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リアルテについての報告会・上

 僕の離宮(王宮敷地内にある何代か前の王子が使っていた宮らしい)に常駐する使用人は殆どがリアルテの実家から引き抜いた人たち。

 公爵家が傾いてるから使えそうな人間をリアルテ専従のラーラに人選して貰った。

 で、元々離宮には常駐する人間が僕ぐらいだったから、今では元公爵家の使用人だらけだ。

 寝起きには使用人用の建物じゃ無く離宮の余った部屋を使って貰ってる。

 古くて傷んでるからあちこち補修は必要だったけど、部屋は余ってたからね。

 10人やそこらが住むには問題ない。

 仮にも王族たる僕と公爵令嬢のリアルテの側仕えが10人程度というのは世間的に言えば少ないんだけどね。僕は自分のことは自分でやるのが楽だし、特に困ってないからいいや。

 下手に人を増やそうとすると、いらん所から口出しされそうでね。口だけなら良いけど新規募集に間者とか混ぜられると面倒臭い。

 いい加減警戒解いてくれないかな。

 今度一度ブラザーズに相談してみるかな。

 王位継承なんて願い下げなんだから、変に勘繰らないで欲しいって。

 直系男子が少ないのと諸事情があって継承権放棄はしていないけどさ、王冠がこっちに回って来ないように祈ってるぐらいなんだから。

 まあ、警戒してるのは兄上たちじゃ無いから相談したところで解決するかどうか分からんけど。

「それで、最近のリアルテはどう?」

 僕はお茶を淹れてくれたラーラに問う。

 今日は仕事が立て込んでしまって離宮に帰り着くのが夜半になった。

 リアルテは当然先に眠っていた。

 起きているというのをラーラが宥めて寝かしたらしい。

 それで正解だよ。子供はちゃんと寝ないとね。……僕も子供だけど、周りが子供扱いしてくれない。

 大体なんで7才の身空で、こんな子供が寝静まった後に帰って来た父親みたいなことしてるんだか。

 僕だって眠いよ。

 仕事疲れでぐったりしてる7歳児ってなにさ。


 リアルテを引き取ってから少し経つ。

 最初の頃は環境が変わったこともあってリアルテも寂しいだろうと夜は時々一緒に寝ていた。

 最近は毎晩当たり前のように一緒に寝ている。

 ……悪化してない?

 リアルテにお願いされると僕も断りにくいんだけど、いつまでも一緒に寝るのはまずいよね。

 子供だからって言ってもね、男女が一緒に寝起きするのは余り宜しくない。それでも子供だからと強弁すれば、まだ数年は大丈夫かな。

 子供だから、凄い言い訳ワードだ。

 可愛い子に添い寝して上げると、こっちもほっこりした気持ちになるからいいんだけど、やっぱり常識的にね。

 いくら将来を約束した仲であってもさ、他人なんだから線引きは大事だよ。

 というか、このままだと男女というよりも家族の延長上として名目だけの夫婦になりそう。

 一緒に住んでると、恋愛的要素もなあ。

「最近は笑みを零されることも多くなられ、食事もちゃんと摂られています。夜も熟睡していらっしゃいます。こちらに住まわせて頂いて良いことばかりです」

 リアルテをずっと見て来たラーラは嬉しそうだった。

 実家で不遇だったリアルテ。

 公爵令嬢なのに衣食さえ満足に与えられず、教育も足りなかった。

 そんな害しかない環境においておくよりは、と思って引き取り、立場に見合った環境をできるだけ整えた。

 同世代の子たちとのお茶会とか、貴族の友達は、まあ、僕の他の婚約者たちで我慢して。

 そっちのツテは僕には無いんだ。

 ボッチで御免よ。

 ミリアたちと仲良くなってるからいいってことにしといて。

 最近はリーチェが当たり前のように一緒の食卓囲んでたりするしね。

 やっぱり女性同士だと話が合うんだろうか。彼女たちと話してるリアルテを見ると時々疎外感を感じるよ。

 仕事に追われてるせいもあるけど、今の僕って軟禁生活を送っていたリアルテよりもボッチ度が高くない?

