20話、俺の竜切り包丁とウサギ肉のスタミナメニュー
俺達『チームフライデー』はその日、『鍛冶ギルド』へとやって来ていた。
初めて来たニア達は、不思議そうに中を見ていたが、俺は目的の物を貰う為にドワーフの職人が待つ鍛冶場へと向かっていた。
「お、来たな。頼まれてたモンは完成してるぞ!」
目の前に置かれた斬馬刀のような巨大な竜切り包丁に俺は全身に鳥肌がたっていくのを感じた。
2mはあろう、巨大な姿、分厚い鉄の塊にすら見える、全体が巨大な刃のようになっており、分かりやすく言えば…………
そう忍者が主人公の漫画で敵役が使っていた『首切り包丁』に近い形をしている。
むしろ、そのイメージでイラストにして渡した為、まさか、そのまま完成するとは思ってもいなかった。
「どうだ! 頼まれた通りに、2本の竜切り包丁を合わせた最高の竜切り包丁だろうが!」
「最高だぜ、まさか、こんな形で首切り包丁を見る事ができるなんて思わなかったよ」
「ただ、本当に使えるのか? ワシら、ドワーフでも振り回すには苦労するぞ?」
「とりあえず持てるか試して見ます」
【身体強化】【調理器具マスター】を発動させ、両手持ちの長い柄の部分を確りと握り、力を入れる。
しかし、俺は拍子抜けした。思った以上にあっさりと持ち上がってしまった。
「な、マジかよアンちゃん!」
軽々と竜切り包丁を持ち上げた事にドワーフの職人は顎が外れるんじゃないかくらいには、驚いていた。
「ちゃんと包丁として、作ってくれたんですね。感謝します」
「お、おう、言われた通り、最高の竜切り包丁になるようにハンマーを振ったからな、竜切り包丁は、過去の異世界人が持ち込んだ『刀』の技術も必要になるからな、ワシに依頼して正解だったな、ガハハハ!」
異世界人って過去にもいたんだ……フライちゃんの管理する前の時代の話なのかな?
「異世界人ですか?」
「おう、500年くらい前か、迷い人って呼ばれて異世界人がよく現れてたが、最近は聞かなくなったな」
「そんなによく来てたんですか?」
ドワーフの職人は、頷くと少し言いづらそうに口を開いた。
「まぁ、よく現れたが、技術を知ってる奴は成功して、なんも知らんヤツらは、酷い人生を歩んでたな……少なからず、スキルを所持してたが、悪事に使うやつもいたな……」
「そんな異世界人はどうなったんですか?」
「そりゃ、お前、異世界人が街を作ろうとして、数多の種族と揉めて、最後は異世界人の敗北になって終わったな」
「今も異世界人は恨まれてるんですか?」
「まぁ、今は異世界人に対して、偏見はないが、時代が違ってたら、現れた途端に火炙りもあっただろうな……だが、異世界人にも救いの巫女や英雄なんかもいたから、なんとも言えないな」
異世界人は良くも悪くも、この世界に変化をもたらしたが、一部で力のある存在が身勝手な行動をした時期もあり、エルフや竜族など長命な種族は未だに異世界人を嫌ってるようだ。
だが、一般的には、異世界人は知恵を持ち込み、多くの変化を世界に与えた存在としても語られているみたいだな。
「長々と話しちまったな、悪かったな、ワシも仕事が、まだあるから、失礼するぞ。またな!」
「はい、ありがとうございました。また来ます」
すぐに竜切り包丁を【ストレージ】へと収納し、嫁達の元に戻る。
そこから、数日ぶりの『冒険者ギルド』へと移動する。
ギルドへ到着して直ぐにオーク討伐がどうなったかを聞くことにする。
しかし、受付嬢に聞いても、浮かない表情を浮かべる。
「実は、まだ討伐終了になってないんです……ある程度のオークとオークリーダーは発見と討伐に成功しましたが、上位個体が未だに未発見となっています」
説明を聞いていると、まだ[森の終わり]エリアでは探索が続いていて、討伐部隊のメンバーが報告に戻る事はあるが、上位個体の発見は出来ていないそうだ。
