7話、解体クエストの猫娘と最高の笑顔いただきました
今日も今日とて、ぼちぼちと過ごしたいと考えたりしてますが、「なんでなん!」って叫びたくなる時ありますよね。俺は今がそんな感じになってます……
△△△
紫ロングと、依頼と言う形で契約をかわしてから、あきらかに赤髪ツンツンショートの機嫌が悪い。
悪いなんてもんじゃない、ギルドで依頼を受けた瞬間から、赤髪ツンツンショートがヤンキーみたいな、目で俺を睨んでるし。
二人きりの宿部屋が気まずすぎる……まだツンツンしてるし……
「おい、どうしたんだよ?」
「別に……」
「おーい?」
「オッサンなんか知らないし、フンっ」
これ、ダメなやつだ……押してダメなら……引いてみるか!
「わかったよ……全部俺が悪いよな。ごめんな」
「え……なぁ、オッサン?」
ほら来た! さすが俺、よく出来ましただな!
「どうした?」
「何が、わかっんだよ? 言ってみろよ!」
違った、これは地雷だ! 踏んだらダメなやつだった!
「いや、あはは」
はい、そこからはなんかもう、八つ当たりみたいになったんでとりあえず「タイムッ!」っと叫んで、意味が分からないからか止まった赤髪ツンツンショートに飴玉を食べさせて落ち着かせた。
飴玉最強か? ヤバいもん入ってないよな?
「色々言いたいことはあるだろうが、俺みたいなやつには、ハッキリ言ってくれた方が助かるんだ。1つ1つ教えてくれよ」
そう言いながら、横にいる赤髪ツンツンショートの頭を撫でる。
「な、なぁぁ! 何してんだよ、頭さわるな!」
驚いているのは分かるが、嫌がってるような感じはしないんだよな? もう少し撫でてみるか?
「よしよし、よしよし」
「…………ちょ、調子に二ョるなー!」
あ、かんだ……っと思ったその時、俺のアゴに向けて、下からえぐるように綺麗なアッパーがクリティカルヒットした。世にいうブラックアウトを異世界で体感した瞬間だった。
「お、オッサン!」
俺は完全にノックアウトされてから、目覚めたのは夜中だった。
ベットに寝かされた俺の横に座り上半身だけベットにのせた赤髪ツンツンショートの姿があった。
心配してくれたんだな……まぁ、完全にコイツのせいなんだがな……
頭を撫でてやると眠っている赤髪ツンツンショートが気持ち良さそうな表情を浮かべたので、俺に掛けられていた掛け布団を掛けてやる。
「なんだかな、でも、悪くないな……」
“買い物袋”から、灰皿を取り出す。
小窓を開けて、煙草に火をつける。
生暖かい風を感じながら、ゆっくりと煙を肺に入れていく。
「フゥ……」っと煙を吐き出しながら、赤髪ツンツンショートに視線を向ける。
「寝顔も可愛いとか、反則だろう……もう少し危機感持てよな……俺も男なんだぞ。たく……」
そんな言葉を吐きながら、俺は次の煙草に火をつける。
△△△
朝になり、俺の身体が揺らされる。
「──ッサン、オッサンてば、起きろよーーー! 朝だぞ、早く行かないと、いいクエスト無くなっちまうぞ!」
「おはよう、朝早いなぁ……」
「いいから、すぐに行くぞ!」
「え、朝食はどうするんだ?」
「いいから、急ぐんだってば!」
朝から元気な赤髪ツンツンショートに引っ張られて、ギルドへ向かう。
到着すると、赤髪ツンツンショートがガックリと肩を落とした。
「ロクなクエスト無いじゃないかよ……どうすんだよ」
「まぁまぁ、俺も見てみるから」
不機嫌な赤髪ツンツンショートの髪を無意識にクシャクシャに撫でながら、俺はクエストボードを確認する。
ランクの高いクエストばかりが残る中、『ランク指定無し』と書かれた文字を見つける。
「これ、良くないか?」
「え、マジかよ、オッサン……まぁ、オッサン向きには見えるけどさ……」
うん、渋い顔してる。でも、俺でも、むしろ俺なら楽に出来るクエストだ。
クエスト内容は食材のカットと解体だ。
指定された場所で食材を切るだけで大銀貨5枚(10000リコ)のクエストだ。
選ばれなかった理由は下に書かれた『綺麗にカットできない場合、報酬減額あり』の注意文だろうな。
「よし、これにするぞ。そっちはどうするんだ?」
「ぼ、ボクも行ってやるよ! オッサン、道分からないだろ」
「そうだな。ありがとうな。助かるぞ」
俺達はクエストを受けると指定された倉庫に向かう。
ギルドからそう遠くない場所にある倉庫には既に複数の女性がナイフを手に野菜や果物などをカットしていた。
「あニャニャ〜宿のお客さんだ!」
ん? 昨日、宿で注文をとっていた猫耳獣人が俺達に手を振ってきた。
「お、昨日の? えっと、名前が……」
「ニャハ、ニャアは、ニャアなのですにゃ。猫人族なのにゃ、お客さんも食材カットのクエストなのかにゃ?」
そのままって、ひねりがないな、日本なら人間だから『人』って名前を付けられるみたいな感じだろ?
