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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界猫

猫狩りをして滅びる街の最期の日の話

作者: 山田 勝

 僕は猫のキジ。僕が歩くと、大きな猫たちが騒ぐ。騒ぐ。


「キャアアーーーー子猫ちゃんよ」

「可愛い。もうだめ」

「もう、歩きながらママを求めて鳴いているわ」

「ルイーザ様の所へ一直線ね」


「ニャ!ニャ!」(ママ-)


 ごめんね。大きな猫たち。僕のママは決まっている。



「ニャン!ニャンニャー!」


「まあ、キジ、登って来て、もう、ミルクを準備していたのに、でも先に抱っこね」


「ミュア」


「ヨシ、ヨシ~キジは良い猫~♩」


 ママの大きく綺麗な瞳に僕が映ると幸せを感じる。


 大きな猫は狩りが出来ない。でも、力が強い。

 それは、猫を抱っこするために違いない。


 僕たちがネズミを狩ると大きな猫は褒めてくれる。

 あれ、何だか。眠たくなった。


「フフフフ、ゆっくりお眠り。起きたらミルクあげるわ」


 ママ・・・・・



 ☆5年後



 フウ、目が覚めた。久しぶりにママの夢を見た。オレは森にいる。あれから猫の王になった。

 この小さな森でも捕食者の頂点になったら力が天から授かるらしい。

 森の調和を保てと天から声が聞こえた。


 今日も茂みに隠れ獲物を待つ。



(ボス、大きな猫がきましたぜ)

(隠れろ。チビたちは避難させろ・・・あ)


 この雰囲気はママ・・かすかに感じる。

 大きな猫の中に化け物がいる。

 だけど、確かめるぜ!


「ニャン!」(ボス!)


 オレは走った。ママ・・・違う。ママの半分くらいの大きな猫だ。


 ガサガサガサ!


 草むらから姿を見せた。


「・・!猫ちゃん」


 何だ。毛はボサボサ。服もボロボロだ。


 ニコッ


 笑ってオレの機嫌を取り。


 ガサガサ!


 袋から干し肉を出した。

 食べ物でオレを釣る気か?


「ほら、干し肉をここに置くから食べてくれないかな。私はここから離れるから・・」


 丁寧に皿に肉を置きやがった。そして、離れた。

 あれはママと同じだ。




 ☆回想


 初めてママにあったとき。オレは威嚇をした。

 大きな手が怖かった。


「シャアアアアーーーーーー」


「フフフ、子猫ちゃん。ママ亡くなったのね。ご飯、ここに置いてくから、食べるのよ。また、明日来るから」



 ・・・・・・



「あれ、猫ちゃん。食べ物を通り抜けて・・」


 オレは迷わず大きな猫の側によった。

 背中に籠を背負っている。


 これは、ママの猫ギルドにあった物だ。


 ヒョイ!


 オレは籠の中に入った。


「グスン、猫ちゃん。来てくれるの?有難う。今度は、今度こそは守るから・・」


 この子はよろけながら森の中を歩く。

 話さないな。


 大きな猫語分かるのに・・・


 数時間経つと


 クンクン!

 腐った大きな猫の匂いがする。


 籠から顔を出した。城壁が見える。オレが五年前にいた街だ。


 大きな猫が吊されている。あの時と同じだ。


 大きな猫たちは猫を吊し始めた。

 その後、仲間を吊し始めた。


 まだ、吊し足りないのか・・・


「ヒィ、今日もなの。猫ちゃん。見ちゃだめ」


 門だ。兵士が立っている。



「アイリスか。お、猫を捕まえてきたのか?」


「違います。来て頂きました」


「どっちでもいいわ!すぐに屋敷に向かえ。聖女様の命令だ!」


「はい・・」


 兵士に連れられこの子は街の中を歩く。


「「「「チューチューチュー!」」」


 ネズミだらけだな。並の猫なら逆に狩られる。


(威圧!)


