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12話、毒メイドの命令『チームフライデー』への賞品

 いきなり何言ってんだ? 毒メイドを奴隷として? 意味がわからないぞ?


「いきなりすぎて、話がついていけないんですが?」


「まぁ、そうなりますよね、ポワゾンはガラン伯爵の奴隷だったのですが……我が家でメイドをして貰っていたのです……」


 エヒトさんは説明を始めた。


 早い話が、エヒトさんが新しいメイドを探していた際に、ガランが自分の奴隷をメイドとして、忍ばせて、働かせてたそうだ。

 しかし、今回の領主に対する、大会での殺害予告が完全にアウトだったらしく、財産の没収と貴族殺しを企んだという事で極刑が決まったらしい。


「極刑って、死刑ですか!」

「いや、ガラン伯爵の場合は、魔力管の破壊になるね」

「魔力管って、なんですか?」

「魔力の血管みたいなものだね。それが無いと魔力が使えなくなる。貴族は魔力をもって民を守るのが仕事だからね」


 そして、再度、説明が始まる。


 魔力が失われたら、契約奴隷は命を失う契約になっている。

 つまり奴隷の持ち主が死ねば、奴隷達も死ぬ事になるそうだ。


 その為、エヒトさんは、奴隷解放も考えたが、奴隷商人から、解除が出来ないと告げられた。


 解除をすれば、奴隷が命を失う契約がされていたからだ。だが、抜け道として、持ち主を変更は出来るらしい。


 悩んだが、家に奴隷を置く事を奥さんから反対され、毒メイドに事実を話した結果、俺の奴隷になりたいと口にされたらしい。


「いやいや、意味がわからないです、だって、今日初めて会いましたよね!」


 少し困ったようなエヒトさんからの視線が俺に向けられる。


「そうなんだよねぇ? なんでか、分からないが、どちらにしても、君以外の奴隷になる気はないそうでな、頼めないかね?」


 いや、うーん……どうしたもんかな……


 悩む俺を見て、可愛い2人の嫁がアタフタしているのが分かる。


「オッサン、悩んでるんだろうけどさ、このままだと、あのメイドさんやばいんだろ?」

「にゃにゃにゃ! やっぱりそうにゃよね、キンザン、助けてあげるにゃ〜」


 しっかり俺を見つめる赤髪ショートと泣きそうな目で俺を見る猫娘の姿に俺は覚悟を決めた。


「はぁ、分かりました。ただ、そのメイドさんと話をしてからでもいいですか?」


「ああ、構わないよ。なら、ポワゾン、皆さんを応接室に案内してくれ、お菓子と紅茶も頼むよ。それが済んだら、キンザンさんと話してくれるかね?」


「かしこまりました。皆様、ご案内致します」


 毒メイドがエヒトさんに頭を下げると、俺達を応接室へと案内していく。


 素早く、紅茶が入れられ、焼き菓子が大量に乗せられた皿がテーブルに置かれる。


「キンザン様、お話をよろしいですか?」

「ああ、みんな悪い、少し行ってくる。ベリー、2人を任せるが大丈夫か?」


「ええ、問題ないわ。行ってらっしゃい」


 俺と毒メイドは中庭へと移動する。


「…………」

「…………」


 会話がないんだよな、質問しないとなんだけど……


「き、綺麗な庭だな……」

「はい、庭師が優秀(ゆうしゅう)ですので」


 なんか、感情が感じられないんだよな……


「はぁ、腹の探り合いは無しで、話そう、なんで俺なんだ?」


「理由ですか、そうですね。スカッとしたのです」

 暗い笑みだった、恨みをはらした人間の笑みって言うか、病んでる人の笑い方だよ……


「それだと、分からないんだけどさ? 具体的に頼むわ」

「かしこまりました。簡単な話です。ガランのクソ伯爵様からすべてを奪ってくださったからです」


 なんか、怖ぇんだけど! 毒どころじゃない、病んでる、この人、病んでるメイドだ!


「そ、そうなんだな……」


「はい、ワタシは、ガランが貴族としての立場を失ったその瞬間から、キンザン様の奴隷になり、この身体も命も魂さえも捧げる覚悟を決めたのです...…」


 これ、やばい人だ! 現実なら、関わったら身を滅ぼすタイプのヤンデレラだ!


「はぁ、申し訳ございません……チッ、だから、ワタシは、キンザン様の物と言うよりも奴隷になる事を決めたのです」


 チッってなんだよ!


「いやいや……今の説明だと、やっぱり分からないんだが」


「つまり、あのクソ伯爵からすべてを奪い、絶望を与えた野郎に一生ついていくって話です。分かりますか、キンザン様に心臓を魂を、全てを捧げたいのです」


「因みに、断ったりなんかしたらどうなるんだ?」


「その時は、すべてを受け入れて、死にます」と、毒メイドが笑った。


「はは、本気ですか?」


「はい、間違いなく、この世に生まれた事を憎みながら、キンザン様と話せた事に感謝して……死にます」


 笑った、全力で満面の笑みで笑ったよ! ダメな人だ! 絶対ダメな人だ、この人!


