リンドバウム公爵家問題 真相・下
「殿下はそのお歳で金を貯め過ぎなんですよ」
「だってさ、今既に4人もお嫁さん候補いるんだよ。まだ増えるかもしれない。
しかも上位貴族。今の生活水準を保つだけで莫大な金が必要になる。
奥さんたちに子供生まれたら養育費だけでも相当額になる」
大貴族の子供となると家庭教師つけたりなんだりしないとだしね。
「あなた、公爵家継ぐんでしょ? 養育費ぐらいどうとでもなるんじゃないですか?」
領地からの収入、国から出る年金。
庶民からは考えられる額の収入は約束されている。
「そうだけど、なにがあるか分からないでしょ。
領地に投資もしたいしさ。お金は余るぐらい持ってないと」
余ったら領内のインフラや福祉を充実させるとか、使い途はいくらもある。
子供が成人したらさっさと爵位譲って引退したいし、そのときのんびりするためにも、やっぱりお金は必要だよ。
奥さんたちに苦労させたくないしね。
いや、その奥さん育てるのにまだまだお金要るし。
ミリアやシーラは実家に任せておけばいいけど、リアルテはそうは行かないからね。
リアルテには貴族令嬢に相応しい贅沢させてあげたい。
ドレスだって一杯作ってあげたいじゃない。あの子は美少女だから、色んなタイプのドレスが似合うし。
今は子供服でも、すぐにティーンエイジャー用のデザインのが似合うようになるだろうし、大人用のものだって、似合いそうなデザインが一杯あるよ。
服飾は専門じゃないけど、リアルテ用のデザイン描いてみたようかな。
実際作るのは本職任せになるとしても、昔々に流行ってたのとかあるから。
そう言えば10才ぐらいになったら学校があるんだった。
貴族子弟と富裕層の平民の子を集めて学ばせるところ。
義務ではないけど、通わせる貴族が増えてるらしい。
高位貴族だと家庭教師が多いんだけどね。
でも若い貴族子弟たちの交流、顔つなぎの場としては有用だ。
もし高位貴族がいれば平民や下級貴族にとってはコネを作る絶好の機会。
「リチャードは学校行ったんだよね?」
「ええ、王太子殿下も通われましたし、どんなものか体験しておけと親に言われて。2年で卒業しました」
一定の課題をこなして卒業試験パスすればいいらしいから、僕が知ってる学校とは結構違う。
自由度がかなり高いというか、いい加減というか。
成績が優秀であれば望めば大学への推薦も取り付けられる。
大学は学問をする人間にとっては是非通いたい場所だ。
一般では手に入らない資料もあるし、先達たちに学べる。なにより、興味ある分野を深く研究できる。
庶民が大学に入ろうと思ったら高名な学者に弟子入りして推薦状を貰うか、学校、この場合は区別のために初等学校と言うのがいいかな、の卒業と教師の推薦を貰うしかない。
貴族だとコネで入れるけど、コネで入っても学業に興味ないと意味ない場所なんだよなあ。
取り敢えず入ってしまえば、大学に行っていたという箔付けはできるか。
見栄だけで行くには手間過ぎて、労力に見合った価値はないように思えるけど。
まあ、とにかく大学まで行く人間は僅かだ。
初等学校は制服が一応あるんだよね。修道士みたいなのが。
工場の規格品とかじゃないから、制服も高い。富裕層じゃないと制服と小物揃えることも無理。
家が貧しいと貴族でも無理らしい。
リアルテにあの制服を着せるのはなあ……。
折角の魅力を半減させちゃうよ。
……変な虫を寄せないためにはその方がいいかもしれない。いや、でもなあ。やっぱり可愛い制服のがいいよなあ。
デザイン、変えちゃおうか。
今から行動を起こせばリアルテが行く頃にはお洒落な感じの制服にできる。
となると、誰に持って行けば良かったかな。
「殿下は通われないんですか?」
いい質問だよ、リチャード。
王家としては学業を推してて、初等学校の後援もしてるから長兄も次兄も通った。
次兄はまだ通ってるか。
公務があるから、あんまり出席できてないみたいだけど。
姉妹もね、当人が嫌だと言ったり、早々に嫁いだりしていないのは通ったはずん
僕らより公務が少ない分、学校生活は満喫できたみたい。
「前にパ……陛下に行かなくていいのか聞いたら、講師でもするのかって言われた」
初等学校で学ぶ範囲は大体終わってんだよね。
大学に興味あるけど、うん、無理。
仕事が増えて、それどころじゃない。
工房で研究できる日も減ってるから、学校は無理。
将来の嫁たちとのあま~いスクールライフはやりたかったよ。
制服姿は自宅でリアルテに見せて貰うので満足するしかないかな。
リアルテは、ひょっとしたら行きたがらないかもしれない。
育った環境のせいで、ちょっとコミュ障っぽいところあるからね。
彼女が会う人と言えば、僕か使用人か、ミリアたちぐらい。
だからこそね、学校には行って欲しいんだ。
同世代の人間と交流して欲しい。
僕も多忙のせいで同世代の友人っていないんだよね。将来的に、夫婦揃ってぼっち属性とか駄目でしょ。
純粋に友達と青春を謳歌して欲しい。
貴族令嬢だと狭い世界で生涯送れちゃうけど、それじゃ寂しいじゃないか。
リアルテには色んな人(男子除く)と交流して、友達一杯作って欲しい。
今度、勧めてみようかな。
どうしても嫌だというなら仕方ないけど、そうじゃないなら一度行ってごらんって。
シーラとミリアを一緒に行かせれば、なにかあっても大丈夫でしょ。
いや、なにかやらかすとすればシーラな気もするけど。
2人にはリアルテの取り巻きやって貰おうか。
ミリアはリアルテに世話になったし、シーラも懐いているからちょうどいい。
「そう言えば殿下。先日の狩猟祭を受けてのことだとは思いますけど、新しい称号が付いてましたよ」
「え?」
付いてるって言うか、巷で勝手に言われてるだけな奴ね。
「どんな?」
「魔物使い」
「……なんで?」
マジで、なんで?
なんでだろうね
胸に手を当ててみるといいと思う




