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リチャードの受難・下

「それよりさ」

「なんです?」

「農地の視察って、僕の仕事かな?」

 なんでか、僕に回された仕事。

 ひろ~い農地の見廻り。

 こういうのって農業担当者とかの仕事だよね。7歳児になにしろってのさ。

 広いから馬での移動。

 馬車が良かったけど小回り聞かないからね。

 王子だから馬術の訓練だって受けてる。でも得意じゃないんだよね。

 大体まだ身体が小さいからさ、馬を操るのって大変大変。

「殿下の助言で新しい農法を試してますから、ご自身の眼で確かめるのが一番でしょう」

 そういうもんかな?

 そりゃ、多少アドバイスはしたけどさ、基本は門外漢だよ。

 僕が来ることで一所懸命働いてくれてる人たちのモチベが上がるってならいいけど。

 マスコット役でもなんでもやるよ、そういうことなら。

 でも、みんなこっち見て頭下げてくれから、なんか仕事の邪魔しちゃってるみたいで悪いんだよね。

 精一杯の笑顔で手を振るぐらいしかできないし。

「最近、なんか公務増えてるよね」

 笑顔は絶やさず、けど口から出るの不平不満。作り笑いは王家の必須スキルです。

「そうですね。だから、側近を増やすよう言われたでしょう」

「いや、仕事減らしてよ」

 労働基準法ないからって無茶し過ぎ。

 手が足りないって文句を言ってるんじゃなくて、仕事が多いの。

 遊びたい盛りなの、7歳だから。

 今度提案しようかな、労基法。……やめとこ、また仕事が増える。

「俺に言われても困りますよ。決定権ないんで」

 そらそうだけどさ。

 僕は3番目だよ。

 そのうち王宮を出て田舎に引っ込むんだから、側近とかそんなに要らないよね。

「中央貴族の側近作っても、地方に連れて行けないでしょ」

 側近に選ばれた方だって困るよね。

 王都から地方へ移住なんて。事実上の左遷じゃないか。しかも、公爵領ってかなり田舎だよ、田舎。

「希望者を募れば、それなりに集まると思いますけどね」

 なんでそんな風に思うのかな? 田舎住まいが流行とか聞かないけど。

 大貴族でもなければ中央、王宮勤務が一番でしょ。

 領地持ちだってさ、小さな領地経営してるより出世したいならやっぱり王宮勤め。

 領地を蔑ろにしていいわけじゃないけど、代官を雇うとか、やり方はいくらでもあるからね。王様に顔を覚えて貰えるところにいないと。

 僕みたいに田舎でのんびりしたいって人は別だけど。

「僕のところに来たいなんて、下位貴族の三男以下じゃないかな。それも他に仕事がない人」

 家督は長男に行くから、次男はその補佐とか分家になれるかもだけど、そこから下はね、どうしてもあぶれるよ。

 才能ある人はなんからの事業やるとか、婿入りするとか手はある。そうじゃないと長男が寛容なら肩身は狭いけど部屋住みとして生きて行ける。

 長男が家督継いだら追い出されちゃうことだって珍しくない。

 武芸ができれば騎士の道、学問ができるなら官僚の道。

 なにもないと食い詰める。

 貴族に生まれてもさ、長男じゃないと大変なんだよ。

 今は貴族不足、男性不足だから多少はマシだけど、それでも下位貴族、男爵や子爵でやる気も能力もないとなると、やっぱり食い詰めコースかな。

 やる気はあっても無能だと困るけどね。

 偉い軍人さんも言ってるでしょ。無能な働き者は害だって。

 そんな人がいくら集まっても邪魔なだけなんだよね。

 リチャードは王太子の側近候補だっただけあって有能で助かってるけど、僕が側近を募ってもリチャード級はちょっと望めないだろうね。

 有能な人材は訳ありじゃない限り王太子である長兄のところへ行くか、次兄のところへ行くから。

 それに有能だけじゃなく信頼もおけないといけない。

 リアルテの大魔王問題とかリチャードに話してるのは、彼が信頼できるからだ。

 広めていけない話をちゃんと理解して、口が堅い。側近としてはとても重要なことだよ、これは。

 王族って秘密も多いからね。

 ……

 大魔王と聖女が奥さんなんて、誰にも言えないよね。

 うん、リチャードには3人分ぐらい頑張って貰おう。

「なにか?」

「うん、なんでもないよ」

 ギリギリのラインを攻めるかもだけど、過労死しないでね。

頑張れリチャード!

第3王子の側近は君だけだ!

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