「「「チューーーーーー!」」」


 逃げた。

 オレは並の猫じゃないのさ。


「さすがね。貴方の事、キジちゃんと呼んで良い?」


「・・・・・」


 オレは黙った。その名はママとその仲間たちが呼んで良いのだ。



 しかし、街は見る影もない。


 清潔な食事場、綺麗なトイレ、安心できる猫の家がこの街にはいたる所にあった。


 清潔な食事場は壊されている。

 いつも砂を入れ替えてくれるトイレは、うわ。あれから砂を入れていないのか?底が見えている。外猫用の家もない。



「猫だ」

「うちに来てくれよ!」

「そうだ、早くネズミを退治してくれよ!」


 こいつらが、猫の世話してくれる大きな猫を吊したくせに。


「なでてあげるよ」


「シャア!」


「お前ら、あっちに行け!領主様の館で飼われる!」


「え、それは、話を聞いていません。猫ギルドでお世話をするはず」

「いいからさっさと歩け!」



 ヒドイ。槍で威嚇され領主の館までこの子は歩かされた。

 森から少しも休んでいない。


 屋敷ではピカピカ光る石をつけた大きな猫の女と。

 歯がボロボロ、頭の毛が抜けかかった男がいた。




「ほお、猫か。当屋敷でネズミの退治をしてもらう」

「フフフフ、アイリスとやらご苦労です。これを受け取って帰りなさい」


 ドサ!


「話が違います!キジちゃんはうちに来る・・・」


 シャキン!


 剣を突きつけられたぜ。


 オレはこの屋敷で降ろされた。

 うわ。ネズミが至る所にいる。


 とりあえず寝るぜ。木の下で丸くなった。


「猫は夜行性と聞くから、寝るのは勘弁してやろう」

「大きな猫ね。これは期待できそうだわ」



 ☆夜


 オイラは起きた。

 見回りをする。おっ、あの袋、お金と言うものが入っているな。

 あの子、受け取らなかったか・・・・


 まあいい。

 出入り口は閉じられている。

 オレを閉じ込めたつもりか?


 袋をくわえて、塀を跳び越える。


 シュン!


 あばよ。誰がお前の屋敷のネズミ退治なんかするかよ。


 仲間はいないか?スキルで探してもいない・・・か?


 いた、仲間だ。魚屋の前の木の下にいた。


 近寄ると、白く輝いている。まるで、光るモップだ。


「ニャン!」(モフ爺)


 オレたちの最長老だ。生きていたのか?

 いや、死んでいる。


 (フォフォフォフォフォ、ママッ子のキジ坊やじゃないか?)


 鼻をちょんとつけるが、触った気配がしない。


(ワシはのう。この下に埋葬されたのじゃ)


(一体、何がおきたのか?教えて下さい。モフ爺!)



 モフ爺が語ってくれた。


 あれはオレが一年目の時だ。



 ☆回想



 突然、猫が襲われ始めた。


 原因はピカピカな石をつけ女のせいだと?



(あれか、屋敷にいた女か。一人だけ金ピカの石をつけていたな)


(宝石じゃの)


 ある日、領主が森に狩りに行った。

 森で足かせをつけられて動けない女がいた。



『助けて下さいませ!私、義妹と婚約者の策略により罪を着せられ婚約破棄をされ森に追放されました』


 領主は森にいた女を気の毒に思い街に連れ帰った。


 聞けば聖女であるとの事だ。


(本当か?)


 いや、ワシの見立てでは低級の薬師だ。違法な薬を売ったので森に追放されたのだろう。



 この女は弁舌巧みに領主に取り入った。

 聖なる薬を作れると。


 しかし、街を熱病が流行った。


 女は薬を作り無料で配った。


 しかし、全然効かない。焦った女は猫のせいにした。


 領主には低級な魅了薬を飲ませねんごろになり。


 毎日、猫と、お世話をしてくれる人達の悪口を言った。


 ママの一族の悪口を吹き込み。


 猫は悪魔の使いだと大声で言った。

 ママと猫が病気を広めていると言い出したのだ。


 100回も言うと信じる者が少しずつ出てきた。


『猫を殺しなさい。領主命令よ』

『はい』


 兵士は外猫を殺した。すると、熱病はやや治ったかのように見えた。

 実際は、時々、この街では熱病が流行るのだ。時間を経過すれば治るが、猫を殺した時期と。熱病が治まった時期が偶然重なった。

 たまたまだな。


 しかし、猫殺しが始まった。


 大きな猫のパパやママは猫を必死にかくまった。


 ワシのパパは屋根裏に隠し。お世話をしてくれたのじゃ。死んでからはここに埋葬してくれた。18年生きたのじゃ。パパのおかげじゃ。



 その頃には領主は魔女の魅了薬ですっかりふぬけになっていた。

 ママが邪魔になって一族を・・・ゴホン、殺したのじゃ。


 ボトン!