「このままだと、食料と水なんかも、心配なんですよね、かなり疲労も溜まってるでしょうし」
「そうなんですね、情報をありがとうございます」
話を切り上げてから、俺は嫁達と相談をする。
「まぁ、そんな感じで、まだ討伐部隊は戻れないらしいんだ。だから、食料なんかを届けに行きたいんだが、どうだろうか」
内心で先日危険な目にあった場所に向かおうとするのはどうなんだろうかと言う考えが過ぎってはいたが、それでも自分達が持ち込んだ問題の為何かがしたかった。
「ボクは構わないよ! ニアと2人でかなりスキルを練習したしな!」
「そうにゃ! 今度は負けないにゃ!」
ミアとニアが意気込むと、ベリー達も賛成してくれたので、俺達は食料運搬を受付嬢に申し入れた。
最初は驚かれたが、俺が異空間スキルがあり、多くの荷物を運べる事とオークリーダーの討伐実績があるパーティーだと言うことから許可がおりた。
「では、キンザンさん。ギルドの裏に荷馬車が置いてありますので、そちらに積まれた荷を届けてください。無事に戻って来てくださいね」
受付嬢に軽く挨拶をしてから、荷物を【ストレージ】に収納した俺達は荷馬車にそのまま乗ると森の入口まで向かう。
御者の男性も最初は驚いていたが、親切に森の入口まで送って貰い帰って貰った。
「5日ぶりか、みんな、一気に駆け抜けるぞ」
森に入り、[森の終わり]を目指して突き進む。
ホーンラビットやゴブリンなどは、討伐だけ終わらせ、勿体ないが素材は放置させて貰う。
時間が惜しいというのもあるが、勢いのままに目的地に向かいたかった事が一番の理由だ。
昼前には[森の終わり]付近に到着し、そこからは慎重に討伐部隊の拠点を探していく。
川辺の道を進むと、焚き火の後と荷物が置かれた場所を発見する。
見張りの冒険者は最初、警戒していたが、俺達『チームフライデー』の顔を見て直ぐに話を聞いてくれた。
「ギルドから食料なんかを運んで来ました。何処に置けばいいですか」
俺の質問に冒険者の男性が場所を指示してくれた。
「悪いな、そこに置いてくれ、だが、食料はどのくらい持ってきたんだ? 軽装にみえるが」
「あ、俺が異空間スキル持ちなんだ」
そんな会話をしながら、ギルドで預かった大量の荷物を取り出していく。
「助かったよ。今から飯の支度をする予定でな」
その言葉に俺は提案を口にした。
「なら、俺らが作ってもいいですか?」
「お、いいのか? それなら助かるよ! 正直、料理は苦手でな」
許可が貰えたので、俺達は直ぐに調理に取り掛かる。
ずっと考えていたが、この世界では、鳥は簡単に手に入らない、だが、ウサギは大量にいる。
ウサギは鳥と同じ扱いで調理出来るんじゃないかとずっと考えていた為、この場で挑戦しようと考えていた。
まずは、ウサギ肉をカットしていく。
「ミア、鍋に湯を沸かしてくれるか」
「ニアは野菜のカットだ」
「任せろ!」
「任せるにゃ!」
ウサギ肉のポトフを作る為に秘密兵器“買い物袋”から“コンソメ君”などを取り出していく。
ジャガイモ、人参、玉ねぎ、ブロッコリー、キャベツ、ウサギ肉を煮込んでいく。
灰汁が出てきたら、綺麗に取りながら、掻き回し、コンソメ、塩、胡椒、鶏ガラスープの素を入れていく。
野菜が柔らかくなっているかを確かめて、次の料理に取り掛かる。
ウサギ肉の唐揚げを作る為に油鍋に火をかける。
「ポワゾン、鍋の見張りを頼む。ニア、次はウサギ肉の骨取りを頼む。出来たやつから、小麦粉をつけていくからさ」
「かしこまりました。ご主人様」
「はいにゃ〜しっかりとるにゃ!」
バラされたウサギ肉をミアが力強く、小麦粉、胡椒、塩、ハチミツが混ざった液体に押し付けていく。
