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4話、オッサン、初めての経験と赤髪ツンツンショートにドキドキしたんです。

「オッサン、アンリの後ろを頼む、敵が来たらすぐに叫んでくれ」

「わかった! とりあえず、全力でやってみる」


 今、迫ってる奴らはまたゴブリンなんだろうか、もし、ゴブリンだとするとゾッとしちまうな。


「うむ、これはウルフだな……数は多いが安心するのだよ。キンザン殿は敵の発見だけに集中してくれたらよいのだよ」


 周囲を警戒すると同時にある事実を思い出して、すぐにストレージから“買い物袋”を取り出して想像する。

 金貨を1万と考えてしまった為、まだ残金分が残っている、その為、俺が欲しかった物はすぐに手に入った。


「2人ともこれを目につけてください!」

 俺が手渡しなのは作業用ゴーグルだ。


「オッサン、なんだよこれ! 今はそれどころじゃ」


「いいから、つけてください!」


 赤髪ツンツンショートとアンリさんがゴーグルを付けたのを確認して俺は2kg入り特大唐辛子大増量パックの袋を開ける。


 ビニール手袋をつけた手で鷲掴(わしづか)みにした唐辛子を全力で草むらへとブン投げていく。

 真っ赤な粉が草むらにぶつかり、飛散するとその場にいたウルフが叫び出した。

「よっしゃ、くらいやがれ、唐辛子バズーカー! おりゃあ!」


「キャイン!」っと声を上げているのが分かる。

 声の方向にアンリさんが矢を放っていく。


 同様に次々に唐辛子を投げ放つと風も味方してくれて、周囲のウルフ達が動きが取れない状態になっていた。

 逃げたい方向からも前方の俺達からも凄まじい刺激臭がするのだから当然だろう。


 位置がばれたウルフ達をアンリさんと赤髪ツンツンショートが討伐していく。


 倒したウルフをアンリさん達と一緒に一箇所に集める事になる……俺は職業柄、肉や血などは平気だが、生きていた温もりが残るそれを目の当たりにして、酷い吐き気に襲われた。