「おう、ニャア、よろしくな。キンザンだ。俺達もクエストだな」
「ミアだよ、よろしくな」
「ヨロシクにゃ〜 にゃら、まずは、何処で作業するか聞いてからにゃ」
猫娘の説明で依頼主に軽く挨拶をして、作業場に向かい、作業を開始する。
俺は肉のカットを任され、赤髪ツンツンショートは、運搬作業を引き受けていた。
俺の元に大量の肉が運ばれて来ると説明が開始される。
骨を外して、部位ごとに切り分けるのが俺の仕事だ。
速攻で【解体】を発動していく。
手にはバトルウルフのナイフ、長いのでバトルナイフと呼ぶ事にした。
とりあえず、バトルナイフを振るう、振るう! 振るう!
肉の山を綺麗にカッティングしていく。
カットされた肉を運ぶ作業員が次第に増えて行くが、お構い無しにカット、カット! カッツ!
俺の後ろから、猫娘が「すごいにゃ、早いにゃ、ヤバいにゃ!」と、声を上げて、魚を捌いているのが分かる。
1時間程で俺は任された肉を綺麗にカットして、有り得ない量の肉を解体した。
他の箇所を手伝いながら、5時間もするとその日の食材カットがすべて終わっていた。
作業が終わり、クエスト完了のサインを貰い、外の壁にもたれ掛かるように座り、煙草に火をつける。
「フゥ……仕事後の一服は最高だな」
「ハアハア、オッサン、スゴ過ぎだろ……運ぶこっちの身にもなれよな!」
俺がカットした食材をずっと運ばされていた赤髪ツンツンショートが息をきらせて、俺の横で座っている。
「お疲れ様だな、ほれ、食べろよ」と煙草を加えたまま、飴玉をポケットから取り出し、袋をあける。
「ありがとうな、オッサン。やっぱり美味いよらぁ」
感謝の気持ちを言いながら、飴玉を口に入れた赤髪ツンツンショート、やっぱり子供に見えるよな?
「あニャニャ〜! キンザン〜さっきは凄かったのにゃ〜 ニャアはびっくりしたのにゃ」
素直に目をキラキラさせて、本当に猫なんだな。
「おう、お互いにお疲れ様だな」
「だにゃ、ミアもお疲れ様だにゃ〜」
「お疲れ様、それより、オッサン、これからどうすんだ? ギルドに行くにしても、時間があまっちまったし?」
確かに時間があるんだよな……
「どうするかな? まぁ報告に行くか、ニャアはどうするんだ?」
「ニャアは、報告してから、宿の仕事があるにゃ、だから急ぐのにゃ〜」
「そうか、なら気をつけてな」
「気をつけるにゃ、あと、予定より早く終わったのは、キンザンのお陰にゃ、だからお礼にゃ〜」
猫娘は突然、俺に抱きつくと、頬にキスをしてきた。
「え!」
「な、何してんだよ、アンタ!」
猫娘は『はにゃ?』っと、首を軽く斜めにする。
「ニャアの一族は、頼れるオスが一番好きにゃ〜キンザンは頼りになるのにゃ〜」と、スリスリしてくる。
ハッキリ言うが、リアル猫娘、最高に可愛いだろ! わかる、これは人を、いや、俺をダメにするやつだが、ダメになってしまいたい!
「な、何、デレデレしてんだよッ!」
お約束になり始めてる赤髪ツンツンショートの一撃に俺は正気を取り戻して、ニャアを見送った。
「あれは危険だからな、オッサン、油断しすぎだって言ってんだろ!」
「いてて、何が危険なんだよ」
「もう遅いんだよ、はぁ、獣人が肌を擦り付けるのは、マーキングなんだよ。つまり、あの猫にオッサン、求婚されたんだよ」
ん? ん! 求婚ってあの求婚か!
