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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
7章 繋がりの先に、女神の心と紡がれる道

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166話、みんなで大掃除

 俺が店の掃除をしていると、外側から小さな呟きが聞こえてくる。

 声の主は外掃除を担当していたフライちゃんとベリーだった。


 小窓を開けながら、厨房を掃除する俺は、聞いてはダメだよなっと、思いながら調理台を拭きあげていく。


「──にして、いきなり居なくなるから、心配したわよ?」


「いえ、わたしも、あの時は頭が上手く回ってなかったみたいで、本当にすみませんでした」


「そうね、まさかの行動力には本当に驚いたわ、何より、フライちゃんとポワゾンが暴走するなんて思わなかったもの、ふふ」


「うぅ、面目無いと言いますか、解決の糸口が見つかったと思った時には、わたしも、ポワゾンも、既に動くと決めて行動してしまったのですよね」


 草刈りをするような、カッカッっという草を切る音と共に俺の為に頑張ってくれた事実が話されていく。


 直接言われている訳じゃないし、なんなら、盗み聞きみたいになっている現状で照れる俺は少し、いや、かなりダメな気がするな。


 そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、話を続ける二人は楽しそうに会話をしていく。


「流石に今回のきんざんさんに掛けられた禁忌のスキルには、わたしも落ち着きなんて感情が無くなりましたからね」


「それは私も同感ね。しかも、いつもながら、勝手な事をした結果じゃない……ルフレ殿下が兵士も同行させていていたのに、自分から突っ込んだみたいだし」


「ですね。まぁ、最初は上手く捕まえたみたいですが……その後の王国側の行動が愚かといいますか……」


 何故かフライちゃんの声色に黒いモノを感じるな……


 直ぐにベリーの声が発せられるが、俺は耳を疑った。


「そうね。話を聞いてわかったけど、メフィスや殿下は別として、宰相と騎士団長達は気に食わないわね」


「やはり、ベリーもそう感じるのですね。わたしも同意見ですが」


「えぇ、キンザンさんがスキルをくらったのにお構い無しに術者のズナッキーを拘束するだけでなく、魔力管(まりょくかん)の破壊をしたって聞いたわ」


 話を聞いていれば、俺はそんなに違和感を感じていなかったが、長く此方の世界で生きてきたベリーからしたら不可解な話に感じていたらしい。

 ベリーはそんな俺の考えを知ってか知らずか、話を続けていく。


「おかしいのよ、幾らルフレ殿下が居たとしても、幾らでもスキルを封じる方法があったでしょうに、悩まずに魔管の破壊をしたのよ? まるで……」


「ですね。きんざんさんを小さくしておきたかったようにすら感じますね。考えたくはないですが」


 話の雲行きが怪しくなって来た頃合で、草刈りが終わったのか、掃き掃除に移って行く。


 二人の話を聞いていて、俺は以外に王国側の人間からしたら、厄介者として嫌われているんじゃないかと考えてしまった。


 ただ、分からないのは、本当にズナッキーの行動が策略的な目的が組まれた行動だったのかという事だ。


 少なくとも宰相達はズナッキーに魔法スキルであろう行動もしていたし、なんならしっかりと拘束もしていたしな。


 俺の頭で考えても分からないなぁ……


 しかし、もしそうだとしたなら、王国側もルフレ殿下を筆頭に纏まってはいるが、やはり一枚岩じゃないんだろうな。


 俺なりに考えるなら、王国側の派閥問題ってところか、宰相と騎士団長のダミオが同じ派閥だとして、俺がメフィス側に見えたんだとしたら、まぁ、説明なんかいらないくらい分かりやすい結果だよな。