「おい、おい、オッサン大丈夫かよ?」

「わるい、生き物が死ぬのは見慣れてなくてな、大丈夫だ」


 赤髪ツンツンショートに心配されながらも、俺は自分が命を奪う結果になったのだと改めてウルフを見つめてから、残りのウルフも回収していく。


 一箇所に集めたウルフは討伐部位の回収が基本になる。ウルフの場合は、牙や爪、毛皮になるが近くに川が無いので、皮を剥いでも洗えない為、勿体ないが諦めるらしい。


「それなら、俺が貰ってもいいですか?」

「あん? オッサン、血塗れの毛皮なんて、直ぐにダメになっちまうんだぞ?」


 話を聞いて、再度お願いしてみると、アンリさんは、条件付きで許可をくれた。


「条件としては、キンザン殿が自分で解体した物に限らせて貰います。それなら、自分の取り分となりますし、いい経験になるのだよ」


「分かりました。なら、早速やらせて貰いますね」


 会社に勤めていた際に送られた精肉工場での1カ月間がここで役に立つなんてな。


 赤髪ツンツンショートが解体の仕方を軽く説明してくれたので、俺はバトルウルフのナイフを手に言われた通りにウルフ体にナイフを当てる。


 “解体”が発動したのを感じたのはその瞬間だった。


 自分の意思とは関係なく、手足が動き出し、更に解体する箇所が自然と理解できる。

 あっという間に吊るされたウルフの皮が剥がれ、肉へと解体されていく。

 早送りのスプラッタームービーを無理矢理見せられているような気分に気が滅入りそうになるが、それも3体目には慣れてしまっていた。


 結局、討伐したウルフ7体すべてを解体してしまった。


「オッサン、なんて速さで解体してんだよ。流石にひくぞ……」


 赤髪ツンツンショートの初めてのドン引きを頂き、俺は軽くショックを感じつつ、ウルフの毛皮、7枚をストレージへとしまい、次に解体した肉などもしまっていく。


 その光景に次はアンリさんが驚愕の表情を浮かべていた。


「キンザン殿、今のは、異空間魔法ですかな」


「魔法というか、スキルですね」


 アンリさんは、それを聞いて更に呟いた。


「食材を取り出した際にも感じましたが、本当にキンザン殿は規格外ですな」


 ウルフの解体が終わると、赤髪ツンツンショートが俺を地面に引いた敷物へと引っ張っていく。


「オッサン、今日はボクと見張りをするから、早く寝るよ! アンリ、時間になったら起こしてね」


「うむ、わかったのだよ。ゆっくり休んでくれ」


 俺もとりあえず、全力で寝ていく。

 しかし、初めてのウルフとの戦闘と解体を経験して興奮状態で中々、寝付けない。

 しかも、背後から眠っている赤髪ツンツンショートが抱きついてきていて、鎧をつけているのはわかっているが、密着されている事実が俺の理性を壊しに来ていた。


 結局、寝れないまま、俺は起き上がり、焚き火の前で見張りをしているアンリさんの傍に腰掛けた。


「寝れなかったのだね。初めての解体だったみたいだから、仕方ないのだね」

「はは、情けない話ですが、その通りです、俺は生き物を、いや、犬みたいなサイズの生き物を殺した事なかったんで」


 そう言いながら、徐ろに煙草を取り出すとライターで火をつける。


 軽く肺に煙を吸い込み、薄い煙を口から吐き出していく。


「葉巻とは違う物なのだね? 不思議な物だねぇ?」

「アンリさんも吸われるんですか?」

「たまにねぇ、今は葉が切れているのだよ」


 そう言うとパイプ煙草のパイプを取り出し、苦笑して見せてくれた。


「ちょっと待ってくださいね」と、俺は“買い物袋”を取り出していく。


 過去に巻き煙草や葉巻と、調子にのって試した事がある為、間違いなく買えるはずだ。


 1袋、700円くらいの巻き煙草の葉を取り出して、袋を開けてからアンリさんに手渡す。


「これで一緒に吸えますね」

「よいのかね? 葉は嗜好品なのだよ、簡単に貰っていいモノでは……」

「構いませんよ。愛煙家ってのは、そう言うもんなんで」

「感謝するのだよ」


 こうして、異世界での愛煙家仲間が出来た。


 夜の闇に白い煙が吐き出され、星空に軽く煙が掛かる。


 そうして、アンリさんの見張り時間が終わり、起こされた赤髪ツンツンショートが伸びをして俺の方にやってくる。


「なんだよ、オッサン寝なかったのかよ? 見張りなめてると命落とすぞ?」

「キンザン殿は休んでも大丈夫なのだよ、ずっと起きていては、良くないのだよ」

「大丈夫ですよ。なんか、眠れないので、このまま頑張ります」


