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可愛い婚約者は、どこか変  作者: S屋51
幼少期

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25/90

狩猟祭 1日目 その5

「シーラの聖女に関してはどう思う?」

 ミリアは護衛たちとの距離を測りながら小声になった。

 護衛騎士たちは絶妙な距離を取ってくれてる。僕らの邪魔にならないようにとの配慮だ。

 邪魔になっちゃいけないし、なにかあったときは間に合う距離にいないといけない。

 ちっちゃな頃はミリアと2人でよく護衛たちを撒いて困らせていた。

 今でも時々やるけどね。

 でも、森の中じゃ無理。

 足場が悪い中、ただでさえ手綱さばきに問題がある僕では護衛たちを出し抜くなんて出来っこない。いや、やる必要もないんだけど。

 けどね、狩りに来てんだよ、僕らは。

 護衛に護られながらの狩りって、なんだかなあ。

 立場的に仕方ないし、彼らがいてくれるから安心なんだけど。

 僕なんて、なんなら手綱を引いて貰いたいぐらいだ。平地ならまだいいんだ、平地ならさ。

「どう思うもなにも、聖女なんだろ。別に今だってそういう人いるし」

「でも、シーラの場合は神託あっての話なんだろ?」

「らしいね」

 僕が直接見たわけじゃないからね。女神様の夢。

「レックはさ、大魔王とか、信じてる?」

 今、同じ屋根の下で寝起きしてますけどね。

 なんなら、時々一緒に寝てる。

 僕が保護したことで衣食住に問題なくなって、虐める人もいない。でも、慣れない場所だから心細いんだろうね。

 僕や侍女のラーラが一緒に寝てあげると熟睡できるみたい。

 1人で寝るのが寂しい大魔王って……。

 リアルテの大魔王発言は一部の人間しか知らない。広めることでもないしね。

 シーラやミリアにはいつか言わないといけない……と思ってる。

 ただ、リアルテ当人を含めてみんなまだ子供だからね。

 成長すれば大魔王や聖女の話なんて忘れちゃうかもしれないし、今から大事にすることでもない。

 当面は僕らだけが知っていればいいことで、情報の共有はもう少し成長してからでいいんじゃないかな。

 うん、そうしよう。

 決して問題の先送りじゃないよ。まだ絶対必要でもないから様子見ってだけで。

 そのときが来たら、きっちり責任持って対応するよ。

「神託とか勇者とか置いといてもさ、あのシーラだよ。レックは治癒魔法使って欲しいと思う?」

 さすがに幼馴染みだけあって遠慮がないな。

 僕は考えないようにしてたのに。

 シーラは、悪い子じゃない。

 お喋りで食いしん坊なところはあっても優しい良い子だよ。

 ただね、ちょっとポンコツ?

 リーチェみたいな分かり易いポンコツとはちょっと違う。

 なにかをやろうとすると、予期せぬなにかを引き起こす。

 その予期せぬなにかがプラスかマイナスかはまったくのランダムで予測が付かない。

 もうね、スキルとかそういうものがあるんじゃないかってぐらい、妙な結果を生み出す。

 物理法則超えてるような気すらするよ。

「ほら、シーラは勇者一行の回復職だから。僕なんて構ってる暇ないよ」

「つまり、シーラの治癒魔法が御免だってことだよね」

 まあ、はい、そうです。

 治癒魔法と言う名のパル○ンテなんて御免被りたい。

 なぜ治療に命を賭ける要素を求めるのか。

「ミリーだってそうだろ」

「なにを言ってるんだ。当たり前じゃないか」

 幼馴染み2人からの信頼度ゼロ。

 それでいいのか、シーラ。

 僕らが馬鹿話をしている間も、真面目にお仕事に勤しんでいた案内さんが僕らに止まるように合図を送って来る。

 馬を止めた僕らに先頭の案内人が前方を指差した。

 遠く、木々の間に見えるのは鹿だ。

 まだ成熟し切っていないから子供だね、あれは。でも、結構大きい。

 僕の古い記憶にあるのとは少しばかり違う姿だから、鹿と断じてしまうと少々違うのだけれど、鹿だね。

 奇蹄目だし、湾曲した七支刀みたいな角もある。角は、成獣になるともっと立派になったはずだ。王宮に凄いでっかい角を持った首級が飾ってある。

 俊敏で、警戒心も強い。

 しかし、良く見付けたね、この距離で。

 さすがプロだね。

 案内人が僕らを止めなかったら逃げられたろうね。

 そもそも、本来はもうちょっと奥。

 馬を下りて踏み入った辺りの予定だった。こんな浅い場所で手頃な獲物なんて、運がいいと言うべきかな。鹿からした不運だけど。

「ボクにやらせて」

 これ以上は騎乗のままでは近づけない。

 ミリアは素速く下馬してコンパウンドを手にする。

 これは、あれだ。新しい玩具は早く実戦で使ってみたいんだ。

 僕も下馬してミリアに続く。邪魔にならないよう少し距離は置いて。

 正直に言うと、まだ子鹿とは言っても僕らには荷の重い獲物に思える。

 でもミリアはやる気だ。

 案内人が先導してゆっくりと、確実に狙える場所まで距離を縮める。

 ここぞというところでミリアは矢を番えた。

 元々弓の経験者だから射形が綺麗だ。

 実に様になってる。僕より王子様らしい。王子は僕なんだけどなあ。

 まださすがに幼さが抜けないけど、紅顔の美少年ってのはこういう子なんだろうな、きっと。

 ……女の子だけど。

 あれ、なんかミリアの身体、光ってね?

 いやいや、そんなはずないよね。

 ミリア、まだ魔法ってそんな使えないはずだし、あんな身体が光るの知らないし。

 コンパウンドのカムが撥ねて矢が飛び出る。

 光も消える。

 矢を射るってより、ミサイル発射って感じるのは僕だけ?

 にしても、改めて職人さんたちに感謝。よくあれだけのものを作ってくれた。

 大まかな図面は引けても、物を作るのは職人さん頼りなんだよね。で、王族からの依頼だと職人さんも無碍にできないから、ストレスだと思うよ。

 まあ、これからもそのストレスには我慢して貰うことになるけどね。

 矢は真っ直ぐに飛んだ。と思う。いや、速いからしっかりは見えないよ。

 そして鹿の左足の付け根辺りを貫通して向こうの木に刺さる。

 サスペンスなんかであるでしょ。狙撃された人の頭を弾丸が貫通して、射入口と反対側から血が飛び散る演出。あんなのが見えた。

 場所もいい。急所だね。

 下手に腹なんかに当てると臭いが酷いことになるから、首や胸辺り狙うんだよね。

 ……………………。

 は? 貫通?

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