 考える程、嫌な汗が背中を伝って流れていくのが分かる。


 考えて掃除の手が止まってしまっている為、とりあえず、煙草に火をつけて、頭を落ち着かせる事にした。


 小窓から煙草の煙が外に流れると、小窓からフライちゃんとベリーが俺を覗き込んできた。


「何サボってるのよ? まったく、キンザンさんってば!」


「そうですよ? ベリーの言う通りですよ。流石にサボりは良くないのです」


 汗だくになって、土に軽く汚れた二人の姿に軽く申し訳ないと手を前にして、謝りながら直ぐに飲み物を渡していく。


 フライちゃんとベリーは、小窓から渡されたペットボトルのレモンティーを飲んでいく。

 何処か、作業後の女性が飲み物を飲む姿は異様な美しさがあるよな。


 その後は真面目に掃除をしていく。

 綺麗になった厨房を見つめて、次に店内の掃除を開始する。


 床を磨いて行くと外側の作業を終えた二人が扉を開く。


「キンザンさん。このままだと、入れないから、拭くものをくれないかしら?」


 ベリーは入口で止まり、そんな事を言ってきたので直ぐに変えの履き物と濡らしたタオルを手渡す。


 二人が軽く汚れを落としてから、履き物を変えるとそのまま、店の掃除が開始……


「ベリー、フライちゃん……悪いが先に風呂だな……」


 すごく申し訳ないし、失礼だし、なんなら嫁とは言っても女性に対して言うべきではないだろう……


「いきなりなんなのよ、キンザンさん?」


 笑顔なんだよ! 笑顔に殺気じみた何かが混ざった視線なんだよ……


「ち、違うんだ! ベリー、話を聞いてくれ……」


 俺が風呂を勧めた理由は凄く単純で、簡単に言えば、雑草や草刈りのせいで全身に草が放つ独特な香りが付いていたからだ。


 申し訳ない話だが、店内が草の香りになってしまうんじゃないかと言うくらいには草一色の香りなんだ。

 言うなら、ドクダミ何かを何倍も濃厚にしたような感じなんだが、二人はお互いに気づいていないようだ。


 ただ、ストレートにそれを口にすると、俺も刈り取られるような気がするので、それを口にする事はない。


 言い訳を考える俺を睨みつけるようにして笑うベリーに困り果てる俺、しかし、救いは背後からいきなりやってきた。


 店舗と屋敷を繋ぐ通路の扉が開かれる。扉から姿を現したのは屋敷側の掃除をしていたポワゾンだった。


「ご主人様、お茶をお持ちしまった。あら、何をしているのですか? うぅ、失礼ですが、ベリー、アナタとフライ様も……かなりキツイ臭いが致しますよ……まるで草刈りを素手でしていたような香りですね……」


 まさかのポワゾンのストレートな発言にフライちゃんが衝撃を受けたような表情で俺に視線を向ける。


 俺は黙ったまま、苦笑いをしつつ、指で頬を掻くような仕草をする。


 それで全てを悟ったようにフライちゃんが口を開く。


「ポワゾン、ゴメンなのですが、お風呂に入りたいのですが、よろしいですか……」


 軽く泣きそうな顔をするフライちゃんに罪悪感を感じながらもフライちゃんとベリーに近づくと二人の頭を優しく撫でる。


「悪かったな、もっと早く伝えたら良かったんだが……」


 急に頭を撫でられたせいか、フライちゃんとベリーが軽く頬を赤らめつつ、頷いてくれた為、二人は一足先に風呂へと向かう事になった。


 俺は二人をポワゾンに任せると残った店舗のフロア側に視線を向けて掃除を続けていく。


 俺は必死に掃除をしながら、ポワゾンが此方に顔を出した事から、屋敷内部の掃除をするペコとグーは大丈夫だろう。


 ただ、屋敷の庭側を任せたミト、ナギ、ドーナと屋敷の壁に巻き付いた蔓何かを掃除しているミアとニアが上手くやっているかを気にしていた。


 そんな俺の心配は正しかったようで、店舗側の掃除が終わった後に屋敷に向かう。

 通路は使わずに店側からぐるっと屋敷側に向かうと、庭は綺麗になっていて、苅終わった雑草が山積みになっていた。


 それと同時に草の香りに包まれた嫁ちゃん達がおり、俺は改めて、風呂が必要だなっと再確認する事になってしまったのは言うまでもない。


読んでくださり感謝いたします。

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