「オッサン、これ本当に嫌な感触なんだけど」
「ははは、我慢してくれ、マジに美味くなるはずだからさ」
文句を言いながら、液体に次々、ウサギ肉をつけるミア、漬け終わったウサギ肉を一旦、放置してる間に、俺は野菜炒めといった簡単な物を中華鍋で炒めていく。
ベリーに頼み、ウサギの唐揚げを揚げて貰うと、全てが完成になる。
野菜とウサギ肉のスタミナメニューだ。
米なんかも用意しようか迷ったが、過剰すぎるので、これくらいにしておく。
料理の香りに誘われて、探索をしていた冒険者パーティーが次々に戻ってくる。
戻ってきたパーティーに順番に料理を配っていく。
次々に料理が無くなる中で俺達は俺達なりの戦いをこなしていく。
「一気に追加、あがるぞ! ミア、皿と盛り付け頼む!」
「わかった! オッサン、新しいパーティーが帰っできたみたいだ! 追加で唐揚げも頼む!」
「よっしゃ、ポワゾン、唐揚げ液を追加だ」
「はい、ご主人様、直ぐに!」
「キンザン、ウサギ肉がかなり減ったにゃ〜! どうするにゃ〜!」
「俺がまだ持ってるから、ニアは構わずに肉を捌いてくれ!」
「キンザンさん、野菜が切り終わったわ! 別鍋に野菜を煮てくから、タイミングでポトフの味付けを頼むわよ」
「了解だ。ベリー、ミアの手伝いを頼む」
「わかったわ、待ってて」
調理側の俺達は外にも関わらず、飲食店のピーク時間のような忙しさで料理を作り続けていた。
「ドーナ、皿の回収と、洗いを頼む! 終わったら、【ストレージ】に入れてから取り出してくれ」
「わかったなの! 任せるの!」
何故か、俺のスキル【ストレージ】に出入り出来るようになっていた謎な存在ドーナ。
だけど、【ストレージ】に出入りできる事実は大きなメリットがあった。
例えば、濡れた皿を入れたら、皿と水滴に分けたりが出来る。
その為、今も、ドーナは皿を洗っては水分だけを【ストレージ】に残して、乾いた皿を取り出している。
「次、ラビット炒め、4人前あがるよ! ベリー、ミア、頼んだ」
「任せろ!」
「わかったわ」
俺達の飯を食べ終わって満足そうな表情の冒険者達を見て、俺は一人、片付けを開始していた。
嫁ちゃん達にも、休憩がてら昼飯にチャーハンを作ってやったら、ベリーとポワゾンまでおかわりするので大変だった。
「やっぱり、中華鍋を出して正解だったな、うんうん」
気分よく洗い物をしていた俺に冒険者の一人が話しかけてきた。
「飯をありがとう『フライデー』の噂は聞いてたが、ここまで、料理が美味いとは驚いたよ」
「あ、どうも……えっと……」
「あ、済まないな、名乗りもしないのは、失礼だったな。オレはロウセンだ。この討伐部隊の隊長を任されている。よろしく」
「こりゃどぉも、俺はキンザンです。こちらこそ、討伐を全て任せてしまってすみません」
「構わないさ、それで本題なんだがな、今日だけでいいんだが、協力して貰えないだろうかと思ってな」
「協力ですか?」
目の前の金髪中年冒険者、ロウセンの言葉に分からずに質問をしていく。
「ああ、今日は笑う月の夜が来る、その為、一度引き返して、仲間を集めるか、このままのメンバーでやりきるかで意見が分かれててな」
つまり、笑う月の夜は、モンスターが凶暴化する為、今の人数だと不安があると言う事だった。
「一旦、仲間と相談してもいいですか? 勝手に決めるには、少しあれなんで」
「そうなるよな、いい返事を期待しているよ。オレはあのテントが寝床だから、決まったら教えてくれ」
そう言い、テントへと戻って行った。
「さて、どうしたもんかな」
俺も悩みながら、嫁ちゃん達に頼まれた内容を話に向かう。
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