「僕は、どれだけかかろうと無事に帰ってくるからね。うさぎちゃんのぬいぐるみも持っていくから」
「バルム…!」
ぎゅっと拳を握るにーにー。
さすがに皇帝陛下には逆らえないから、にーにーもきっと気が気じゃないはず。
でも、僕はちゃんと帰ってくるからね。
にーにーの手を優しく握って、僕は微笑んだ。
それをアイドちゃんはてぇてぇと叫んで、緊張していた空気は少し緩んだ。