 同年代の子とは話が合わなかったりするし、僕を敵視してる人の眼も気になるからね。下手に親しい友人は作れないよ。僕のせいで相手の家が睨まれるようなことになったら申し訳ないじゃ無いか。

「勉強の方も進んでるみたいだね」

 元々僕の家庭教師を遣ってくれていた先生だけじゃなく、淑女教育や様々な分野の家庭教師を雇っている。

 どの教師からも世辞抜きで、リアルテが如何に優秀であるかを聞かされた。事実優秀であることは僕自身で確かめてある。リアルテは覚えも飲み込み早い。乾いた砂が水を吸うように、という奴だよ。九九なんて教えた翌日には覚えてた。

 衣装関連は不得手な分野だけれど、ラーラたち女性使用人に任せて普段用のドレスだけじゃなく、必要あるかどうか分からない公式の場へ出るためのドレスも用意させた。夜会用はまだちょっと早いけど、そのうち作らせるつもり。

 無表情だから人形姫とか言われたわけだけど、容姿の整い具合も人形のよう。それでいて自然な表情を浮かべるようになった者だから、もうね、最強美少女。

 ラーラもメイドたちもリアルテを着飾るのが楽しいらしい。いや、君ら着せ替え人形と間違えてないか? リアルテも満更じゃ無さそうだし、僕も毎日違うリアルテを見られて楽しいからいいけど。

 もう誰も悪い意味で人形姫なんて呼ばないだろうね。まだ人前には出たがらないし、機会もないけど。

 今度誰かが大人の女性に頼んで茶会にでも招待して貰おうかな。いや、僕じゃなくてリアルテね。僕の婚約者たちとばかり固まっていてもいけないから。

 衣食住を与え、教育を施し、おめかしさせて……

 なんか、育成ゲームしてる気分になって来た。それとも推し活? いやいや、ヒギンズ教授ってことにしとこう。

 というか、気分は「お父さん」?

 ううん、同い年の子に恋愛感情を抱くのが難しいのか、まだ7歳だから心の成長ができていないだけなのか。

 可愛い子だとは思うけど、女性として見てるわけじゃ無いからね。

 ……7歳児が同年代の子を女性とみるってのも無理があるか。

 成長して行けばちゃんとそういう気分になるんだろうか?

 恋愛感情芽生えなくとも、家族として生活できればなんとかなる、かな。

 どうせ長く夫婦やってれば恋愛感情は薄れるしね。

 ほどほどに仲良くやっていけるなら、それでいいや。

 リアルテも、ミリアやシーラも成長すればきっと凄い美人になる。

 青春真っ盛りの頃を美少女に囲まれて過ごせる上に、将来的に結婚して生涯ともに出来るなんて、もう完全に勝ち組でしょ。

 彼女たちに愛想尽かされないようにするのが大変そうだけど。

 大人になれば地方領主として可愛い妻たちとスローライフ。

 そのためには今少しぐらい忙しくても大丈夫。

 ……。

 たまにね、こうして将来の安楽な生活を思い描いて自分を鼓舞しないとやってられない。

 パパンは僕を子供らしくない子供だと言うけど、えげつない仕事量なんだから子供で居られる時間なんてないでしょ、はっきり言って。

 これでさ、将来婚約者のみんなに、

「ごめんなさい、真実の愛を見つけたの」

 とか言われて捨てられたら立ち直れないよ。

 いや、いいんだけどね。

 子供の頃に家同士で決めた婚約に縛られて欲しくない。本当に好きな相手を見つけられたなら、そっちとくっついた方がお互いにいいよね。

 ただ、僕の立場が立場だから、婚約破棄とか簡単には行かないだろうけど。

 相談してくれたらなんとかしてあげるつもりではある。

 だってさ、別に好きな人がいるのに無理矢理結婚して、

「あなたとは仕方なく結婚しただけです。愛情なんてありません」とか言われながら日常生活送るのってきつくない?

 政略的には必要なことではあるんだけど。

 特に、今の婚約者たちには情が湧いちゃってるからね。政治の前に個人の幸福を考えちゃうよ。

 まあ、問題児だらけだから他に引き取り手があるかどうかは疑問だけれど。成長して美人になれば多少の問題は眼を瞑るって男も出て来るだろうなあ、きっと。

 そういうところ、男は理性が麻痺するから。

 いや、うん、僕が言うこっちゃ駄目だよね。大事な可愛い婚約者たちなんだから。

 将来のことを考えると、聖女や大魔王の問題がどうなるかも気になるね。

 正直分からんことだらけだから棚上げ状態だけど、リアルテが成長すればなにか動きあるんだろうか?

 そう、そっちも考えておかないとね。

「ま、なんにせよ、健やかなら言うことないよ」

 心身共に健康ならそれでよし、と思ったけどラーラはなにか言いたそうだ。

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