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可愛い婚約者は、どこか変  作者: S屋51
幼少期

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20/90

閑話 あの子のジョブは?・下

「しかし、よく短い期間で債権を纏められましたね」

「嫌だな、手続きその他もあるんだから2日やそこらでできるわけないじゃないか」

 ……鳩が豆鉄砲喰らったような顔って、今のリチャードの顔みたいなのかな。

 だってさ、いくらなんでも無理だよね、そんな急に。

 電子化されてるわけじゃないんだから。

 電子化されてても、なんだかんだで時間取られるけど。

「今はもう債権は手に入れてあるよ。あのときは時間がなかったから、まあ、近い将来ほぼ確実に起こることを前倒しただけ」

「よくもまあ、公爵にそんなはったりかませましたね。

 バレたら大問題ですよ。分かってます?」

「バレなかったからいいじゃないか。すぐに手配はできたんだし」

 公爵で、王弟って人にはったりかます奴は少ないかもね。

 だからこそ隙があるんだけど。

 リンドバウム公爵も、まさか騙されるとは思ってなかったろうし。

「手際いいですね」

「二マール商会を使ったからね」

「ハゲ狸使ったんですか?」

 うわああ、って顔してるけど、あの会頭、有能だからね。

 色々問題はあるけどもさ。

「仕事は確かだろ」

「金にがめついじゃないですか」

「そうだよ。だからこそ信用できる。

 ハゲ狸は商人にとって信頼がどれほど重要か理解してる。

 取引に関して不誠実なことはしない。小賢しく儲けてもたかが知れてると知ってるからね」

「そうかもしれませんけど、気を付けないと食い物にされますよ」

「商談はそれぐらいの相手が丁度良いよ」

 儲け話に目が利く。抜け目がない。

 強欲、守銭奴、冷血漢。

 隙を見せれば付け入られる。

 いいじゃないか、それだけ使えるってことなんだから。

 それに商人が金を大事にするのは当たり前。商売を広げたいなら強欲にもなる。商取引に情を交える相手は友人にはなれてもビジネスパートナーとしては駄目だ。

「で、いくらぐらい掛かったんです?」

 公爵家が傾くほどの金、というと凄い大金に思えるかもしれないけど、まあ、大金ではあるけど、実際は元々の公爵家の資産からすればそうでもない。

 散々散財した後だから。

 既に公爵家には金がなくなってんだよね。

 それでも莫大な額ではあるけど、僕になんとかできないものでもなかった。

「よくそんなに持ってますね」

「税金から抜いてるから」

「……殿下?」

「冗談だよ。飽くまでも僕の個人資産、ポケットマネー。

 将来のスローライフのために貯金してた半分以上が消えた」

 王族には年金出るから、貯金なくても困りはしないんだけどね。

 僕は将来のために色々とお金稼いでいたわけだ。

 その大半が消えた。

 公爵家から毟り取るのも、ちょっと現実的じゃないな。家屋敷欲しいわけじゃないし。

「ま、リアルテの身の安全のためと思えば安いものだよ」

 リアルテをあんな環境に長く居させたら、心が壊れてたかもしれない。

 まだ間に合った、と思いたい。

「公爵家潰しちゃおうかとも考えたんだけど」

「お願いですから、公爵家をそこらの屋台みたいに言わないでください」

 おや、リチャードくん、具合悪そうだね?

 休むかい?

 僕の机に積まれた書類仕事終わったら帰っていいよ。

「お分かりでしょうけど、一応言っておきますね。公爵家が取り潰しになった場合、使用人や家臣を含め数百から千人規模の人間が路頭に迷います。

 領地も混乱するでしょうし、王都の経済にも少なからぬ影響があるでしょう」

「知ってる」

「知ってたなら自重してくださいよ。気楽に潰していい規模の家じゃないんですから」

 分かってるよ、それぐらい。

「陛下に聞いたら、公務が増えるぞ、って言われてね」

「陛下……」

 うん、王様は駄目だとは言ってないんだよね、一言も。

 リンドバウム公爵が担ってた分の公務が誰かに回るって話しで。

 んでもって、そういう場合、原因作った僕にやらせるって脅しだね、あれは。

 7歳児を過労で殺す気だろうか、あの王様。

「まあ、あれだよね。いきなり潰すと支障出まくりだから、根回しをしてじっくりだよね」

「潰さないって選択肢はないんですか?」

「僕が潰さなくても、あの様子じゃ長く保たないよ。なら、被害が少ないように準備して、こっちの都合のいいタイミングで潰すしかない」

 罪のない領民たちが困らないようにしてあげないとね。

「ま、あれだよね。3番目の分際で、って悔しそうに言う公爵の姿が印象的だったよ。

 だからさ、

 『斬新ですね。凹まされてる最中に相手を3番目とか詰るのは。

 自分の価値を下げるのって楽しいですか?』って」

「まさか、そう言ったんですか?」

「うん」

 リチャードは、はああああ、と深く溜息をついた。

 大袈裟だな。


「話は変わりますが、あっちはどうなりました?」

「どっち?」

「大魔王と聖女の方です。ミリア嬢から勇者な申告ありました?」

 勇者な申告って、妙な言い回しだな。

「ないよ。というか、ミリアが勇者で確定なの?」

「いえ、なんとなくです。リアルテ嬢が大魔王でシーラ嬢が聖女なら、勇者が似合うのはミリア嬢じゃないですか?」

 いや、聞かれても。

「リーチェは?」

「リーチェ嬢が勇者だと……色々不安です」

 それには同意しよう。

 脳筋勇者って恐いよね。

 下手したら魔物退治で魔物以上の被害生みそうでさ。

 魔物は退治しました。

 その際の戦闘で街は壊滅しました(勇者による破壊率8割)、じゃ困るよ。

「なんで僕の身の回り3メートルで話を完結させようとしてるの?」

 そういうもんじゃないと思うんだ、勇者って。

 それに、うちの国だけで国民がどれだけいると思ってんだか。

 まあ、大魔王と聖女が僕の身内で揃っただけでも凄い確率だけど。

「いや、殿下は色々持ってるというか、呪われてるというか。選ばれてますよね?」

 なにに選ばれるというのだね。嬉しくないぞ、面倒事は。

「一応念のため、杞憂だとは思いますが確認するためにもお伺いしますがね」

 えらく持って回った言い方だな。

「殿下は、違いますよね?」

「は?」

「殿下が勇者、なんてことはないですよね?」

「今のところ、なんのお知らせも来てないよ。ま、今の時代、勇者だからなんだって話だけど」

 一時とは言え平和が訪れてるときに、勇者も魔王もないもんだ。

「僕の身近でというなら、君はどうなんだい?」

「滅相もない。俺は一般的な貴族令息です」

 なんだ、一般的貴族令息って。

「僕だって、どこにでもいる3番目王子だよ」

いや、いないから

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