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可愛い婚約者は、どこか変  作者: S屋51
幼少期

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43/90

王子と中年・中


 それにそう長くは居ないつもりだ。

 成人できたらさっさと田舎に引っ込むのに、わざわざ新築しても無駄になるだけだ。

「あちこちガタが来ているだろう。冬ともなれば隙間風も気になるのではないか?」

 一応塞いでるから、そこまではない。

「少々のことなら我慢すればいい、と思ってるのか?

 おまえだけならそれでいいが、リアルテ嬢にも我慢をさせるのか」

 ……。

 この離宮での生活が当たり前になってたから、そこまで頭が回ってなかった。

 父の呆れ顔に恥じ入るばかりだ。

 老朽化した建物でも改修はしたからそこまで不便はない。

 けれど、貴族令嬢に相応しいかと言えば、そうでもない。

 リアルテは実家での扱いが良くなかったから不満はないのかもしれない。それとも、不満はあるけど僕に遠慮して我慢しているのか。

 どちらにしても、僕の配慮が至っていなかったのは間違いない。

「小さくてもいいから建てるべきかもしれませんね」

「いや、どうせなら立派な宮にしろ」

「そんなに予算が下りるんですか?」

 長兄や次兄に比べて僕へ割り当てられる予算は極端に少ない。

 それでも庶民からすればとんでもない額だから、慎ましく生活する分にはなんら困って来なかった。余剰分を返還してるぐらいだ。

「出るわけないだろ」

 ちょ、おっさん。

「自費で建てろ、と?」

「分かっているなら聞くな」

 どこの世界に7歳児に自腹で宮を建てろとか言う親がいるんだ。

 普通は国庫からの供出だろ。

「おまえは金があるだろ」

「あると言えばありますが、予定外ですし、額が大きすぎます」

 ちょっと飴玉買うんじゃないんだから。

 普通に家を建てるだけでもそこそこかかるのに、宮となると庶民の一軒家の何倍かかることか。

「ないわけじゃなかろう?

 ま、リアルテ嬢が少しばかり寒さを我慢すれば済む話ではあるからな」

 どうしてこの人は人の痛いところを突いて来るんだろうか。

「どうせ、今からじゃ今冬に間に合いませんよ」

 改めて離宮を修繕して、リアルテには冬物を買ってあげないと。

 暖房も、燃料代は気にしないでいいと侍女のラーラに言っておかないとね。

「来年も再来年も一緒に過ごすなら、早くから手を着けろ」

 商売の方も順調だし、離宮ぐらい建てられないことはないけど、それにしてもちょっと大きい買い物だからなあ。

「父上、第3王子が資産を貯め込んでるのは外聞が悪いですか?」

 リアルテのときの流れといい、どうにも僕の貯蓄を吐き出させようとしている。

 パパンは無駄なことはしない。言動。行動には相応の理由がある。

「要らぬことを考える者がいる。

 継承権の低いものが金を貯め込み、一体なにをするつもりか、と」

「将来のための貯蓄ですよ」

「どこの世界に隠居のために貯蓄する7歳児がいる」

 ここにいます。

 いや、パパンは分かってる。

 僕が本心を言っているとね。

 問題はパパンじゃない人たち。僕を直接知らない人たちが僕の隠居計画を聞いて信じるはずもない。

 そして、3番目とは言っても王子である僕の挙動には常に誰かが眼を光らせている。

「人間は自分を基準にものを考えますから。邪な思いを持つ者は他人もきっとそうだと思えて仕方がないものですよ」

 そういう人間にはいくら口で言っても通じないから困る。

 僕は王位になんてこれっぱかりも興味がないんだけどね。

 むしろ、3番目であったことを喜んでるって言うのに。

「宮を建てて散財したところで余り意味はないんじゃないですかね」

「というと?」

「僕のことを王位を狙う危険人物だと思い込んでいる人は、そういう前提に沿って物事を判断します。結論が先にあるんです。だから、僕がなにをやろうとやるまいと自分の妄想に沿ったストーリーを捻り出すだけです」

 宮を建ててもね、それで疑惑が払拭できるわけじゃないんだ。

 彼ら、いや、彼女らの中では僕は兄たちを出し抜こうとする悪童になってうらしいから。

「それでもやらんよりはマシだ。こちらも擁護しやすくなる。

 人を雇って仕事をさせればそれだけ金が回る。経済にも良い影響になる」

「人のお金だと思って」

「人の金だからな」

 ……。

 これで王としては有能なんだよなあ、この人。

「お父様、お金出してくださいませんか?」

 精一杯の媚びを売ってみる。

「やめろ、気持ち悪い。子供みたいな真似は」

 いや、子供ですやん。

 さすがに酷過ぎませんかね、お父上。

 僕も年齢相応の子供のふりは鳥肌立ちそうなんで、もうやりませんけど。

「さすがにそれは傷付きますよ」

「どうだか。私は、とっくにおまえを息子とは思うが、子供と考えることはやめた」

「僕がなにをしたと言うんです?」

 国のために、こんなに尽くしてるのに。

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