「はあぁ! いやいや、おかしいだろ? 俺なんもしてないぞ」
「種族の差だよ! オッサンが仕事をテキパキこなしてたから、仕事が出来るオスに見えたんだろうな、しかも、硬い肉をあっさりバラしてたしな、たく!」
「あはは……そんな単純な……」
「相手は獣人族なんだぞ、人の常識で考えんなよ!」
すごい勢いで、顔面を近づける赤髪ツンツンショート、これがニコニコの笑顔なら幸せなんだが、残念ながら、スゴイ怒りに満ちていらっしゃる。
「な、なら、鬼人族にも、そういうのあるのか?」
「な、なぁ! 知るかよ!」
俺から慌てて離れるとそっぽを向かれてしまった……女の子って本当に分からんな。
「い、いいから、報告! 報告いくぞ、オッサン!」
ギルドでクエスト報告を済ませると、宿に戻ろうとした俺を赤髪ツンツンショートが止めた。
「オッサン、今から少し街を案内してやるよ! 昨日、案内出来なかったからさ」
少し照れてるように見えるのは内緒だ。
「なら、頼もうかな。よろしくな」
赤髪ツンツンショートに連れられて街歩きを開始する。
武器屋、雑貨屋を周り、広場で休憩がてら、屋台で買った串焼きを並んで食べる。
「なんか、あれだな……オッサンが作ったやつのが美味いよな……」
「──そういう事は言わないのが優しさだぞ。それに、これはこれで美味いと思うがな?」
串焼きは、塩だけのシンプルな味付けで、よく言えば素材の味を感じさせてくれる。
悪くいえば、味気ないただの塩焼きだ。
「なぁ、オッサン……」
「ん? どうした?」
「いや、オッサンの料理が食べたいなって思っただけ」
確かに、作ってないな? [ヤヌンバ]からの帰りは毎日作ってたしな……
「なら、作るか、一旦、外に出るぞ」
「え、いいのか!」
「ああ、だけど、[バリオン]の外でだ。街中でやるのは無理だからな」
二人して、門の外に出る。
森の近くまで移動して、周囲に人が居ないことを確認してから“買い物袋”に金額を数枚入れていく。
料理と言っても、焚き火でやるのは、なんか違うとずっと思ってたんだよな。
「いいか、今から見るものは内緒だぞ!」
「お、おう、わかった!」
赤髪ツンツンショートに確認してから、俺は屋外調理台とカセットコンロ、揚げ物用の鍋など、フルセットを取り出していく。
「金貨は、かなり減っちまうが、やっぱりこれしかないよな!」
調理台にまな板をセット!
豚肉を塩コショウからのカット! アスパラも半分にカットッ! スライスチーズも合わせて、合体ッ!
肉巻きアスパラチーズを、小麦粉、卵にパン粉ッ!
油の温度は170度!
「最高の温度だ! アゲアゲだな!」
音を聞きながら……なんて事はしない! 音聞くのは天ぷらのみ、色がキツネ色になったらあげる!
揚げもんバットに次々に『肉巻きアスパラチーズ』をあげていく。
さらに、トンカツ用ロースをスジ切り、肉叩き、小麦粉、卵、パン粉からの(油に)ドーン!
赤髪ツンツンショートの目が輝いている。
本当は唐揚げなんかも、作りたかったが、下ごしらえに時間が掛かるので今回はキャンセルだ。
だが、肉巻きアスパラチーズとトンカツのダブルタッグは、期待を裏切らない!
トンカツと肉巻きアスパラチーズを食べやすいサイズに切り、キャベツの千切りを添える。
そして、最強のカロリーの悪魔、マヨネーズ!
さらにソースにカラシを召喚!
「さぁ、出来たぞ! 食ってくれ、熱いから気をつけろよ」
ソースをトンカツにかけてやると、赤髪ツンツンショートは待ちきれなかったのか、そのまま一切れを指で掴み口へと運び。
少し熱そうだが、噛む事に目が輝きだしている。
肉巻きアスパラチーズを次に掴み、マヨソースをつけて口に運ぶ。
「おい、どうだ?」
「オッサン、美味いぞ。やっぱりオッサンの料理は最高だな」
どんな有名人の食レポよりも、最高の一言だな。
「はは、ゆっくり食え、誰も取らないからな、これも飲んでみ」
俺が出したのは、ジンジャーエールだ。
「こいつが俺のオススメだ。エールと似た名前だが、一味違うからよ」
俺も肉巻きアスパラチーズをマヨソースにティップしてから口に運び、ジンジャーエールを流し込む。
「最高かよ!」っと煙草に火をつける。
赤髪ツンツンショートは炭酸に免疫がない為か、最初はゲホゲホしてたので、箸で炭酸を掻き回して飛ばしてやる。
「オッサン、これなら飲めるし、美味いじゃん!」
「だろ? さて、片付けだな、油を冷ましてから、油入れに入れるとして、宿の井戸で使った物を洗わないとな……」
【ストレージ】に使った物を片付けていく。
片付けをする俺の目に、トンカツを食べている赤髪ツンツンショートの嬉しそうな顔が見えた。
素敵な笑顔じゃないか、赤髪ツンツンショートの最高の笑顔いただきました。
おもしろい٩(ˊᗜˋ*)و 興味がある|ω・*)
とりあえずもう少し読んでやるか( ˙꒳˙ )
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