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11話、可愛い2人の嫁と領主邸の毒メイド

 大会が終わり、宿に戻った俺は、ニャア改め、ニアとなった新しい嫁と、赤髪ショートな嫁に挟まれていた。


「離しなよ、オッサンはボクが1番だって言ったんだよ!」

「ちがうにゃ! 大会で頑張ったからご褒美を貰うのにゃ!」


「それになんで、ボクの部屋に泊まるんだよ! 部屋はあるんだから、夜くらい我慢しろよ!」

「部屋は朝までしかとってなかったにゃ〜、外で1人は寂しいにゃ〜! ミアとキンザンといたいのにゃ〜」


 バタバタと、じゃれ合う2人の少女。


 この2人が成人してると言うんだから、異世界は不思議だよな。


「それより、()()とも、明日の予定だが、朝から服を買いに行って、昼前に領主さんから、貰うもんもらったら、速攻で帰るからな」


「オッサン、なんか予定でもあるのかよ?」

「予定があるにゃら、ニアとミアも行くのにゃ!」


 2人の発言に紫ロングがクスクスと口を押さえる。


「キンザンさん、モテモテね……ふふ、日本(あっち)なら、完全にアウトよね」


「ベリーさん、あんまり言わないでくれ、間違ってないが、笑うなよ」

「ごめんなさい。まぁ、貴族、相手に話したりは疲れるわよね、分かるわ」


 軽く頷きながら目をつぶる紫ロング。


「ベリーさんは、貴族に詳しいのか?」


「当然じゃない、だって……私はこの世界に悪役令嬢になりたくて来たのよ」

「は? 悪役令嬢? 普通のお嬢様じゃだめだったのか?」


「ダメよ! 絶対に悪役令嬢だったのよ! 学園に通い、ヒロインみたいな子に注意をしたりして、『ざまぁ』されてからの逆転の予定が、なんか好かれてばかりでさ」


「悪くないじゃないか? なら貴族なのか?」

「元よ、父が騙されて没落(ぼつらく)したのよ、私は前世の記憶があるから問題なかったけど、騙された父と母は、貧乏に絶えられずに飛んじゃったわ……」


「そうか……」

「勘違いしないでね? 飛んだって、別の国に借金を残して逃げたってことよ!」


 あ、そっちなんだな……


「それより、服が無いって話しよね? なら、私が紹介するお店にいってみなさい。買う内容はメモしてあげるわ」


「悪いな、助かるよベリーさん」

「ベリーでいいわよ。あと、ガランの件ありがとうね、父を騙した貴族の仲間だったから、本当にスカっとしたわ、おやすみなさい」


 紫ロングはそう言い、部屋へと帰って行った。


 残された俺達だが、流石に3人で寝るのは無理だ。


「いいか、仲良く2人がベットで、俺が手を繋いで椅子で寝るから、ケンカするなよ!」


「わかったよ、オッサンの言うこと、聞いてやるよ」

「ニアも、キンザンの言うことを聞くのにゃ〜」


 ハッキリ言うが、生殺(なまごろ)しだった……

 可愛い赤髪の褐色少女と、フカフカのケモ耳少女が俺の手を握って寝てるんだぞ! 


 耐えてくれッ! 俺の理性!


「お〜い、起きるにゃ、キンザン、お〜い、起きるにゃ〜!」

「ニア? オッサン、起きないのか?」


 声が聞こえる……だが、眠くて仕方ない……あと、1時間くらい、寝たい……


「起こすにゃ! ニアの仕事だから頑張るにゃ〜」

「なら2人でオッサンを起こすぞ! 」


「「せぇーのッ!」」


 俺の上にタッグを組んだ、嫁ダイブが腹部に決まる。

 漫画なら、幸せなイチャイチャのシーンになるはずだが、現実はそうならない!


