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みんなが断った異世界転移☆暇な日、限定で揚げもん屋『フライデー』をやってます。  作者: 夏カボチャ 悠元
6章 砂漠の街オアシス都市 [ガルド・デゼール]下

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160話、ハイタッチ

 単純な仕掛けと偽のカエルが正面に広がる通路に投げ込まれる。


 釣竿作りの為に待機した円状の空間には、無数の焚き火が炊かれ、視界が失われていた世界に揺らめく炎が正面の通路を照らしている。


 焚き火には、巨大ガエルが解体されて、持ち込まれた枝に突き刺された状態で串焼きにされている。

 こんな時に不謹慎だろうが、芳ばしく美味そうな香りが洞窟内に漂い出す。


 焼かれたカエルに塩が振られていくと更に美味そうな香りが広がり出す。

 脂は酷い臭いで気分が悪くなったが、既に脂を綺麗に取り払われた肉は鶏肉の様な匂いを放っている。


 蛇人族の戦士達に焼けた巨大ガエルの串焼きが次々に手渡されていく。


 俺達にも、串焼きになった巨大ガエルが持って来られると、ニアやペコ、グーが困惑した様子で互いの顔を見合っていた。


 ただ、俺は悩まずに小さくちぎられた肉に手を伸ばし、口に運ぶ。


 口の中で上質な鶏肉の味と肉汁が溢れ出していき、小さくちぎった肉が何倍もの旨味を口から全身に流し込んで行くような感覚に体が震えた。


 そんなカエル肉の串焼きを味わいながら、釣竿にした槍をクイ、クイ、っと動かす蛇人族の戦士の一人の竿が僅かに引かれた。


 その僅かな変化に気づいた蛇人族の戦士が慌てて、グイっと釣竿を勢いよく自分達側に引っ張る。


 ズズズッ……ズズッ……ザザザッ!


 地面を巨大なタイヤを引きづる様に音が鳴り響き、それは姿を現した。


 聞いていた以上に不気味な姿のミミズ──ドレインワームだと直ぐに理解した。


 先端は鋭く伸びた(くちばし)上になっており、四つに分かれた様に広げられた嘴の内側は刺々しい歯がギッシリと並び、錯落(さくらく)する歯牙からは唾液であろう、粘着質の液体が地面に向けて落下していく。


