にーにーったら本当に婚約届けを出してしまった
「じゃあまずは婚約指輪を作ろう!」
「う、うん」
ということで、婚約指輪を作ることになった。
ミノス教の宗教施設には色々な人が住んでいる。
大抵はなんらかの理由があって生活に困窮している人が、一定期間ここに置いてもらってしばらくすると自立して出ていくって形。
だから指輪を作れるような職人さんも探せば何人か居て、デザイナーさんも何人か居て。
宗教施設から卒業した教徒たちからのにーにーへの貢物で、材料も充分。
「という事で、デザインはいくつか上がってるけどどれがいい?」
「んー…僕はこの可愛い薔薇の花がモチーフの指輪がいいな」
「おや、意見が合うね。俺もこれが好きだな」
ということで、薔薇の花がモチーフの婚約指輪が作られることになった。
「バルム」
「なに?にーにー」
「指輪が出来上がったよ、みてみて」
にーにーが指輪を見せてくれる。
「わ、すごく可愛い!」
「でしょう?バルムの左手の薬指に、早速いいかな」
「うん!」
にーにーが僕の左手の薬指に指輪を恭しく嵌める。
「…うん、とっても似合うよ」
「ありがとう、にーにー。にーにーの指輪は僕がつけてもいい?」
「うん、もちろん」
にーにーの左手の薬指に、恭しく指輪を嵌める。
「これでお揃いだね」
「婚約指輪だからね」
「それで…リュキア教への届けはどうするの?」
「もちろん出すよ」
にーにーはなにやら書類を取り出した。
「はい、ここにサインして。俺はサイン済みだから」
「…!これが婚約届け?」
「うん!」
準備がいい…さすがにーにー。
「…本当にサインしちゃっていい?」
「もちろん!サインして?」
ね?と言われるともうサインするしかなかった。
にーにーが可愛すぎる!!!
「…はい、サインしたよ」
「ありがとう、バルム。じゃあ、俺がこれを出しておくからね」
「う、うん」
僕は今でも本当に僕でいいのかと不安があるのだけど、にーにーはどこ吹く風だ。
「じゃあ、早速出しに行ってくるよ」
「……気をつけてね?」
「うん」
そしてにーにーは婚約届けをリュキア教の教会に出しに行った。
「ただいま、バルム」
「おかえりなさい、にーにー…ご無事?」
「うん、無事に婚約届けは受理されたよ!嫌味は吐かれたけど暴力はなかったから安心して」
やっぱり嫌味は吐かれたんだ…。
申し訳ない気持ちになる僕に、にーにーは笑う。
「バルムが悪いわけじゃないから、落ち込まないで」
「でも…」
「むしろ今は、婚約が正式に認められたことを喜び合おうよ!」
「…うん!にーにー…おめでとう、ありがとう!」
「こちらこそありがとう!おめでとう!」
その後にーにーはまた教徒たちを集めて、今度は婚約成立の発表をした。
「おめでとうございます!」
「おめでとうございます!」
「巫女様万歳!」
「バルム様万歳!」
結果その場はめでたやめでたやとどんちゃん騒ぎになった。
「まだ結婚じゃなくて婚約の段階なのにすごく喜ばれてる…」
「祝福される分にはいいんじゃない?」
「う、うん。そうだね」
ということで僕たちの婚約は成立した。
……いいのかなぁ。
 




