第2章 らーめんを食べに行こう!
土曜日 午後5時48分
人によってはもう月曜日が頭をよぎり、憂鬱になってしまうかもしれない、、、
ていうか、なってる、、、
いや、正しくは先週まではそうだった。
今俺の隣にはとても可愛い女の子がいて、一緒にラーメンを食べに行く。
それだけで、、、勝ちってもんだろうよ!
異世界から来たサキュバスさんだけどさ、、、
「ねぇ〜、きんちゃ〜ん、まだ〜??」
やはりサキュバスなのだと思い出させる蠱惑的な声に理性が飛びそうになる、、、
だが、彼女が求めているのは俺のミルクではない、、、
ラーメンだ!!
「クロエさんや、もうちょっとで着くからのう」
そんな感じの中身がないようで全くないことを話しているうちに目的の店にたどり着いた!
劇烈!中華!食堂!!
目高屋!
異世界から来た、それも今まで精液だけで育ってきた人をいきなり 家系! 二郎!などに連れていくのは
きっと色々びっくりしちゃうだろうさ、徐々に、、徐々にね、、、
ラッシャーイ!お好きな席どぞー!!
元気な声がほどほどの客数の店内に響く
留学生だろうか?可愛らしいカタコトの声であった。
「きんちゃん!はやくはやく〜」
いつのまにか席を取っていた俺のいとしいしとが
元気な声でお呼びになられた。
「ほっほっほ、クロエさんや、焦らなくてもラーメンは逃げませんよ。」
席について早速メニューを広げる。
までもない!定番の中華そば一択よ!!!
正直懐具合も寂しいゆえ、贅沢は言ってられぬ、、、
まぁ、折角だ半チャーハンくらいは頼んでも、、
「キンちゃん、キンちゃん」
クロエがひそひそと呼びかけてくると
「あそこの人がのんでる、、ほらあれ、あの金色の飲み物、、なに??」
そこには餃子をあてに美味しそうにビールを飲むザ・ジャパニーズおじさんがいた。
「あぁ、あれはビール お酒だねぇ、かーーーっ、美味しそうに飲んでますなぁ、、、」
「うぅ、、、ねっ、ねぇキンちゃん、、いや、王様様、私めにも一杯あれをいただけないでしょうか。。。」
都合よく出てきた丁寧な姫口調でお姫様はすごすごと頼んできた。
“折角だから“
お金を使う時、脳内でこの言葉を浮かべる人は多いのではないだろうか、、、、
遊園地価格の自販機
旅行先のよく分からないご当地グッズ
パチンコでどハマりした時、ここまで回したんだから
どうせなら当たるまで、、、という投資、、、
↑大体こんな時、当たっても単発駆け抜け
一つ話に熱が入りすぎたが、要するに今この状況は彼女の初めての外食であり、、その、、初めての、、、デート、、、と言っても過言ではないだろう!
ああ、そうだ!これはデートだ!!しかも、俺の中ではサイゼリヤデートと双璧を成す、日高屋デート!
今日は、、外すか、、、羽目を、、!
「よし!!頼もう!!好きなものを好きなだけ!」
メニュー表をめくり、一品料理・おつまみコーナーを開いた。
とりあえず、、、
唐揚げ!
餃子!!
フライドポテト!!
そして、、、ビール!!
大人のわんぱくセット!!
俺たちのラインナップというメニューに、誰の心にも存在しているであろう男子中学生が夏休みを迎えたような最高な気分を迎えた!
「早く来ないかなぁ〜」
きっと彼女の心にも男子中学生がいるのだろう、なんか、、そんなタイプな気がする。。。
そんなことを考えているうちに
お待たせしまター、生ビール2つデスー
光り輝く金色の飲み物がテーブルに届いた。
「よっ、待ってました!!」
江戸っ子みたいな口調で異世界のお姫様は囃し立てた、てやんでぇ!
「よし、じゃあジョッキを持って、、」
俺がそう言うと何かを察したようにクロエもジョッキを持った。
「「かんぱーーーーい!!」」
ほんのり水滴のついたグラスのぶつかる音、飲み会の醍醐味ですなぁ、ちょっとこぼしちゃっても気にしない!
「ってか、クロエの方でも乾杯の文化ってあるもんなの??」
そう聞くと、自信満々に
「あるんだな、それが!」
と、どこかで聞いたことがあるような台詞を吐きやがった。こいつ、もしかしたらこっちのことについて色々知ってるんじゃねぇか?