 会話が終わり、アンリさんが眠りに入る。


 焚き火の前で並ぶように座る俺と赤髪ツンツンショート。


「なぁ、オッサン。[バリオン]についたら、どうするつもりなんだ」

「そうだな、何するかな、何処に行っても俺は余所者だからなぁ」


 焚き火を見つめながら、そう語ると赤髪ツンツンショートは、溜め息を吐いた。


「はぁ、オッサンも大変だな、まぁ余所者とかは、気持ちわかるぞ、ボクも同族とあった事ないしな」

「え、そうなのか?」

「赤髪ってんで、有名な種族なんだけど、数が少ない種族なんだよな、だから死んだ両親以外の同族とはあった事ないんだ」


 いきなりのカミングアウトに俺は茫然としてしまった。


「オッサン、そんな顔すんなよ。アンリが居るから大丈夫だって」

「嗚呼、そういえば、アンリさんとはパーティーを組んで長いのか?」


 赤髪ツンツンショートが軽く悩んで見せると俺に軽く頷く。


「アンリとは、なんやかんや長い付き合いだな? まぁ、アンリと冒険できるのは、数日限定なんだがな」

「数日限定?」

「おう、アンリは嫁が居るからな、長く家を留守にできないんだよ。だから、今回も一週間くらいのクエストを選んだんだよ」

「なんか、悪かったな、俺と関わったせいで予定がズレちまったんだな」

「ははは、気にすんなよ。よくある事だからさ」


 結局、見張り中の襲撃はなかった。見張りの時間が終わり、アンリさんが俺達の元にやってくる。


「最後の交代になりますね。二人ともゆっくり休んで欲しいんだよ」


 俺はアンリさんに頭を下げて、赤髪ツンツンショートと眠りにつく。

 最初に仮眠が取れてなかった為、次はゆっくりと眠る事が出来た。


 朝になり、伸びをすると俺の横で無邪気に眠る赤髪ツンツンショートの姿があった。


 そんな俺達を見てアンリさんが微笑んでいるのがわかる。


「ミアが男性と一緒に寝る日が来るなんて本当に不思議な感じがするのだよ。キンザン殿は特別なのだね」

「おはようございます。アンリさん、特別って、まだ子供じゃないですか」

「いやいや、ミアは18ですからね。立派に成人しているのだよ。それにミアの種族は家族以外の男性と寝るタイプでは無いのだよ」


 変に意味深な言い方をされた気がする。変に意識して、冷たい視線を向けられたら悲しいので、冷静に深呼吸をして気持ちを落ちつかせる。


 目覚めてから朝食の支度をしていく。

 朝はやっぱり、卵かけご飯が一番と考えて、お約束になり始めた“買い物袋”に手を伸ばす。


 暖かいご飯を食べたいと考えて、ファミレスの和食セットを想像する。

 すると器に乗ったご飯に味噌汁、玉子に漬物と主食につけるセットメニューのようなやつだ。


 器代も引かれてるのかは分からないが、今の俺からしたら器もセットなら逆に有り難いまである。


 そこに、豚肉の焼肉炒めを添えて、3人分の朝食セットがあっさりと完成した。


 湯気のあがる味噌汁に浮かぶ油揚げとネギ、漬物の僅かな塩麹の香り、熱々のご飯に生卵、追加で作った豚肉の焼肉炒め、夢のような朝食じゃないか。


 二人の顔を見て見れば、アンリさんは味噌汁を飲む度に息を吐いて、嬉しそうに飲んでいた。

 赤髪ツンツンショートは、肉と玉子の最強タッグに米をかき込んでいく。


 そんな俺も久しぶりに食べるコンビニ以外の暖かい米に感謝しつつ、卵かけご飯を噛み締めていく。


 やはり暖かい米は、正義だよな、日本人に生まれた事に感謝したくなるくらいにはそう感じてしまう。


 食事を終えてから、俺は“買い物袋”に金貨を1枚とりあえず入れておく。

 欲しい物がある訳じゅないが、入れた金額をストックしてくれるのがわかった為、先に金貨を入れて置く方が使い勝手がいいのだ。

 そんな事を考えながら、金貨を3枚(6万円)を残し、残り4枚(8万円)分を“買い物袋”にチャージする。


「おーい、オッサン、行くぞ!」と赤髪ツンツンショートの呼ぶ声が聞こえた。


「おう、今行くよ」


 アンリさんの話だと[ヤヌンバ]から[バリオン]までは歩いて6日程の距離があるらしいので、あんまりゆっくりも出来ない。


 二人と共に俺は歩いていく。


 そこからの3日間、しっかりと見張りにも参加させてもらった。

 赤髪ツンツンショートと二人一組の見張りにもなれ、夜中に襲撃して来たモンスターを撃退する事もあった。

 1つ変わったのは、俺もウルフを容易く倒せるくらいには戦えるようになれた事だろう。


