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VS ゴーレム?

 ゴーレムの目撃情報があったという目的地の森の中を進んで三日間、これといって成果がない。

 魔物の存在は確認できたが本当にここにゴーレムなどいるのだろうか?

 とはいえオレとルアンは冒険者だ。

 たとえ成果がなくとも、この辺りの資源を把握して有益なものがあれば持ち帰る。


 野草や木の実の中には市場価値があるものが少なくない。

 これらを納品すれば市場が少しでも潤うだろう。

 オレは討伐したブラストベアを片手で引きずりながら森を歩いた。


「ウォレスさん……それ置いてもいいんですよ? 持ち帰って売るんですか?」

「いや、これは売るというよりいざという時のための非常食だ。特にこいつの手は絶品だぞ。何せ手に蜜を塗って冬眠するので栄養が溜まっている」

「はぁ……強化魔法もないのによく運べますね」

「強化魔法に及ばず不格好なのは承知だ」


 ルアンからすればひどい有様なのだろうが、オレにはこうするしかない。

 魔法が使えないオレなど、いつ森の中で遭難するかわからないのだ。

 そうなった時に食料を調達する体力がなければ野垂れ死にしてしまう。


 つまり非常食としてこいつを持っておく意味は十分にあるというわけだ。

 オレはルアンをいないものとして森の探索に当たっている。

 いつまでも魔法が使えるルアンに頼らず、一人で戦えるように訓練しておく必要があった。


「ウォレスさん、このままゴーレムが見つからないようでは撤退も視野に入れましょう。それはそれで報告しておかなければいけません」

「確かにな。しかしあと一日だけ探索させてくれ。どうにも諦めきれないのだ」

「目撃者がこの辺りを探索していた冒険者一人ですからね……。それこそブラストベアと見間違えたのかもしれません」

「そうだといいのだが……ん?」


 オレは遥か森の奥に目を凝らした。

 そこにはかすかに巨大な影が見え隠れする。

 しかしあれがゴーレムなのだろうか?


 そう思っていた時、遠くの巨木がメキメキと音を立てて倒れた。

 巨木が倒れたおかげで見えたのは、見たこともない鉄の巨人だ。

 ルアンも発見したらしく、杖を握りしめる。


「あ、あれは……ゴーレム? いえ、それにしては精巧な見た目をしているような……」

「行ってみよう!」

「あ! ちょ、ちょっと待ってくだ……はやぁぁ!?」


 オレは全速力で木々の隙間を駆け抜けた。

 枝から枝へ飛び移り、最短ルートを駆けるとそこにはやはり鉄の巨人がいる。

 なんだこいつは?

 オレが知るゴーレムと大きく違う。


「はぁ……はぁ……ウォレスさん、強化魔法込みの私より速い……」

「ルアン、あれはなんという魔物だ? ゴーレムか?」

「これは……明らかに人工物です。まさか魔動機?」

「魔動機だと?」

「人が搭乗して動かすタイプの魔道具です。つまりこの中には誰かが乗っています」


 ルアンの説明を肯定するかのように、魔動機の頭がこちらに向く。

 一つ目が赤く光り、片腕を突いてきた。


「ぬっ!?」

「わっ!」


 オレ達が回避すると地面がえぐれて木がひっくり返る。

 拳一つで凄まじい破壊力だ。

 いつかのガンジルが見せた岩の巨人のそれと同程度の力か?


「おい! お前ら何者だ! 王国の手の者か!」

「私達は冒険者です! 森の中でゴーレムの目撃情報があるということでやってきました!」

「ゴーレムだぁ? クッソ、見られてたのかよ……ここなら誰にも見つからないんじゃなかったのか? イドの奴、適当なことばっか言いやがって……」

「イド? あなたはその人物の指示で魔道機を動かしているのですか?」


 魔動機が両手を構えて、オレ達に熱線を放つ。

 木が一瞬で蒸発するかのように焼けて、丸型のくりぬかれた跡を残した。

 恐ろしく速い。これは魔法なのか?