そんな考えがよぎりながらも、話は続いた。
「向こうだと、食べ物も飲み物も精液だけだったからさ、正直味は飽きちゃったりするんだよね、、、だからさ、気分だけでも盛り上げようってことでいっつもかんぱ〜いってしてたんだ、、、」
一瞬クロエの顔が曇った。
そうだよな、故郷と言われるものが彼女にはもうないんだもんな、、、
「ごめん、嫌なこと思い出させちゃったな」
「ううん!大丈夫!!いいから飲も飲も!!」
んじゃ、改めて、、、、、
「「かんぱーーーーーーい!!!」」
2人揃ってぐいっとビールを流し込んだ!!!
かーーーーーーーっ、やっぱこれだよなぁ!
そんなことを考えていると
「かーーーーーーーーっ!!!苦いけどしゅわしゅわして美味しいね!!」
やっぱビールを飲むと、、、、かーーーーーーってなっちゃうよね!
小難しいことはまた今度考えよう、、、
今は、可愛い女の子と一緒にご飯を食べる。。
そのことに集中するんだ!!
次々にくる食べ物の波
唐揚げ!餃子!!フライドポテト!!!
めくるめく欲望の塊が俺たちを急襲していくッ!!
「キンちゃん、、これ、全部美味しい!!ビールとも、、んっ、、、プハーーーーーっ!最高!!」
大満足してくれたようですごいスピードで食べ進めていった。
気づけばお互いのグラスは空になっていた。
「キンちゃん、、もう一杯、、いっちゃう??」
行こう!何杯でもいっちまおう!!
「うん!今日はとことん飲も、、」
「すみませーーん!ビール2つ!!あと、唐揚げとフライドポテトも追加で!!」
俺が言い切る前に
すでにッ、クロエはッ、注文していたッ!?
終わらない宴が今!始まる!!!
はずだった、、、、
クロエ・ブルーデージー選手、ビール二杯目でダウン!!!
この子、、、お酒弱い!!
自分のお酒の強さってやっぱわかんないもんなんだなぁ、サキュバスでも。
「キンちゃん、まだ、、まだ、、、舞える、、、」
ダウン寸前のミリオンダラーなベイベーに俺はタオルを投げ込んだ。
試合終了のゴングが脳内に響こうとしたその時、、ハッとあることに気がついた。
ラーメン食べてねぇな、、、
「クロエさ〜ん、クロエさんや〜い」
「ぅぅ.......」
返事がない、ただの屍のようだ
「まだラーメン食べてないよ〜」
「らっ、、らーめん.....」
「ラーメン、いけるか?」
「いっ、いけます、、」
「いけんのか、本当にお前!」
「いけますよ!」
バシッ!!
なぜか俺がビンタをされた。
めっちゃ痛い、、、
「よ、、よしっ、、じゃあ頼もうか。
すみませ〜ん中華らーめん二つ」
ハーイ、中華らーめんふたつ〜
酔いとかなんやらかんやらで昂り過ぎてしまった俺たちは一旦水を飲んでクールダウンした。
その後、本日のメインディッシュは静かに、何事もなかったように僕たちの席に届いた。盛り付けはメニュー通りで、どこにも嘘はなかった。ありがとう、それだけで充分だ。
お互いレンゲを使いスープを一口すする、、、
うまい
麺を啜る、、、
うまい
先程までの喧騒のような食事から一変して
じっくりと味わうような食事になった。
どことなくエモい雰囲気すら感じさせた、、、
一杯のラーメン、それだけでこんなにも感情を動かされることは、きっと今までの俺には想像もつかなかっただろう。
オレは この店に来た時 いつも最短の注文を試みたが
『一番の近道は遠回りだった』
『遠回りこそが俺の最短の道だった』
今日この店に来た間ずっと そうだった
そして クロエがいたから その道を渡って来れた
アリガトございマシター
店員さんの元気な声に見送られ、俺たちは店を出た。
今までで一番の目高屋だった、間違いなくベストだ。
「キンちゃん、、、ラーメンって、すごいもんだねぇ。」
「あぁ、そうだなぁ、、、」
なんてことないチェーン店の食事でもこれだけ感情を揺さぶられる、。
異世界から来たサキュバスさんとのこれからの生活はとても楽しいものになる。
そんな確信と大きな満足感を携え、2人並んで帰路に着くのであった。
ちょっとしたサブの話になると思ったけど文字数も時間も結構かかってしまったのであった。