 ドレインワームを前にした蛇人族の戦士達が武器を構えると同時に走り出し、また別の部隊が縄を投げ、ドレインワームの体を左右から引き、逃がさぬ様に押さえつける。


 ただ、今回の目的は、俺に掛けられたズナッキーのスキル【縮小化】の解除にあった。


 それを理解している筈のパピィさん達だったが、あろう事か、先頭で鉾を振るうパピィさんが容赦なくドレインワームの頭部を砕く様にして叩きつける。


「え?」っと、俺はあんぐりと口を開けてしまった。


「はにゃ! にゃ、にゃんで倒しちゃうのにゃ! キンザンは、まだ小さいままなのにゃぁぁぁ!」


 ニアの声と俺の表情にナギが答える様に口を開く。


「問題ない。アレはオスだから、普通のメスはもっと小さい、だから大丈夫」


「「もっと小さいってどれくらい?」」

「でも、ペコよりでかいよね?」

「うん、グーも一呑みにしちゃいそうだよね……」


 ペコとグーの質問に再度ナギが少し悩むと倒れたドレインワームを指差す。


「オスの半分くらい? 短いのがメス」


 その言葉が確認させる様に別の蛇人族の竿が反応すると、最初のドレインワームの半分サイズの個体が姿を現す。


 オスとメスの違いが明らかになったからか、直ぐにそれがメスだと理解した俺を手に掴んだナギが猛スピードで向かっていく。


 ナギの動きに合わせる様にドレインワームのメスに縄が掛けられる。

 しかし、サイズがオスの半分であり、短く細いメスの個体は縄をギリギリで回避すると踵を返すように出てきた通路に逃げようとしている。


 その様子から、ナギが通路に逃げるメスのドレインワームの背に手を伸ばそうとした瞬間、パピィさんが素早く手を掴み、その手を掴むと後ろに放り投げる。


「うわぁ、え、アア!」っと背後に飛ばされる。


 次の瞬間、手を伸ばした通路から、鋭い嘴状の口が閉じて引っ込む様子がわかった。


「ナギ、我が娘。狩りの基本と獲物の特性を忘れるな! メスにはオスが絶対についてくる」


 ナギを後ろ側に吹き飛ばした後のパピィさんの言葉。


 ドレインワームは、メスが単体で狩りに参加する事はない。

 メスを護る為に強いオスが絶対に傍におり、メスに何かあれば身を呈して戦闘を行うらしい。


 あのまま、手を通路に入れていたなら、間違いなくナギの腕が食いちぎられていたかも知れない。


 そこから、更に釣り型の狩りが続けられていく。


 成果としては、ドレインワームのオスを数匹捕える事が出来た。狩りとしては大成功なのだが……目的のメスのドレインワームを捕まえる事が出来ないでいた。


 やはり、簡単には行かないよな……そんな事を考えながら、俺は捕まえたドレインワームを【ストレージ】に入れる。


 サイズが変わらない為、今の大きさでも、入れた物のサイズは変化しないので安心して収納する事が出来ていた。


 流石に長くこの場に居座るのは、難しいだろうと感じ始めていた頃、ペコとグーが覚悟を決めた様に俺を見つめてくる。


「「あ、あの主様……」」


 二人がいつも通り、同時に喋り出すと、両手に構えた武器を構えた後に無数に広がる通路を指差した。


「「私達がメスのドレインワームを何とかします! だから、あの先に向かう許可をください!」」


 予想外の提案に俺達は驚愕した。


「何を言い出すんだよ! 二人になんかあったら、俺は!」


「そうにゃ! キンザンの言う通りだにゃ、二人を危険に晒して、喜ぶ訳ないのにゃ!」


 だが、二人の決意したような表情は揺るがない。覚悟を決めた女の顔と言うやつだろうか、幼さがあった今までの女の子から凛とした女性を思わせる顔に俺は何も言えなくなっていた。


「……そ、それでも、俺は!」


 話し始めようとした瞬間、再度前方が騒がしくなる。


 竿に反応が有り、蛇人族の戦士が竿を操り、広場に勢いよくドレインワームが釣り出される。


 その個体のサイズを目視した瞬間、ペコとグーが誰よりも早く動き出していた。


「「行くよ!」」

「ペコ、遅れないでね!」

「グーもやられないでよ!」


 二人が蛇人族の戦士達を横目に、駆け抜けていくと、ペコが声を上げる。


「グー! 飛ばすよ。用意してッ!」

「わかった、ペコ! 全力でお願い」


 ペコが走りながら盾を前に構えた瞬間、グーが前にジャンプする。

 盾にグーの背中を捉えたペコが武具スキルを発動する。


「行けっ! 【シールドバッシュ】ッ!」


 ペコが発動した武具スキルにグーが合わせるようにして、両足に武具スキル【全体防御】を発動させる。


 宙に飛んだグーの体に、ペコの【シールドバッシュ】が発動されると、弾丸の様な速度で前方に射出されて飛んでいく。


 例えるなら、依然に目にした“インク・イナメント”の使っていた砲台のような射出に似ている。


 凄まじい勢いと共に撃ち出されるグーの拳が前に突き出される。

 突き出された拳に装備されたガンドレッドがドレインワームのメスを通り抜けて背後に居るであろう、ドレインワームのオスに炸裂する。


「ピギギャァァァァァァァァッ!」ッと声が上がる。


 背後からのオスの断末魔にメスのドレインワームが慌てて、前方に移動する。


 これは生存本能の一つであり、同種の断末魔を聞けば、助けるにしても、逃げるにしても、一度距離を置くのが、当然なのだ。


 そして、メスのドレインワームが前方に逃げたという事は、俺達側にやって来るという事だ。


 そんなドレインワームのメスに対して、グーの背後から駆けていたペコが盾を構えたままに突進する。


「武具スキル【シールドバッシュ】【殺さぬ誓い】ッ!」


 発動させた二つのスキルについてだが、【シールドバッシュ】は敵を吹き飛ばすスキルだが、【殺さぬ誓い】は文字通り、敵を殺傷しない為のスキルだと後に聞かされる。


 ペコの一撃がメスのドレインワームを吹き飛ばし、壁に激突する。

 ぐったりとして、地面に落下するドレインワームのメスがピクリっと、僅かに動きながら次第に沈黙する。


 そして、ペコとグーが「「やったね!」」っと、両手を合わせるようにハイタッチをした。

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