僕はにーにーが心配です
僕はにーにーがこれ以上国教の人たちに虐められないように、これ以上状況が悪くならないようにするために…少しでも教養とかを身につけて、リュキア教をむしろ〝脅せる〟くらい賢くなって…それでにーにーを守れるようになろうと目標を立てた。
それを実現させるために、僕は最近にーにーが豊穣の力を貸してあげるため宗教施設を離れる時に図書室で日々勉強している。
にーにーは時に国内の離れた場所まで豊穣の力を貸してあげにいくから、時間はたっぷりあった。
教養そのものは高校生だった前世の知識で、この世界の基準で言えば結構あると言えばあるが…勉強しておいて損はない。
それにこの世界特有の知識とかもあるし。
「…というわけで一生懸命に勉強しているわけだけど」
この世界に転生した特典だろうか。
するすると知識が身についていく。
気付けばこの世界でいうところの、貴族学園の教授並みの知識が身についた。
我が国やこの世界の各国の歴史、現状、関係性も学んだ。
さらにこの世界に存在する宗教もそれぞれ学び、知識を身につけた。
「なるほどねぇ…この世界の、この国の宗教に対する考え方はなんとなくわかったかも」
故にわかった。
「神の愛し子」の重要性を。
僕は、僕自身を人質にすれば国教のリュキア教もなんとかできるかもしれない。
ミノス教を…にーにーを守るための方法を見つけられたかも。
「にーにーをいじめたら死んでやるぞと脅してやれば多少は効くかな」
まあ、実際に自殺なんかはしないけどね。
あくまでも脅し。
だからハッタリがバレたら効かないかもだけど。
「バレないように、迫真の演技をしなくちゃね」
あとはいつ国教と接触して、国教の神の愛し子だと知らせて脅すかだけど。
「…まだ、時期尚早かな」
どうもリュキア教は、神の愛し子に選ばれた子がいると神託が降りて血眼で探しているらしい。
見つかるタイミングをずらせばずらすだけ、見つけた神の愛し子への執着は大きくなる。
あえて今は見つからないようにしておこう。
その方がハッタリは効きそうだからね。
ただ問題は、にーにーがいじめに遭っているのを今は守れないこと。
「にーにー…」
僕はにーにーが心配です。
「大丈夫ですよ、きっと巫女様は今日も無事にお戻りになられます」
「うん…」
今日もにーにーは遠くに豊穣の力を貸しに行っている。
その間にリュキア教の奴らにいじめられてないといいけど…。
「ああ、噂をすれば。巫女様はお戻りになられたようです」
「バルム、ただいま」
「にーにー!心配してたんだよ!大丈夫?」
「もちろん大丈夫だよ、ぴんぴんしてる」
「よかった!」
僕はほっとして、にーにーに抱きつく。
にーにーはいつも通り、優しく抱きしめ返してくれた。