「ガハッ、おぎる、おぎるがら、どいてぐれ!」


 これが床で寝ていた俺の目覚めだった。


「朝から酷い目にあったな……」

「それより、オッサン、服、服を見に行くんだろ!」

「そうにゃ、そうにゃ! キンザン急ぐにゃ!」


 嫁たちに手を引かれて、紫ロングに教えられた店に向かう。

 貴族達が住むエリアと平民が住むエリアの真ん中にある服屋『スザンヌ』へとやってきた。


 店内は落ち着いた雰囲気だった。


「いらっしゃいませ、何をお探しでしょうか?」


「すまない、紹介で来たんだが」


 紫ロングから預かったメモを渡すと、すぐに店員に更衣室へとバラバラに連れていかれた。


「話は理解いたしましたので、コチラをどうぞ」


 渡された明るい色の服に着替えていく。


「なんか、ピッチリしてんな、タキシードとスーツを合わせたみたいな服だな」


 俺が試着を済ませて、待っていると2人の嫁が姿を現す。


「ど、どうかな、オッサン……ボク、変じゃないかな……スースーしてなんか、あれなんだけど」


「ミア、可愛いじゃないか。赤いワンピースか、首の白いリボンもよく似合ってるぞ」


「キンザン、ニアは似合ってるにゃ?」


「ニアも似合ってるな。水色のワンピースだな、よく見たら、しっぽにも飾りが着いてるんだな。可愛いじゃないか」


「はにゃにゃ〜嬉しいにゃ」


 真っ赤なショートヘアに、白い髪飾りを着け、赤のワンピースに首元にはアクセントの白いリボンを身につけたミアは可愛い。

 褐色の肌が色っぽさすら感じてしまう、誰がなんて言おうが、小悪魔系のゴスロリ天使にしか見えない!


 そして、ニアだ。

 最初の頃は元気な猫娘という印象だった。


 だが、今はしっかりと彼女を見ている。


 ピンク色の綺麗なボブヘアに可愛い猫耳、淡いオレンジ色のクリクリとした瞳、首に付けた鈴のチョーカーとセットのシッポ飾り、水色のワンピースが普段の無邪気で活発なニアの印象を落ち着いたお嬢様のようにすら感じさせている。


