狩猟祭 1日目 その1
天候良し、気温良し。
気持ちの良い晴天の本日、(僕以外が)待ちに待った狩猟祭。
風の心地良いこの場にて……ゲロ吐きそう。
王都近郊とは言ってもね、みんなで仲良く狩りできる場所ってそれなりに面積要るわけ。
馬車に揺られること2日。
王宮出てから王都内を練り歩き(いや馬車だけど)、王都を出るだけで半日仕事。
祭りだからね、みんなに挨拶しないといかんのよ。
行って来るね~
獲物期待しててね~
そんでもって帰ったら、
大猟だど~
って、ご挨拶。
王都大広場では肉の大売り出し。
狩猟祭で狩った獲物のお裾分けだけじゃ足らないから、各店や個人狩人がこのタイミングに合わせて売る。
畜産業が未熟だから肉は貴重品。
庶民にとっては久しぶりにちょっと贅沢する日になる。
太古の昔から狩猟って大事だし、大物仕留められる者が尊敬される。王様自らが狩猟に出るのって、そういうのの名残だよね。
で、王都を脱出してから1日以上馬車の旅。
一応、うちの馬車は特注品でサスペンション付いてるけどもさ。それでも揺れるわけさ。どんぶらこっこどんぶらこ
慣れたけどね。
慣れたけど、なんで景色も楽しまずに書類仕事せにゃいかんの?
7歳児なのに過労死する未来しか見えん。
真面目に仕事量調節しないと成人前に逝きそう。
可愛い婚約者たちのためにも長生きしたいんだけどね。
でも性分なんだよね。仕事あると、ついやっちゃう。
兄上たちもこんな生活してて良く身体壊さないよね。へばってるの僕だけだよ。
兄上たち、狩猟祭には来てないけど。
長兄は王都でパパンの代行。
と言っても実務やるわけじゃなく、まあ、お飾り?
将来の予行演習みたいなもの。
次兄は仮病。
うん、ずっこいね。おなか痛いから休む。って一ヶ月以上前から予定してやんの。
その分、長兄の補佐としての公務してるけど。
書類仕事しながらの馬車の旅、頭の中じゃずっとドナドナが……。
ここ最近はリアルテとの朝食が癒やしだったのに、それもない。
そりゃ、リアルテはまだ王族じゃないし、狩猟祭なんて不参加だよね。
そのリアルテのために、この前ちょっとダディに無理なお願いをしたから余計に仕事増やされたんだけどね。
仕方ないよね、リアルテのためじゃ。
でも、癒やしが欲しい。
いや、来てるのも居るけどね、婚約者。
活きの良いのが2名ほど参加してる。
癒やしにならないのが問題だ。
結構壮観ではある。
狩り好き貴族たちがわらわらと集まってる姿は。
騎士以上は騎乗してる。
軍事行動に似て非なるものだから整列はしてない。
それだけみんな気楽だってことだ。
彼らの馬たちがまたなんというか。
成金趣味丸出しのがチラホラ
いやいや、堅実な装備の人も多いよ。
でもまあ、お祭りだからね。
派手な装飾施してるのも一杯いる。
都市マラソンとかで着ぐるみ着て走る人とかいるでしょ。
たぶん、ああいうノリ。
まあ、中には自分の装備は素晴らしいと酔ってる人もいるかもだけど。
ずらっと並んだ貴族。
それぞれの家ごとにグループ作ってる様は体育祭みたいだね。
そんな爽やかなもんじゃないけど。
狩りだからね、狩り。
血湧き肉躍る祭典。
野の動物たちには傍迷惑な虐殺の日。
ああ、人間はなんて残酷なんだ。と、命の大切さを思いながら、獲物は食べるけどね。肉好きだし。
子供の成長にはタンパク質も重要なの、タンパク質も。
この世界の文化水準だと食肉を作り出すシステムが貧弱だから、狩猟による肉の採取はとっても重要な位置づけにある。
いつか畜産の方も手を入れるかな。余裕があれば。
詳しくないけどやれることはあると思う。
今日の獲物は猪や鹿、山鳥系がメインかな。
後は狐や狸系統。
熊系は危険度高いから狙わない。一部バトルジャンキーたちには人気らしい。
健全な狩人の皆さんは避ける。
土地の管理者たちがね、大体どのエリアにどんな獲物がいるか調査済み。
だから僕でもそれほど危険はなく参加できる。
子供もちらほら居るけど、大抵は父ちゃんの応援だね。自分で参加する幼児なんて僕とミリアぐらい。
子供でもさ、限度ってものがあるよね。
狩りなんだから、そこそこ危険もあるわけで、動物は爵位を気にしてくれないからね。
早い子でも10歳以上じゃないかな、参加するのは。
僕だってね、参加する気なんてなかったよ。
ミリアという戦闘狂が勝手に参加申し込みしなきゃ。
というかね、僕の名を使わないとたぶんミリアは受け付けて貰えなかった。
そりゃそうだよね。伯爵家のご令嬢、しかも子供。
なにかあったときの責任なんて誰も取れやしないから、受け付けないよね。
だから僕とセットで申し込むという手段に出た知能犯。
なんで、僕だと参加が許されるかまったく分からない。
僕は7歳児。しかも文官系であって、武官じゃない。




