魔道具製造工場にて
男はマナレスの一員で、反王国組織のために働いていると話した。
反王国組織マナエストは数年前から水面下で活動していて、マナレスを通じて王国倒壊を目論んでいる。
マナレスはマナエストから提供された違法魔道具で王都を内部から破壊しようとしていた。
更に男の話によれば、山の向こうに魔道具製造工場があるらしい。
そこでは密かに水面下で力を蓄えたマナエストが戦略兵器を製造している。
魔動機のように魔力がない人間でも動かせる兵器をもって王国倒壊を目指す。
そんな理念で成り立っているのが反王国組織マナエストだ。
マナレスは魔力至上主義を嫌い、マナエストの王国倒壊の理念に共感したのだという。
しかしルアンが言うにはマナエストこそが魔力至上主義であり、マナレスは王国倒壊の為に利用されているに過ぎないと言った。
男は最初こそ否定していたが、次第に自信を失っていく。
「そんな……。イド様は俺のような魔力が少ない人間も住みやすくなる国を作ると仰ってくれたのに……」
「マナエストを率いる者からすれば、あなた達マナレスなど手駒としか思ってないでしょう」
「で、でもイド様は優しく俺の手を握ってくれたんだ!」
「そのイドという人物が黒幕ではありません。彼らを支配する者がいるのです」
「い、いったい誰が!?」
そこでルアンは口をつぐんでしまった。
ルアンによればすでに王国はマナエスト討伐に向けて動いており、魔道具製造工場も攻めているとのことだ。
ゴーレムの発見現場と工場の位置がそう遠くないことをすっかり失念していたらしい。
攻めているのは第四魔術師団。攻城戦において彼らを上回る部隊は存在しないと言われている。
今頃は魔道具製造工場もとっくに落ちているとルアンは予想した。
* * *
「お、おかしいな? なんで誰もいないんだ?」
「いつもなら人がたくさんいるのか?」
オレ達が辿りついた工場は堂々とした作りだが、人の気配がほとんどない。
工場の入り口に向かっても音すらしない。
罠があるかと警戒したが、すんなりと中に入ることができてしまった。
内部は広々とした空間で、見たこともない巨大な魔道具が所々に置かれている。
ベルトのようなものがずらりと平行に並んでいて、オレには何がなにやらさっぱりわからない。
これほどの施設なのに人がまったくいないとはどういうことだ?
「ルアン、これはおかしい。ここはマナエストにとって重要な場所のはずだろう」
「えぇ、それにあまりに綺麗です。それに第四魔術師団はどこに?」
ルアンは第四魔術師団を信じている。
再び探索を始めようとした時、巨大な魔道具の上に誰かが立っているのが見えた。
派手な服装で、まるで大道芸でもするかのような人物がけたたましく笑う。
「ウーーケケケケッ! やっと後始末を終えたと思ったらなんか来ちゃったよ!」
「あなたはマナエストの魔術師ですか! この工場の人達はどこにいったんです!?」
「魔術師団に見つかったせいでイドの奴がここを破棄するってさ! そんでボクは後始末を押し付けられちゃったんだよねぇ!」
「破棄……では魔術師団は?」
大道芸人が左右にピョコピョコと跳びながら魔道具から下りた。
大道芸人でありながらマナエストにつくとはどういった心境だ?
やはり世知辛い世の中、大道芸一本で食べていくには厳しいのか。
そうなればマナエストの理念に共感してしまうということもあるのかもしれない。
「全滅だよ、ぜ・ん・め・つ! あ、でも一部のマシなのはこっちで使うから安心して!」
「全滅……そんな……あの第四魔術師団が……」
「えぇーーーー! そんなに驚くぅ! クッソ弱かったんだけど!」
「ウソです! あの方々は私が子どもの頃から憧れていた……弱いはずがないッ!」
ルアンが怒りをあらわにして魔力を放出したようだ。
凄まじい勢いで周囲の魔道具がパキパキと凍り付いていく。
「ひょおぉーーーー! さっむぅぅ!」
「マナエスト! あなた達の後ろに前王クリバトフがいるのはわかっています! 元国王でありながら鬼畜にも劣る所業! 手始めにあなたから始末します!」
「ル、ルアン! それは本当なのか!?」
オレの問いに答えずにルアンは攻撃を開始してしまった。
冷気の塊が大道芸人に向かって放たれて、一瞬で凍てつかせてしまう。
「ル、ルアン。相手は大道芸人だ、そこまでしなくても……」
「ウォレスさん、あれがそうでないことはすぐに証明されます」
「それはどういう……む! こ、氷が!」
大道芸人に張り付いた氷がみるみるとただの水になっていく。
それが空中で水しぶきを上げて虹を作った。
「これがホントの水芸ってね! ウケケケケェーーーー!」
「衣服が一切濡れていない……なるほど、あの超魔力至上主義のクリバトフが見つけた魔術師なだけのことはあります」
「クリバトフ様はねぇ。ずっと昔、ボクらみたいにどこにも行き場がない魔術師達をスカウトしてくれたんだ! いつかその力が役立つってね!」
「ということはクリバトフ、自分の王位が奪われることすら予想していた……?」
クリバトフとはつまりルアンの祖父に当たる人物か。
現国王の父親で、確か行き過ぎた魔力至上主義社会を作り上げていたと聞いている。
「キミ達、面白いからさ! ちょっとこいつの相手をしてよ! 本当は大決戦の時に使うつもりだったんだけどさ! ちょっと危なっかしいってんでお蔵入りにするみたいなんだよね!」
大道芸人が指をパチンと鳴らすと、奥の巨大な扉が開く。
音を立てて出てきたのはオレ達が倒した魔動機とは異なる形状のものだ。
装甲が黒光りしており、背中からは砲塔が突き出ている。
あれの中にも人が乗っているのか?
そうとは思えないほど無機質な存在に思える。
「こいつは今までの試作型と違って魔術師の強さに応じて強くなるんだ! ただし意識が奪われて理性がぶっ飛ぶみたいだけどね!」
「やはり人が乗っているのか。ならば話は早い」
オレが魔道機に駆けて双剣を構えたが――
「……ロ、ス……」
「む?」
「コレ、ガ、チカラ、ダ……」
「なんだ、この声……どこかで……」
どこかで聞いたことがあるとてもなつかしい声だ。
その声の記憶を掘り起こそうとしたところで、魔動機が火球を連続で繰り出す。
「くっ……! この火球は、まさか……!」
「ウォ……レス……オマ、エ……」
「オレの名を呼ぶか! お前、ゼシルだな!」
「ウォレ、スッ! ウォレスァァーーーーーーー!」
なぜゼシルがあの中に?
疑問は尽きないがあの声は間違いなくゼシルのものであり、オレを殺そうとしている。
オレと違って優秀な兄は魔法学園に入学して順風満帆な人生を送っていたはずだ。
それがなぜマナエストなどに従っているのか。
ゼシルがオレの疑問に答えることはない。
ゼシルの怒りに呼応するかのように魔動機の背面から一斉に煙が噴き出した。
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