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可愛い婚約者は、どこか変  作者: S屋51
幼少期

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公爵令嬢リアルテ・上

 リアルテは公爵令嬢。

 僕より一つ下の6歳だけど、礼儀作法は僕より出来るらしい。

 僕の婚約者筆頭

 ……筆頭ってことだから、他にもいるんだよね、婚約者。まだ会ったこともないけど。

 生まれた瞬間に3人は婚約者が決まってたらしい。

 凄いのは、まだ生まれてもない相手とも決まってたこと。

 公爵家に女児が生まれたら僕の相手に、って女の子が生まれてもないのに予定されてた。

 王族だからね、子孫沢山残せってこと。義務だよ、義務。

 この国の貴族はとにかく産めよ増やせよ。

 なんでも疫病や戦役で貴族の数減ってるから、今の政治体制維持するにはとにかく次世代が必要なんだって。

 教育係のマルチナさんが教えてくれた。まだ僕が小さいから、戦役とかの生々しい話はぼかしてたけど。

 さすがに、そこ詳しく、とは聞けなんだ。

 戦争の話聞きたがる幼児って不気味じゃない?

 肉体年齢と精神年齢合ってないと気苦労が多いよ。

 乳幼児の死亡率高いし、子供増やすのはいいけど継承権は長男だから、それより下は政略結婚させて家同士の結びつきを強くする道具。

 長男が元気なのに次男以降が継ぐってのは滅多にない。

 そうしとかないと、家督争いで酷いことになるからね。

 とにかく早く結婚して、早く子供を作るのは貴族の当然の義務。

 第三王子の僕も成人したら色々と頑張る必要があるみたい。

 美味しい(以前の世界と比べてはいけない)食事と安全な寝床が保証されてるんだから、それぐらいはしなきゃね。

 で、今日はリンドバウム公爵令嬢リアルテとの初の顔合わせ。

 生まれる前から婚姻が計画されてても、やっぱり当人同士が余りにも合わないと困る。

 小さいときから会わせておけば馴染みになるだろうし、万一どうしても相性が悪い場合も早めに手を打てる。

 そういう大人たちの事情からの顔合わせ。

 基本的に貴族家同士の婚姻計画が覆ることはない。

 結婚式の日まで相手の顔も知らないなんてのはざらにある。どんな相手だろうと、政略で決まったならそれに従うもんだからね、貴族ってのは。

 で、仮面夫婦というか、形だけ夫婦になって、別に愛人を囲ったりするという、ちょっと歪んでるな、貴族。

 僕はできればそういうのはしたくない。

 夫婦円満がいい。そうなれるかは僕だけじゃ無理だけどね。


 リンドバウム公爵は王弟、つまり僕のパパの弟。

 パパの弟の娘さん。彼女にしてみれば父ちゃんの兄ちゃんの三男。

 まあ、早い話、一個違いの従兄妹。

 話は前々から聞かされてたけど、直接会うのはこれが初めて。

 姿絵は見てたから初って気はあまりしない。

 でも、誤算だった。

 見合い写真とか修正してあるの普通じゃん? 絵もそうだと思ってた。いや、ある意味修正というか、実物との違いはあったかな。

 絵のリアルテ嬢はこの国では珍しい黒髪(いないわけじゃないよ。少ないだけで。大体金髪か赤毛、茶色)の人形みたいに整った顔の美少女だった。

 まさか、実物がそれを上回って来るとは思わなかった。

 そりゃさ、写真じゃないから絵にした時点で色々違うだろうけど、画家は腕がいいと思うよ。別におかしなところはない。

 ただやっぱり生きてる人間には勝てないっていうのかな。

 そこにいる存在感があるだけでも違う。

「お初にお目にかかります、第三王子殿下。リンドバウム公爵が娘・リアルテと申します」

 お辞儀も挨拶も、6歳児じゃなかった。

 前世の記憶でも持ってるんじゃないかと思えるぐらい。

「堅苦しいのはいいよ。僕らは将来ともに歩む仲じゃないか。僕のことはレリクスかレックと呼んでくれ」

 立場が上の人間の名を呼ぶのは相手に許可を貰わないと駄目。

 だからリアルテ嬢は律儀に「第三王子」なんて呼んだけど、そんな呼ばれ方は嫌だよね。

 リアルテ嬢が小首を傾げたのは、たぶんいきなり愛称呼びを許可したからかな。

 普通はレリクスと呼ばせる。レリクス様、レリクス殿下、そんな感じで、愛称は余程親しい人だけ。

 将来結婚するんだから、親しくなりたいからね。無理にとは言わないけど。

「分かりました。では、私のこともどうかリアルテとお呼びください」

 ううん、凄い、感情がない。

 いや、内心は知らないよ。でも声にも表情にも感情ってものが感じられない。

 不気味の谷にハマってる精巧なアンドロイドみたい。

 僕の調べじゃ、リアルテは一部で「人形姫」とか言われてんだよね。

 人形のように綺麗、って意味もあるんだろうけど、どっちかと言うと無感情に見えるからだそうだ。

 ここまでだとは思わなかった。

「よろしくね、リアルテ」

 普通ならいきなり馴れ馴れしく呼び捨てにはしない。リアルテ嬢って呼ぶ。

 だから僕の言葉遣いは王子であっても少々無作法。

 いいじゃないか、そんなもの。公式の場だと不味いけど、今日は僕らのプライベートなお茶会なんだ。

 いるのは僕らの護衛とお付きの侍従、侍女ぐらい。

 たぶん、僕の侍従は渋い顔してるんだろう。諦めてるだろうけど。

 リアルテのお付きの侍女さんは困惑した顔だ。

「よろしくお願いします、レリクス様」

 ううん、リアルテの堅さは今一つ取れなかった。

『様』なんて要らないんだけどな。ま、初日から王族を呼び捨てとか、ちゃんと教育受けて来た令嬢には難しいか。

 でも、そのうち呼んで欲しい。


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