エピローグ0.5話、希望と絶望の始まりは突然に2
やる気が無くても火をつけてしまえば、煙草は切れる、空箱をゴミ箱に投げ捨て、気乗りしない足で煙草を買うためにコンビニへと向かう。
見知った顔しか居ないような小さな町で俺を見た奴らが、ヒソヒソと話す声が聞こえる。
いつものコンビニすら、行きにくい……
普段と反対側に歩いていく。
30分くらい歩いていると見たことのないコンビニを見つけた。
個人店なんだろうか、コンビニだと分かるが海外の文字のようで、名前がわからない。
店内に入り、エアコンの風に出迎えられる。
軽く店内を物色しようと思った俺の視線はレジへと釘付けになっていた。
見慣れない青色の髪をした学生さんがレジに立っており、珍しい髪の色のせいか、店員を凝視してしまい慌てて視線を逸らす。
少し気まずさを感じた為、直ぐに煙草の番号を伝える事にする。
「煙草いいですか、184番を3つ、いや、5つください」
カートンで買おうか迷ったが、歩きで煙草を抱えて帰るのを誰かに見られるのが嫌だった。薄手の上着についたポケットに入るギリギリの個数だ。
「ありがとうございます。5点で三千円になります。移転キャンペーンで500円で1回クジが引けます。6回どうぞ」
よくあるやつだ、最近はよくクジを引くが、当たりらしい当たりは引いた試しがないな……
一枚目をめくる、当然、ハズレだ。ちなみにハズレは飴玉が三個だった。
二枚目はどうか……ポケットティッシュだった。
三枚目、500のペットボトル(水)
まぁ、水は悪くないな……
四枚目はまたハズレ、飴が六個に増えたな。
五枚目、ボールペン型ライト
六枚目……めくると、そこには【S】とだけ書かれていた。
「えっと、Sって、なんですか?」
「…………」
無言の女性店員に俺も沈黙する。
いや、なんか反応が欲しい。お客さんが質問したら、とりあえず返事して欲しいんだが……
無言だった店員がカウンター下に手を伸ばすと一枚のA4サイズの封筒を取り出す。
でっかく『S』と書かれた封筒から、紙を取り出すと説明をされる。
「おめでとうございます。[バッカス]へのシングルチケットが当たりました」
「海外ですか?」
「国外ですね。当たってしまったので、受け取りサインをお願い出来ますでしょうか?」
「あ、はい、これ、絶対行かないとダメなやつじゃないですよね? まぁ行けるなら嬉しいけど」
「はい、ですが、楽しんでいただけたら嬉しいです……では、コチラにサインをお願いします。名前だけで大丈夫ですので」
受け取り証明書に名前を書いていく。
「1番最後の部分にアンケートがありますので、そちらの記入もお願いします」
言われるままにサインを入れてアンケートを見る。
『あなたは、異世界に行きたいと思った事がありますか YES、or、NO』
YESにマルをして、アンケートが終了する。
「はい、確かに確認できましたので、賞品をお渡し致します」
そう言いわれ、女性店員を見るとカウンターに赤いボタンが置かれていた。
「え、なんすか、それ?」
「良い異世界生活を、行ってらっしゃいませ。金山様」
女性店員がそう言うとボタンが押される。
急にひらいた穴の中に落下する。
気絶してたのか、ここは何処だ……頭イてぇ。
俺が意識を覚ましたのは、壁も柱も存在しない白一色の何も無い空間だった。
「夢か、此処はどこなんだ……最近、寝れてなかったから、変な夢を見てるのか」
その場で考えるが、やっぱり目覚める様子はない。
「そもそも、いつ寝たんだ? むしろ、煙草を買いに行った辺りから夢だったのか……」
「あ、あの……もしもし、考えてる最中にすみません、お話いいですか?」
目を瞑りながら考えていた俺の背後から、突然、弱々しい女性の声がした。
そちらに視線を向ける。視線の先には全身白のワンピースを来た長い髪の女性が立っていた。
カラコンだろうか、薄紫色の綺麗な目、くりくりしている瞳からも間違いなく可愛い美人さんだ。
自分の表現力の無さを申し訳なく思うが可愛いは正義くらいしか、言葉が思い浮かばなかった。
「えっと、あの……全て聞こえてます……」
「…………」
「…………」
可愛いって思った事が伝わっているんだろうか?
「あわわ、あ、あの照れます……」
急に赤面してあわあわしている目の前の可愛い女性に俺も姿勢を正すことにした。
「本当に聞こえてるんだな?」
「はい、あと、可愛いという表現はその恥ずかしいです……え、えっと、話を進めていいですか……これ以上、言われると、身体が熱くなって話が出来なくなっちゃうので」
「それはごめんな、話を聞かせてくれ」
「はい、私は転移担当の女神フライです。この度は、転移者として、選ばれたようでおめでとうございます」
「よく分からないが、とりあえず話を聞くよ」
「悩まずに受け入れてくださりありがとうございます。すごく助かります」
ニコニコしながら、両手を前で合わせる姿は天使に見える 。
「それで、俺は何をしたらいいんだ?」
「はい、世にいう流行りの転移者になってもらい、私の管理する世界の住人になってもらいたいんです」
「ほうほう、つまり、勇者になれと?」
「いいえ?」
「ん? 魔法とか剣の世界は?」
「ありますよ。でも、勇者とかは、今は必要無い段階でして、素直に住人として生活してほしいんです」
「ふふ、わかった帰らせてもらっていいかな?」
「待ってくださいーーー! 帰らないでくださいーーー!」
可愛い美人がだだを捏ねて、足につかまる姿はレアだが、異世界に行ってまで住民Aをやる気はないんだよね。
「ちゃんと、色々ありますから、特権つけますから、金山さんに断られたら私、もう世界を維持出来なくなっちゃうんですーーー!」
「とりあえず、話を聞くから泣かないでくれますか、罪悪感がすごいんで……」
「だって、だって……いきなり帰るっ言うから……」
とりあえず、泣いた女神様を宥めつつ、話を聞いていくことになった。
飲み物と菓子を出してもらい、白い空間に似つかわしくないちゃぶ台を挟んで話を再開する。
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