 厳しいながらも赤髪ツンツンショートが俺の指導を道中にしてくれているお陰だ。


 今、俺の手にはバトルウルフのナイフではなく、過去にマグロの解体ショーを行った際に会社で購入したマグロ包丁が握られている。

 無駄に見栄を張った大きいサイズで、展示用として本物を飾り、当時の会場は大いに盛り上がっていた事を何となしに思い出す。


 値段もかなりするが、しっかり使えるマグロ包丁一般販売不可の逸品だ。今の俺が出せる最大の武器を想像したらこれが出てきたのだ。


 日本刀のように見えるが、マグロ包丁は基本、ステンレスや鋼で作られている為、日本刀のように武器として使うなど言語道断なのだが……

 こと、この異世界において、俺が貰ったスキルを合わせる事によって、これ程使い勝手のいい武器はないと言えた。


 今も、昨晩襲撃してきたウルフとゴブリンが懲りずに俺達に向かって奇襲を仕掛けてきている。

 俺はこのマグロ包丁と【調理器具マスター】を合わせ、更に敵に対しても【解体】を発動する事で的確に(しめる)為のポイントを教えてくれる。

 その為、一撃必殺に近い攻撃が可能になった。


「ふぅ、オッサン、大丈夫か?」

「おう、問題ない。アンリさんも大丈夫そうだし、俺達の勝利だな」

「また、随分と酷い姿だな、オッサン、返り血でベトベトじゃんかよ」


 鼻を摘みながら、残念な人を見るような、なんとも言えない表情を此方に向けられていた。


「ははは……なんか、毎回こうなるんだよな」


 綺麗に解体できるが、返り血スプラッシュを浴びまくるため、戦闘後はこんな感じに悲しい会話が繰り返されている。


 その為、俺は“買い物袋”をフル活用して、着替えの服を手に入れたり、ペットボトルの水を頭から被ったりと必死に返り血を流す作業が続いていく。


 歩いて[バリオン]に向かう俺達は3人は、[テピアの草原]を抜けて、既に[ミリミナの森]へと入っている。


 [テピアの草原]と違い[ミリミナの森]には川もあり、焚き火を行いながら返り血を川で流していく。

 見張りを交代しながら、水浴びをしていく。

 俺のいた位置から、赤髪ツンツンショートが鎧を脱いでから服を抜き出すのが見えて、あわてて下流側に移動する。

 頭に焼き付いた、褐色の肌を必死に振り払いながら、今まで狩り続けた毛皮などを水に浸して綺麗に洗っていく。

 流石は【ストレージ】と思ったのは、中の素材などが一切、腐食や劣化などといった時間経過をなかったからだ。


 その結果、素材を取り出す度にモンスターの血で血塗れになっていたが、仕方ない。


 しかし、素材を綺麗に洗えた事で、しっかりと売り物になるだろう。


「オッサン、嬉しそうだけどさ、ウルフの素材はそんなに高くならないぞ? 季節も悪いしな」


 急な登場に頭の中に忘れようとした褐色の肌が思い出されていく。


「そ、そうなのか、それより季節ってのはどう言う事だ?」


 赤髪ツンツンショートに取り敢えず聞いてみると、俺を見てから、空を指さした。


「ウルフの毛皮は、冬が来ないと使わないんだ。つまり、暑い季節はウルフは売れないしな、因みに、寒くなる頃には別の狩場に移動しちまうんだよ、コイツら」


 ダルそうな表情で毛皮を見る赤髪ツンツンショート。


「つまり、冬になれば、需要があるわけだな」

「そうだな、まぁ、加工してない毛皮を冬まで取っといたら、使えなくなりそうだけどな」 

「そこら辺は大丈夫だ。いい情報をありがとな」


 軽く笑って見せると、赤髪ツンツンショートは軽く頷いて、アンリさんの方へと言ってしまった。

 その際に、水で濡れた髪がやけに色っぽいと感じてしまった事実は胸の中にしまっておく。

 欲求不満なんだろうか、俺から見たら子供みたいな赤髪ツンツンショートに……ない、断じてなしだぞ、俺!


 インド映画なんかだと、水は時にセクシーな場面に使われると聞いたが、リアルはこんなに意識してしまうもんなんだな。

おもしろい٩(ˊᗜˋ*)و   興味がある|ω・*) 


 とりあえずもう少し読んでやるか( ˙꒳˙ )


そう思って頂いたら☆☆☆☆☆を押して貰えたら助かります。


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感想、誤字など、ありましたらお願い致します。貴重な時間をありがとうございました(*・ω・)*_ _)

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