 沈黙すら、やばい雰囲気になりやがる……


「キンザン様、ワタシの父はガランから、金貨を借りました。たいした枚数ではなかったのです。でも、結局、返しきれずにワタシは、奴隷として売られてしまいました」


「そうか……あれだな、アンタも大変だったんだな?」

「はい、ワタシは、ガランからある命令を受けて、この屋敷に送られました」

「命令ってなんだ?」


「詳しくは言えませんが、ワタシがそれを実行しなかった為、ガランがワタシに直接あって命令する為に大会に出たのです。優勝者は屋敷に来ても怪しまれませんので……」


 下を向き、寂しそうに語る毒メイドの姿に俺は断る事が出来なくなっていた。 


「わかった……ただし、そのガランの命令ってのは、後で教えろよ! 他にも聞きたい事はあるけどな」


「はい、キンザン様。ワタシをアナタの私物として置いてくださいませ」


「おう、悩んでも仕方ない時はあるからな、なるようになれだ。とりあえずよろしくな」


 毒メイドは嬉しそうに笑ったそして、まさかの誓いを口にした。


「キンザン様が、幼女趣味のクソみたいな性格のダメダメな女たらしだったとしても、ワタシは一生ついて行く覚悟がありますので、安心してください」


「はは、もしそうなら、俺の中身は救いようがないな……」


「大丈夫です。ワタシが絶対に見捨てませんので、安心してくださいませ。ふふふっ」


 何故、ニヤけてんだこの女!


 俺は何故か、危ない毒メイドを引き取る事になった。

 その結果を領主のエヒトさんに話すとすごく喜ばれた。


「実を言うとね。ずっとポワゾンから、命を狙われては、助けられてたんだよ」


「は?」


「彼女が、毒を入れては、『毒を入れました』と、自白してを繰り返していてね。ガランが優勝したなら、屋敷で捕まえる予定だったんだよ」


 つまり、結果的にガランは捕まる予定だったらしいな、派手な行動はいらなかったかもな。


「普通、そんなメイドを屋敷に置いとかないでしょうに、なんでずっと置いてたんですか?」


「ポワゾンは、ワシ以外には害を与えないからな、ワシにもちゃんと毒を入れた時は教えてくれてたしな」


 ポワゾン以外の暗殺者がいたら、この人死んでたな……


「だから、キンザンさん、彼女をポワゾンをよろしくお願いします。本当に優しい子なので」


「はぁ、分かりました。任せてください」


「よかったのだよ。それと『チームフライデー』としての賞品の話しだがね、ガランキッチンが空き店舗になっていてね。是非、使ってほしいんだが?」


 領主エヒトさんは、俺に空き店舗を使って商売をして欲しいと言ってきた。


 俺が冒険者だと、理解していた為か、週に数回、店を開いてくれたらいいそうだ。


 理由は簡単で、ガランから没収した物件は、俺達に賞品として渡す場合は、売買契約なしで渡せるそうだ。

 早い話が、税金対策だな……せちがらいな……まぁ、家賃がいらないし、税金も賞品なんでかからないらしい、正直、ありがたい。


 なんか、宝くじみたいだな……と思ってしまった。


 そんなこんなで、俺は繁華街の一角に店を手に入れ、毒メイドもオマケでゲットとなった。


 みんなの待つ応接室に戻り、軽く説明をする。


「オッサンすごいじゃんか、店を貰ったのかよ!」

「にゃにゃにゃ〜お店にゃ〜お店にゃ〜」


 嫁2人は大喜びだったが、紫ロングは少し不機嫌そうだな。


「やられたわ、私が先にキンザンさんと手を組むはずだったのに!」

「はは、まぁ、ベリーも落ち着けよ。それにこれからを考えたら、悪い話じゃないしな」


 応接室の扉が、数回ノックされる。


「失礼します。準備が出来ましたので、参りました」


 扉の先には毒メイドが立っていた。


「改めて聞くが、本当にいいのか?」

「はい、気持ちは決まっていますので」

「可愛いのに、自分を大事にしないやつだな……たく」


 その言葉に毒メイドが悩んだように首を斜めにする。


「ワタシがですか?」


 気づいてないみたいだから、説明する。


 肩まで伸びたダークグリーンの髪、人形みたいに整った顔、目はキツそうなギラギラした感じだが、それが逆にいい感じにインパクトを与えてやがる。

 ベリーよりも小柄だが、低すぎない身長に自己主張をしすぎない2つの果実、全身に纏った短いスカートのメイド服を完璧に着こなして、絶対ラインを作り出す完璧なメイドだ。


 だが、絶対に言えないので「おう、可愛いんだよ」と、言っておく。


 軽くぺこりっと頭をさげた毒メイドは微かに笑っていた。


 長いすると悪い為、俺達は一度、宿屋へと戻る事になった。


 戻った宿屋は既に活気はなく、“食の祭り”が終わった為、部屋はガラガラになっていた。

 その為、俺は改めて2階の大部屋を借りる事にする。


 宿屋のムキルさんからは「お前、すごいな……」とだけ言われたが、スルーして、鍵を貰い移動する。


 大部屋に入るとすぐに、毒メイドが自分の荷物を置いて『買い出しに行く』と部屋を出ていった。


 30分程で戻ってきたかと思うと、毒メイドがニヤリっと笑っていた。


「な、何を買ってきたんだ?」

「はい、夜に必要な物を幾つかと、衣服にございます。勝手に自身の物を買ってしまい申し訳ございません」


「いや、必要なら仕方ないさ、そこら辺は自由にやってくれ」


 改めて、俺達は自己紹介を済ませると食事をする事になる。

 俺に作れと、2人の嫁とベリーさんが言ってきたが、今日は食堂で食べる事にした。


 そうして、ベリーさんは自分の部屋に戻り、俺と嫁2人、毒メイドが大部屋へと戻る事になった。






 

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