↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
可愛い婚約者は、どこか変  作者: S屋51
幼少期

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/144

第3王子のある日常・中

「それじゃ、俺はここで失礼します」

 リチャードは途中で別れて帰っていく。

 僕と違って王宮敷地内に住んでるわけじゃないからね。これから馬車で王都貴族街にある屋敷まで帰る。

 馬車と言えば、長兄と次兄は専用馬車を保有してる。

 僕は用があるときは王家の馬車を利用する。

 違いは、好き勝手に使えるかどうか。いや、王家の馬車だって言えば使えるんだよ。ただ、どこへ行ったとか、誰を乗せたとかが公的記録に残っちゃう。

 私的利用はできても行動が筒抜けになるんだよね。それで困ることはあんまりないけど。

 だから砂糖工場や畑に行く際は使わない。

 王宮を抜け出して辻馬車を利用するか、商会と示し合わせて馬車を回して貰う。

 抜け出すのはね、結構やってる。

 長兄や次兄はお付きの人が多くて抜け出すのは難しいだろうね。僕は仕事さえなければ簡単に抜け出せる。

 立場的にはよろしくない行動。 

 そのよろしくない行動をかなり前からやってる。

 なにしろ3番目だからね。楽だよ。

 警護だって手薄。

 その気になればいくらでも抜け出せる。

 今日だってリーチェも連れないで1人ぶらぶら……今日はリアルテ主催のお茶会やってたからね、そっちに付いて貰ってる。参加者はミリアたち僕の婚約者ばかりだから、身内の集まりだね。

 リーチェはそこを警護してるんだか、一緒になってお茶とお菓子を楽しんでいるんだか知らないけど。

 王宮を1人で歩いてる子供がいたらほぼ間違い無く僕だろうね。

 限られた人しか入れない場所だし、要人の子息なら通常は護衛が何人もつくから。

 子供1人、しかも夕暮れ時、我ながら警戒心が足らない。

 分かっていながら直す気が無いんだから、どっかおかしいよね。

 やっぱり、普通は持ってないものを持ってると、持ってるはずのものが欠落するんだろうか? それとも昔々の記憶のせいで危機感が薄い?

 この危機意識の薄さは致命的だ。

 リーチェも、そこを本能的に見抜いたのかもね。

 この世界の夕暮れは、昔々見た夕暮れと似ているけれど、どこか違う。

 過去を懐かしんでもどうしようもないのは分かっていても、時々、ふと思い出すことがある。

 どうしたって取り戻すことはできないし、仮にあの頃に戻れるとして、それなら今現在のすべてを投げ捨てられるかと言えばそうも行かない。

 やりかけの仕事もあるし、リアルテのこともある。

 それに、あれはもう済んだことだから。


 王宮は凄く広い。

 多分ドーム何個分ってレベルで広い。

 僕の離宮は文字通り離れた場所、しかも不便な場所にあるものだから、一番近い門をくぐってからも徒歩だと小一時間かかる。子供足ならそれ以上。

 この世界、いや、この時代というべきかな。

 みんな良く歩く。

 移動手段が限られてるからね。庶民は大抵は徒歩。それなりに離れた場所へ行くときは乗合馬車か辻馬車。バスやタクシーの元祖だね。

 でもそれらは当然金が掛かるから、それなりに収入がある者でないと利用できない。

 そもそもの話、庶民の生活に置いて遠方まで出掛けるって稀だからね。

 大体の人は生まれ育った土地から離れない。これは人はその土地の領主の所有物って考えのせいでもある。

 人=労働力

 領主にとって人がいなくなるのは収入減に繋がる話で、通常は生まれた土地から気楽に引っ越しはできない。人頭税のところも多く、人の流出はそのまま損失になるから。

 大抵のところは別の貴族の治める領地へ引っ越したいなら領主の許可が必要になる。

 そもそもがね、一般人の移動は想定されてないから、他の領地へ勝手に踏み込むと最悪の場合は捕まって極刑もあり得る。

 同じ国に所属する貴族同士であっても友好的とは限らないんだよね。

 領地問題はどこでもあるんだよ。

 だから他の領地から無断で来る奴は間諜、スパイかもしれないわけで、例え隣の村であっても治める領主が違うのなら引っ越しには手続きが必要。

 人の出入りに関しては、さすがに領地全部を壁で囲ってるわけでもないし、商人のように移動が認められる者もいるから、結構ガバガバ。さすがに大きな街なんかじゃ門があって検問もあるけど、小さな村とかはフリーパスみたいなもんだね。

 道も整備された街道から外れれば警備も薄い。

 領主が確りしていて住民との関係性が良好なら、見知らぬ余所者がいれば住民から報告があったりするらしい。

 所謂不審者通報だ。

 逆に住民から疎まれてると、そういう情報が全然集まらない。

 階級社会の為政者であっても地元民との交流は大事ってこと。

 交通の発達してない世界だと家族旅行なんて概念は貴族階級だけのものだからね。

 宗教の聖地巡礼なんか庶民でもやってるけど、それだって生涯に1度あるかないかの話。

 殆どの人は生まれ育った村や町から出ることがない。

 大半が農家で、家族全員が貴重な労働力なんだから遠出してる暇も余裕もない。

 だから長距離移動の人を乗せること前提の馬車って需要が少ない。

 需要が少ないから高額、高額だから庶民は気軽に利用できない。利用できないから需要が少ない、と負のスパイラル。

 社会制度が変わらないと、その辺も変わらないだろうね。

 あれ、なんかまた話がそれたな。

 うん、だからみんなよく歩くんだ。移動の基本は徒歩だから。

 僕もね、結構歩くよ。贅沢しようと思えばできるけど、必要ないでしょ。

 王宮に戻り、離宮まで歩くのはいい散歩になるんだけど、警邏している衛兵には気を付けないといけない。

 捕まるとかではないよ。

 これでも王子、王族なんだから。王宮内を自由に歩く権利はある。

 けど王子が一人歩きなんてしてるとね、衛兵に怒られるんだよ。不用心に過ぎるって。

 でもさ、言い訳させて貰えれば、この国で一番警備が厳重であるはずの王宮で、第3王子なんて対外的にはさして毒にも薬にもならないような人間が暗殺されるようじゃ、その国は長くないよ。国自体は存続するとしても、内部じゃどろどろの権力争いばかりのどうしようもない、さっさと潰れた方が民草のためと言われかねない代物だと思うよ。

 僕が気軽に歩けるぐらい安全だって話なんだから、いいじゃんね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。