表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
可愛い婚約者は、どこか変  作者: S屋51
幼少期

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/90

王子と中年・上

 それはまだミリアが復帰する前のこと。


 狩猟祭で得た大量の肉。

 王都の広場で庶民に売り出す用に大分流したものの、それでも結構な量が僕のところに回って来た。

 ミリアとリーチェで無用な獲り過ぎ。

 せめて無駄にしないようにしないともったいないモンスターズがやって来そう。

 新作料理という実験をいくつか披露。

 ハンバーグにしたらミリアに受けた。

 余程気に入ったようで、いくつもお代わりしようとしたから途中で止めた。子供は美味しいとおなか壊すまで食べるからね。ちゃんと調整してあげないと。

 当人は不満そうだったけど。

 リアルテも気に入ったようでなによりだったけど、それでも肉はまだ残った。

 他にも数種類の肉料理を作ってもまだ余ったから、残りは燻製にしておくことにした。

 冷凍庫ないからね。

 氷魔法が使える者を雇って冷凍室を維持しているところもあるらしいけど、王城にはない。地下に冷蔵室はあるけどね。

 特定の誰かがいないと機能しないというのは、便利なようで不便なものだからね。氷魔法が誰でも使えるものならともかく、そうでないなら普及しないだろうね。

 だから保存と言えば乾燥させる。

 肉だと干し肉、塩漬け。

 しょっぱいよ。

 そのままだと堅くてしょっぱくて、もうね、食べるのが顎の筋肉の鍛錬。

 塩やスパイスの塊囓ってるようなもん。

 長期保存目的だから容赦なく塩塗れにしてるから。

 調理次第で美味しく食べられるから、食べるときの環境次第だね。

 で、燻製。

 多少は塩分少なめでいける……はず。

 そのままでもいける……と思う。

 うろ覚えなんだよね。

 昔々、作ってみようとしたことはあるよ。でも、実践してないんだよなあ。

 だから記憶が曖昧なところある。

 それに、燻製、ないんだよね、ここ。

 干し肉はあるんだけど、燻製は聞いたことがない。

 割と原始的な調理法だから、あってもおかしくないけど、何故か無い。或いは世に知られていない。

 この辺は何故、と考えても仕方ないだろうね。広く知られてないか存在しないのは事実なんだから。

 美味しいのにね。

 温度管理とか火加減の調整が難しいんだけどね。

 タレも試行錯誤中。

 スモークウッドは前々から使えそうなのを用意してた。昔々の記憶にある木と同種があるわけじゃないから、色んな木を取り寄せて、細かくして、燃やしてみて、物によっては更に細かいチップにして……暇なときにちょこちょこ進めてたけど、合計すると結構な時間掛かってるな。

 8種ぐらいのタレを作って試作。燻す時間も数パターン試すから、料理というか、もう実験だね、これは。

 だから工房の庭先でやってんだけど。

 第3とは言え王子が1人で燻製作りって、端から見たら結構変かもね。

 今更、誰も気にしないけど。

 なんか、貴公子ならぬ奇行師とかいう渾名があるらしい。

 悪評なんてどうでもいいけど、結構色々と言われてるみたい。リチャードが悪評を放置することに懸念を示してた。

 でもさ、悪評を当人が否定したところで意味ないでしょ。

 寧ろ燃料投下するようなもので、放置するのが一番いい。余程強権を持ってりゃ別だけど、たぶん噂の総元締めの方が影響力強いからね、下手に触らない方がいいんだよ。

 そうそう、燻製、燻製。

 短時間でできる熱燻はいい感じだった。

 長期保存に向けて冷燻も試してるけど、仕上がりは数日後。

「美味いな、これは」

 庶民の服を着たおっさんが出来上がった燻製を勝手に食べてる。

 なんか、パパン、つまり国王陛下に良く似たおっさんだけど、国王がそんな庶民みたいな服装してるわけがないしね。うん、別人だよ、きっと。

 庶民が離宮とは言え入り込めるはずないけどね。

「盗み食いですか」

 別に、食べるのはいいんだ。けど、盗み食いは駄目でしょ。

「後で宮殿に届けろ」

「まだ試作品だから駄目です」

「構わん。酒のアテにちょうどいい」

 こっちが構うというに。

 そもそも毒味もなしとか、やばいでしょ。

 毒盛らないけど、下痢するような出来上がりだったらどうすんの。

 言っても無駄だから諦めて、態とらしく吐息してやった。

「少しだけお届けしますよ。試作品ですから、感想をちゃんとレポートしてくださいよ」

「分かった」

 うん、絶対レポート書く気ないだろ。

 そういう人だよ。

 王だからね。尊大に振る舞う内にそれが当たり前になってんだよ。

「それで、なにか御用で?」

 公務じゃないのは分かってる。

 公務ならさすがにそんな気の抜けた格好してない。

 というか、これから王宮を抜け出して遊びに行く気満々にしか思えないけど。僕がどうこう言うこっちゃない。

「おまえがまたなにかやってるというから見に来た」

「城下へ視察に行くついでに?」

 もちろん、視察と言ってもプライベートなもので、要するにお忍びでの遊びの隠語。

「その歳で女を2人も連れ込むとは、中々やるじゃないか。私ですら、初めて女を連れ込んだのは12のときだった」

 いや、それもおかしいだろ。

 というか、リアルテは保護してるだけだし、ミリアは静養のためだと知ってるくせに。

「女性問題に関しての忠告に来たわけではないのでしょう」

「女を連れ込むなら自分の宮を建てろ」

 王子宮を建てるのは珍しくない。

 離宮は王の子たちが幼い時間を過ごす場所だ。王子は慣例的に大体10歳になる前に自分の宮を持つ。

 手頃な空きがあればそこを改装して使うし、無ければ新築する。

 もちろん、経費がかかるから王子宮の規模は国の財政状況と王子の後ろ盾の財布で決まる。

 長兄は王太子ということで建てたし、次兄も去年の暮れ完成した。次兄は長兄の宮より立派にならないように配慮したとか。

 決まりがあるわけじゃないけど、そこら辺はね。長兄というより、長兄の母君が気にするから。

 僕が住んでる離宮は長く誰も住んでいない場所だった。宮殿本丸からも距離があるし、老朽化してた。そこに手を入れて僕が住んでる。

 僕とリアルテ(と使用人)しか住んでないから実質僕の宮と言ってもいい。

 本当の離宮には王女たち、つまり僕の姉妹たちが住んでる。王女の場合は嫁ぐまで離宮で過ごすことも珍しくない。むしろ、王女が自分の宮を建てる方が異例だ。

「ここ、僕しか住んでませんが?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