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伯爵令嬢シーラ・下

「近い将来大魔王が復活するから、勇者たちと一緒に討伐の旅に出なければいけないんです」

 いや、旅に出なくても、近い将来同じ敷地に住んでる気がするよ、大魔王。

「ですから、お兄さまのお嫁さんになるのは、その後になってしまいます。

 それまで待っていていただけますか?」

 ええと、どう答えれば正解なんだろ?

 もしかして引っ掛け?

「まあ、落ち着いて。近い将来と言うけど、具体的にいつかは分かる?」

 自称でいいなら大魔王居るけどね。

「分かりません。女神さまは近い将来としか仰いませんでした」

 あ、女神なんだ。

 まあ、あれだよね。いたいけな少女の夢におっさんみたいな神さま出たら、ちょっっとした事案だよね。

「そっか、近い将来、か。でも、神様の基準で近いって言うのは僕ら人間の基準だとすっごく長いかもしれないよ。

 シーラが聖女なら、シーラが生きているうちの話なんだろうけど、5年後なのか、10年後なのか、それとも20年後なのか分からない」

 さすがに10年以上は時間貰わないと。

 小学校卒業前の年齢で魔王討伐とか、なにその児童虐待。

 定番で言えば10代半ばぐらいだよね。

 10代中頃から20代ぐらいが適当なんじゃないだろうか。

 魔王討伐適齢期。

「それまで結婚しないの?」

「それは嫌です」

 シーラはぶんぶんと首を振る。

「20年も待ったら皺くちゃのお婆さんになっちゃいます」

 君、20代後半以降の女性を敵に回すよ、その発言。

 6歳児からすりゃ、20歳でもおばちゃんかもしれないけどさ。

「なら、一先ずそのことは置いておこう。もちろん、大魔王が復活して勇者が現れたら使命を果たさなきゃいけないかもだけど、それまでは普通にしていればいいんだよ」

「普通?」

「だからね、気にしなくていいってこと。

 治癒魔法の訓練は欠かしたら駄目だけど、学校行って、卒業したら僕と結婚して、そのときまでは普通に過ごせばいい。

 そのときが来たら、家のことは僕が頑張るから、シーラは使命を果たしに行けばいい」

「それでいいんでしょうか?」

 よし、揺らいで来た。

「神様から、そのときまでなにかするように具体的な指示があったの?」

「いえ、そのときに供えて精進するようにとだけ」

「なら、治癒魔法の修行をしながら気長に待てばいいんだよ。それまで結婚を待つ必要もない」

 と言っても、結婚だってまだ何年も先だけど。

「お兄さまは早く私と結婚したいんですの?」

 6歳児に言われると妙な誤解受けそうな台詞だなあ。

 僕も7歳児だから、端から見たら微笑ましいのかもしれないけど。

「そうだね、シーラやミリアと早く家族になって、のんびり暮らしたいね」

 これは本音。

 まだ僕らは幼過ぎるから、まずは肉体の成長を待たないといけないけど、できるだけ早く地方領主になってスローなライフを送りたい。

 僕の言葉をどう受け止めたのか、シーラはぱっと明るい顔をした。

「なら、そうしましょう」

「うん、そうしよう。

 そうだ、シーラ。僕のお嫁さんは君とミリアの他にもいるのは知ってる?」

「知ってます。

 お兄さまは王族で、貴重な男子ですから、できるだけ沢山お嫁さんを貰って子供を作る必要があるんです」

 うん、誰かに言われたまま言ってるよね、それ。

 子供作るって、分かってるのかな。

 しかし、改めて言われると種馬みたいだ。

「本当は本当は、ミリアお姉さまとお兄さま、シーラの3人だけがいいんです。でも、それは駄目だと教わりました」

「ごめんね。この国の貴族が少なくなってるし、男が特に不足してるからどうしてもそうしないといけないんだ」

 みたいじゃなく、種馬だよね、これ。

 個人的には貴族の血が絶えようとどうでもいいことだけど、王族という立場である限りは国の安定に努めないといけない。

 それが嫌なら身分を捨てて野に下ればいい。

 食べて行ける保証なんてなにもない厳しい生活でいいなら、結婚を強いられもしない。

 王族の責務は嫌だ。でも王族の生活はしたい。

 そんなこと言えるほど厚顔無恥じゃないからね、僕は。

 王族として恩恵を受けてるなら、その分義務を果たさないと。

「それで、正室って分かる?」

「お兄さまのお嫁さんたちのリーダーです」

 リーダーって、部隊とかチームかな。

 伯爵家、どういう教え方してんの?

 分かり易いっちゃ分かり易いけど。

「僕のお嫁さんは、僕の家族だよね」

「はい」

「じゃ、ミリアも僕の奥さんになったら僕の家族だし、シーラも僕の家族。シーラとミリアも家族になる。分かる?」

「はい」

「正室には公爵家のリアルテ嬢がなるけど、彼女を知ってる?」

「おなまえだけは」

 そっか、令嬢同士でも知らないか。

 まだ夜会とか行く年齢じゃないし、リアルテはあんまり人と交流してないみたいだったしね。

「リアルテ嬢も僕の家族になる。つまり、シーラとも家族になるんだけど、仲良くできる?」

 もうね、友達の友達は皆友達、みたいな感覚。

 実際家族になるというのは間違いじゃない。

「はい。お兄さまの家族なら、私の家族ですから」

「そっか。なら、リアルテ嬢と喧嘩しないようにしようね」

「はい」

 よし、取り敢えず家庭内での魔王戦は避けられるかな。

 家庭内不和が世界戦規模に拡大しかねないなんて冗談じゃない。

 僕は平穏な生活がしたいんだ。

 神様がどういう人選してるか知らないけど、配置がおかしいでしょ、配置が。

 もう少し配慮して貰わないと。

 シーラはまだ素直だから、今のうちから洗の……教育して行こう。

 確り教育すれば世は泰平のままいける、と思う。

間違っても、奥さんたちと喧嘩しないようにね!

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