「俺の嫁が可愛すぎるだろ……」っと、本能で呟いていた。


「お気に召しましたか?」

「はい、全て買わせて貰います」

「はい、では、全部で金貨16枚(32万リコ)になります」


 満面の笑みを浮かべる店員に、俺は賞金(金貨50枚)から払って、店を出る。


 約束まで、まだ時間があったので、広場に移動してベンチに座る。

 こぼしても大丈夫なモノを“買い物袋”からチョイスして取り出していく。


「まずは、ハンバーガーのバンズにマヨネーズを薄く塗ってっと」


 嫁2人が不思議そうに俺を見ていたので、紙皿を取り出し、二人に持たせておく。


 バンズにマヨを塗ったあと、厚切りハムにレタスとスライスチーズを重ねていく。

 本来ならバンズを軽く焼いてやりたいが、外では難しいので、今はコレで我慢して貰う事にする。


 即席、ハムサンドを2人の紙皿にのせる。


「さぁ、朝食だ食べてくれ」


「はにゃにゃ〜いただきますにゃ〜」

「美味そうだな、オッサンありがとうな!」


 2人が大きく口を開き、ハムサンドにかぶりつく。


 美味しそうに食べる2人には、内緒だが、チリソースなんかをかけたら、更に美味くなるんだよな……

 服の事があるから、シミになる物は使えないがな。


 俺達が気楽に朝食を食べていると後ろから声がかけられた。


「随分と気楽に食事してるわね、これから領主様と会うって言うのに?」 


「ベリーさん、店を紹介してくれて助かりました。2人の可愛い服が買えましたよ」

「それは良かったわ。あと、もう少ししたら、領主様の家に向かうわよ。馬車が宿に来るはずだから、食べたら戻るわよ」


 話を聞いてから、嫁2人が食べ終わるのを待って、宿に戻る。


 迎えの馬車は既に宿の前に来ており、急いで馬車へと乗り込んでいく。


「馬車だにゃ〜 早いにゃ〜ミア、すごいのにゃ〜」

「落ち着けよ? 馬車なんて珍しくないだろ?」

「ニアは、初めて馬車に乗るのにゃ〜」


 正面の席で楽しそうな嫁たちの姿に俺が笑っていると、横で紫ロングが笑っている。


「なんか、子持ちの旅行みたいね、ふふ」


 その言葉に、俺より先に反応したのは、嫁たちだった。


「親子じゃない! ボクはオッサンの嫁だ!」

「そうにゃ、ニアもお嫁さんにゃ、キンザンの2番だにゃ!」


「あらあら、キンザンさんたら……幼女趣味ですか?」


「幼女趣味はないが、現状は否定できないな、だが、最高に可愛い嫁だってのは、自信もって言えるぞ」

「羨ましいわね、私もキンザンさんのお嫁さんにして、貰おうかしら?」


「な、なにいってんるんですか、ベリーさん、からかわないでくださいよ……」

「ふふ、意外に本気かもしれないわよ、なんてね。2人とも怖い顔しないでちょうだいよ」


 2人の嫁が紫ロングを警戒しつつ、俺を睨んでいるので、苦笑いをしつつ、その場をやり過ごす。


 馬車が門を通り抜けて停車し、領主邸に到着するとすぐに中に案内される。


「立派な庭だなぁ、驚いた……」

「当たり前でしょ、キンザンさん、ここは領主様の家なのよ」

「まあ、そうだな。ベリーさんは緊張とかないのか?」

「緊張してるわよ、それより、あの2人、大丈夫なの? かなり緊張して歩いてるじゃない」


 後ろを歩く嫁2人は、馬車と違い、ガチガチだ。


「はぁ、しゃあないな……」っと、俺は二人に視線を向ける。


 頭を撫でてから、2人の肩を“ギュッ”と抱きしめてやる。


「大丈夫だ。ご褒美を貰いに来ただけだから、落ち着けよ」


「あ、おう……」

「はにゃにゃ……」


「キンザンさん、たらしですね……幼女ホイホイですか、まったく」


「いい感じの場面だと思うけど、むしろその発想がムッツリなんだよ、紫ロングが」

「あ、今絶対、ディスったでしょ! 普段、『ベリーさん』って言うのに!」

「キャラ崩壊してんぞ……いいから行くぞ」


 怒る紫ロングと真っ赤な嫁ちゃん達を連れて俺達は歩いていく。


 案内のメイドさんが俺に鋭い視線を向けていたが、とりあえずスルーだな。


 これが、俺に熱い視線を向けてたら嬉しいが、汚物を見るような酷い目をしてやがる……こいつは毒だ、

毒メイドと呼ぶ事にしよう……


 毒メイドの足が止まり、扉をノックする。


「旦那様、よろしいでしょうか?」

「おお、ポワゾン、どうした」

「はい、“食の祭り”での優勝者『フライデー』の皆様が参りました。ですので、言いつけ通りにご案内致しました」


 随分と警戒心が薄いな……そのまま、自分の部屋に案内させるなんて、本当に大丈夫なのか?


 そんな俺の考えを察したのか、毒メイドが再度、俺にゴミを見るような目線を向ける。


「ポワゾン、構わないから、中に入って貰ってくれるかい」


 毒メイドが『チッ』っと舌打ちをしてから扉を開く。


 こいつ、舌打ちしやがった!


 室内で領主のエヒトさんが出迎えてくれた。


「よく来てくれたね。領主のエヒト・ダーノだ。歓迎するよ。『チームフライデー』の皆さん」


「歓迎、感謝します。キンザンと言います。よろしくお願いします」


 軽く全員の紹介を済ませてから、軽い雑談をしていき、本題に入る。


 毒メイドに合図を送ると料理大会の賞品が持って来られる。


「これは?」っと、俺は目の前に置かれた5冊の本を指さす。


「これは魔導書です。【火】【水】【風】【土】【癒し】の基本属性を取得できる“取得の書”になります」


「ま、待って、“取得の書”なんて、安くても1冊で金貨20枚はするわよ!」


「えっと、ベリーさんだったね。よく知っているね。魔導書でも、スキルを得るには基礎がいるからね。その為の基礎を得るのが“取得の書”だからね」


 エヒトさんは、紫ロングを見ながらそう語った。


「流石に、賞品としては、多すぎますよね?」

「キンザンさんは、鋭いようだね、実は頼みがあるんだよ」


 優しそうな顔が一瞬で真剣な表情になる。


「頼みですか?」

「無理な頼みになるだろうが、そこにいるポワゾンを君の奴隷として、連れて行って貰えないだろうか?」


 




読んでくださり感謝いたします。

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