 くわえていた袋を落とした。


 ママは死んだ・・・ママが死んだ。ママは生きているはず。

 どこかに行っただけ。


(時々、いなくなることがあった。兄貴や姉貴たちを連れて・・嘘だろ。少し長いだけだーーー)


(それは遠征だ。猫たちを連れて畑の野ネズミを狩りに行ったのだ。ここはネズミが多い地域だ)



 そうだ。オレは竈の中に入れられて、暗くて狭い場所なので気に入ったのだ。


『猫ちゃん。ご飯よ。トイレも綺麗にしましょうね』


『ミャー』


『ヒィ、鳴いちゃだめよ』



 知らない大きな猫がお世話をしてくれるようになった。


 やがて、来なくなった。


 お腹をすかせたオレは、竈の空気穴から何とか外に出て。


 街の様子に愕然とした。

 いたる所で、猫たちが吊されていた。ネズミが死体に釣られて集まっている。


 怖かった。不安だったオレは思わず鳴いた。


『ナオ~ン』


『猫だ!悪魔の使い!』


 追いかけられ、必死に隠れた。

 体は小さい。身をかわせた。


 何とかネズミを狩り生き延びて、街を出た。


 森に行ったら仲間がいた。


 街育ちの猫たちだ。

 それでも狩りをしたが、2~3年で死んでいった。

 子猫たちはアナグマやキツネに狙われた。


 いや、大人の猫も襲われた。


 だから、オレは、茂みに隠れて、奴らが来たら、首筋をカブッとかみ。

 何とか生き延びた。

 オレの他に7猫と子猫が5猫・・・だ。


(そうじゃ、お前さんは他の猫に比べて2倍くらいの大きさじゃ。気がつかなかったか?森の神が管理者に指定したのだ。猫の王だ。近隣の他の街の猫たちは知っておるぞ)


 ・・・生態系の頂点はネコ科の動物が多い。

 キジも肉食獣としての才能が開花した。





(さて、ソロソロ、ワシも大きな存在と一緒になる時が来たようだ。滅びに日にお前さんと会えて良かったわい。パパの枕元に立って逃げるようにする。

 少し、待て)


 ボア~


 モフ爺が消えた。


 しばらくすると、魚屋から大きな猫の男が出てきた。



「・・・本当だ。大きなキジ猫がいるぞ。夢のモフ爺の言ったことは本物だ!」

「マリー!起きろ。逃げるぞ。アイリスを連れて、今日街が滅ぶそうだ」

「はいよ。もう、出たいよ。こんな街」



 ブオオオオーーーーン!


 ロバを起して、荷馬車にオレを乗せ。猫ギルトに向かう。


 あの子がいるそうだ。


 猫ギルド、見る影もない。

 ネズミが占領している。


 あの子は竈の中で寝ていた。


「シャアアアアアーーーー」


「「「チューチューチュー!」」」



「アイリス、逃げるぞ」

「ハンスおじさんとマリーさん」

「魚の仕入れに行くふりをして街を出る」


「でも・・・猫ちゃんを置いて・・」


「ニャア!」

 ポトン!


 袋を足下に落とした。


「まあ、キジちゃん・・・来てくれたの?それは聖女様が私に投げたお金」


「ミャアー」(いいからとっておけ)



 大きな猫は3人とオレは荷馬車に乗って街を出た。

 門には兵士がいた。


「ギャハハハハハ、ヒック、お、こんな時間に魚屋のハンスか?」

「女房と仕入れか」

「ここだけは不思議とネズミが襲わないんだよな。聖女様のご加護だ」


「へへへ、どうも」


「しかし、最近、ナマズばっかりではないか?マスを頼むぞ」

「勿論、遠出して、湖まで行きます。帰りは遅くなりますが、よしなに」


「一応、荷を改めるぞ」

「ほお、大きな樽だな」



(キジちゃん。鳴かないで)


 ギュウと抱っこしやがる。フン、鳴くものか。



「これを酒代にして下さい」


 チャリン♩


「そうか、行け!」



 何とか門をでられた。


 街を見渡せる丘に着いた時、地響きが轟いてきた。


 ドドドドドドドド!


