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可愛い婚約者は、どこか変  作者: S屋51
幼少期

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28/90

狩猟祭 2日目 その1

 目覚めたとき、隣に見知らぬ女性が寝ている状況というのは男としてかなり焦るものだと思う。

 けれどその女性がものすんごい美女だったりすると、焦りながらも良くやったと自分を褒めたくなる。

 でも現実問題、誰、これ?

 いやいや、おかしいおかしい。

 昨夜は、ええと、確か、狩猟祭! そう狩猟祭で野営したんだ。

 僕は自分の天幕で寝た。

 で、隣にいるのは謎の美女じゃなくミリアのはずだ。

 いや、待った。そもそもここはどこだ?

 天幕じゃなくて天蓋付きのベッドじゃん。

 え?

 …………ああ、そうか。夢だね、夢。

 夢落ち。

 分かってるよ。大体、そうじゃないとあれだよね。なにも記憶ないのがもったいないよね。

 美女がもぞもぞと動いて眼を開ける。

 その翠の眼が僕を映し……え、僕? 

 彼女の眼に映っているのは7歳児じゃない。もっとずっと年上の青年。

「なに、こんな早くに起きたの?」

 柔らかく澄んだ声。聞き覚えのない声だ。

 今更ながら彼女の体温を感じる。そして、いい匂い。

「今日はゆっくりできるんでしょ?」

 彼女が少し身を起こすと、長く伸ばした白銀の髪がさららさの雪のように白い肌を滑り落ちる。

 ……。

 いや、そんなはずない。そんなはずないけど、僕の脳裏には1つの名が浮かんだ。

 僕は7歳だし、彼女もそのはずだ。けど、そこにいる全裸の美女はどう見ても10歳は年上。

 あれ? 今の僕の外見と釣り合ってる???

「なに、どうかしたのレック?」

 それで確定した。

 僕の知る限り、僕をそんな風に呼ぶ人間は1人だけ。

 白銀の髪と翠の瞳もそうだ。

「ミリー?」

「ん?」

 小首を傾げた彼女を見た瞬間、意識が遠のいた。



 暑い。

 酷く蒸し暑い。

 眼を開けば天幕の天井が弱い光量の中でなんとか見える。

 はい、夢落ちでした。

 …………。

 夢、だよね?

 ちょっとおかしな夢だけど。

 未来の僕と意識が繋がった、とかじゃないよね?

 魔法のある世界だからって、そんなこと……あるのか?

 もし来るべき未来を垣間見たというのなら、あの女性は、まあ、ミリアなんだろうね。今の少年姿からまったく想像できないけど。

 ミリアが第二次性徴を迎えて順調に成長して行けば、ああいう姿になるんだろうか?

 成長というか、変態でもしないと無理な気も……。

 思い出してみると髪や眼の色だけじゃなく、確かに顔立ちにはミリアの面影(というのは不適当?)があった。

 声は、ミリアが声変わりしたらあんな声になるのかな。

 声も姿も凄く綺麗だった。

 そう、聖女っぽい?

 聖女はシーラなんだけどなあ。

 ああ、でもあの姿のミリアが甲冑つけたら、ザ・女勇者、になれるか。

 あの見た目で勇者の制服(?)着たら、さぞ婦(腐)女子が喜ぶだろうな。

 勇者かどうか知らんけど。

 鑑定魔法もステータスもないからね。

 まあね、ちょっと考えれば、人の能力値を数値で表すのがいかに難しいか、どれほど無理があるかって分かるけどね。

 デジタル式じゃないから、人間は。

 能力を数値に置き換えたとして、その数値は常に上下に微動するだろうね。

 握力や背筋力の計測を思い出して欲しい。2回計って、2回ともまったく同じ数値ってことはないでしょ。だからこそ、複数回計って平均したりするんだけど。

 人体の様々なパラメーターには計測時の環境が影響することもあるのに、環境の全要素を考慮するのは無理だからね。

 地球シミュレータというのもがあったけど、あれだって完全ではなかった。

 ゲームなんかは世界の土台を人間が規定してデジタルで作ってるからいいけど、リアルだと不確定要素山盛りだからね。

 人類の平均値を調べて、それよりどれぐらい上か下かぐらいは表示できるかな。それだってまず人類の平均データがないと駄目だし、様々な要素の計測を行った上でのことだから、魔法て一瞬にしてその人の能力値が分かる、ってのは無理筋ってものだ。

 いや、特定の誰かを基準値とすれば、後は各個人の能力を計測すればいいのか? 誰が基準として最適かをどうやって決めればいいんだろ?

 それにしたって、魔法で一瞬で解析が無理あるよね。

 魔法って単語を使えばなんでもやれるわけじゃないんだよねえ。

 この世のすべてが神というか、上位存在によって創造されたものと前提すればなんとかできるかな。

 そんな存在を想定すると、別のところで矛盾が出て来そうだけど。

 にしても、なんでもこんな暑いん?

 暖かい日ではあったけど、暑くなかったよね。むしろ、森の中だからか夜はちょっと冷えてたような気がするんだけど。それに、なんか圧迫感が……。

 視線を転じれば、見慣れた赤い髪が視界に入る。

 リーチェさん、なんでいらっしゃるんでしょうか?

 しかも、人を抱き枕かなんかと間違えてやしませんか?

 君の方が大きいんだからね、下手すると潰れるよ、僕。

 リーチェが僕の右半身にがっしりとしがみ付いて、ぐうぐう寝てる。

 左は左でミリアが腕に抱き付いているから身動き取れない。

 普通サイズのベッド、子供でも3人寝るとさすがにきつい。きついから、余計密着するんだけど。

 暑い、熱い、アツい

 どうしてこうなった?

 両手に花って状態なんだけどね。

 子供って体温高いからね。それが身を寄せ合えば暑いよ。しかも両側からだから。

「2人とも、起きて」

 蜜蜂は戦闘力はないから、襲って来たスズメバチを倒すために複数で取り付いて体温で殺すそうだ。

 人呼んで、

 必殺、熱殺蜂球!!

 いや、冗談じゃなくて本当にそういう方法で戦うの。

 集団の勝利。ただし、前衛はかなり噛み殺される。巣を護るための決死隊。

 うん、僕は2人の体温で殺されそう。

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