【チュー!チュー!チュー!】

 あれは、ネズミ津波か?増えすぎたネズミが場所を移動する現象。


 街の壁を登って・・・


 そうか、吊している大きな猫が目的か?猫や大きな猫の遺体を食べて、数が臨界点まで増えたのか。


「「「ギャアアアーーーーー」」」


 あの兵士が襲われている。


 モフ爺が言っていた滅びの日ってこのことか・・・



「ニャン」


 オレはモフ爺に黙祷した。


「グスン、グスン、モフ爺、死んでも守ってくれたなんて・・」

「ええ、私達の店だけはネズミが襲わなかったのって、モフ爺の加護があったのね」


「急ぐぞ」


 やがて、オレの森についた。



「キジちゃん。ごめんなさいね。ついてきてくれて有難う」


「ニャーゴ!ニャー!ニャー!」(皆、集まれ~~)


「「「ミャアーーーー」」」(ボス!)



 この森に隠れていた猫たちを集めた。

 決めた。この子について行く。


「・・・こんなに生き延びてくれて有難う、大変だったよね。グスン、グスン」


「ニャン!ミャアアーー!」(さあ、乗れ!)



 オレたちは旅をした。


 オレがロバの背中に乗り。周りを警戒する。

 ネズミが増えているぜ。


 魚屋のハンスは、川で魚を釣り。

 オレたちも狩りをする。


「まあ、鳥を。有難う。抱っこさせて・・」


 プィッ!


 オレのママは一人だけ。そうやすやすと抱っこをさせてやるものか。


 シュン


 としてやがる。しかし、他の猫にとってはママになる。素質はある。練習だ。抱っこさせてやる。


「ニャ!」


「まあ、有難う。キジは良い猫、ねん猫よ~」


 フン、良い声だ。低くて甲高くない。音程も外れていない。




 ☆リスキの街


 やっと、人の住んでいる街に着いた。


「誰か!」



「都市リードから来た。ハンスとマリーの夫婦。この子は知り合いの子です」


「リード?ネズミを大発生した街ではないか?帰れ!」



 口論が始まっている。

 オレは顔を出した。


「ミャ」



「猫?猫殿?」

「荷馬車に猫どのがおられるぞ!」


「開門~!」



 すぐに領主館まで連れて来られた。



「ほお、猫殿が13猫・・・」


「はい、リードの街の近くの森で生きていてくれました」


「アイリス殿は?猫ギルドか?」


「いえ、猫ギルドは全滅しました。私は親戚の子です。幼い頃、猫ちゃんたちに遊んでもらいました」


「そうか、ここで猫ギルドをやるが良かろう」


「はい!」


 この街はネズミの大発生から逃れるために、街の封鎖をしていた。


 ハンス夫婦が猫のご飯の用意して、あの子がギルマス。三人だけの寂しいギルドだ。


 この子は養子縁組や猫の体調管理。猫の世話全般をしてくれている。

 まだ、猫は少ない。


 森で生まれたチビは狩りが出来るように成長した。



「ニャン!ニャン!」(ネズミ捕まえた!)


 今は、農場でネズミ退治をしている。



「キジ!おいで~」


 オイラはママの教育をしている。

 とりあえず抱っこだ。少し大きくなったので、オレを楽々抱っこできるようになったぜ。



「フフフ、キジは良い猫~ねん猫~よく寝る良い猫~♩」


 フン、オイラのママは一人だけだ。

 だけど、この子をママ二代目にしてやっても良い。


「ウミャ、ミャア?」(ママ、重くない?)


 あ、オレ、子猫のように鳴いている。


「フフフ、良い子」


 まるで、子猫のように安心している顔だ?大きな猫の瞳に映ったオレの姿を見て驚愕した。


 まあ、いいか。それが猫と大きな猫とことわりだ。おかしな事はない。


最後までお読み頂き有難うございました。

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