 少なくとも前世ではこんなものはなかった。

 どうやら三百年の間にとてつもない技術の進歩を遂げているようだ。


「俺はこいつの試運転を任されているんだ。悪いが見られたからには生かしておけねぇな」

「つまり私達と戦うつもりですか。ウォレスさん、やりましょう」

「あぁ、よくわからんがよろしくない人間のようだからな」


 オレが駆けてルアンが氷の魔法を放つ。

 氷の矢がゴーレムに命中してパキパキとボディを凍り付かせるも、すぐに割られてしまう。


「効かねぇよ! こいつには耐魔法用の鉱石が使われてんだ!」

「通常の魔法では効きませんか……」


 オレの双剣がボディにヒットしてゴーレムの装甲にめり込む。

 が、恐ろしい硬さだ。

 人間で言えば皮膚にかすかに斬り込んだ程度といったところか。


「なんだよ、こいつ!? 強化魔法でもかかってんのか!? くらえッ!」

「ぬっ!」


 ゴーレムから双剣を抜いた後、熱線を寸前のところで回避した。

 次にゴーレムからすかさず放たれたのは拡散した熱線だ。

 隙間のない熱線攻撃により、腕と足にかすって痛みでひりつく。


「さすがに熱いッ!」

「鉄すらも解かす威力だぞ!? なんで死なないんだよ!」

「当たり所に恵まれただけだ。それよりやはりこれは魔法なのか?」


 ゴーレムが攻めあぐねている様子だ。

 後ろではルアンが無事、熱線を防ぐことに成功している。


「クールダウン」

「な、にぃ!」


 ルアンに迫った熱線がパキパキと凍りついてからジュワリと音を立てて溶けて蒸発していく。

 まるでルアンの周囲だけ凍てつく世界のように、熱線すら受け付けていないかのようだ。


「こ、こいつら、何者だよ……う、うああぁあーーーーー!」

「双利……大刃ッ!」


 双剣による一刀両断でゴーレムが真っ二つとなる。

 パカリと割れたゴーレムから人が出てきた。

 ヒゲを生やした男で魔術師には見えない。


 男が地面に落ちると這うようにして逃げようとする。

 オレは前に回り込んでから男の目の前に剣を突き刺した。


「くっ!」

「お前は何者だ?」

「へっ、拷問されたって答えるもんかい」

「それは困ったな……」


 この男はよくない人間だろうが、何事も納得できないことはあるというもの。

 それならばこれしかない。


「ではこうしよう。何かお前が納得する方法で決着をつけよう。オレが勝てば話してもらい、お前が勝てばこの場から逃げていい」

「ウォレスさん! 私が拘束して喋らせますからそんなことは……」

「いや、この男にも何か譲れないものがあるのだろう」


 ルアンの気持ちはわかるが、オレとしては強引に喋らせたくない。

 もちろん男の意思を尊重したいし、気になることがあるからだ。


「お前、魔法は使えるのか?」

「つ、使えねぇよ。使えたらあんなもん乗るか」

「それならオレと同じだな。魔法が使えない者同士だ。勝負をすれば何か分かり合えることもあるだろう」

「は? いや、それは……」


 男は迷っていたがどのみちルアンが目を光らせている以上、逃げるのは難しいだろう。

 それを理解した男は観念してオレと勝負することになった。

 男の提案で、ジャンケンで決着をつけることになる。


 ジャンケンか。

 勇者パーティ内で報酬がうまく分けられない時によくやっていた。

 オレも参加させてもらったのだが結果は――


「へっへっへ……何せゴーレムをぶった斬る奴だ! イチかバチかってんならこれしかねぇ! いくぞ! ジャンケン! チョキ!」

「グーだ」

「なにぃ! もう一回! パー!」

「チョキだ」


 五本勝負のうち、すべてオレの勝利で終わった。

 魔法が使えない以上、オレのような人間は相手の初動を見て予測するしかない。

 今回もなんとか成功したようだ。

 思えば勇者パーティでのジャンケンもすべてオレが勝ってしまったので、報酬は辞退していたな。

 オレのような人間が勇者達の努力で得た報酬を貰おうなどおこがましい。


「ウソ、だ……全部、全部読まれてるぅ……」

「約束だ。喋ってもらうぞ」


 少し遠回りになってしまったがルアンはどう評価してくれるだろうか?

 ところが、まるで死んだ魚のような目で見るルアンがいた。

 やはりこれもダメか。やはりルアンが拘束して喋らせたほうがよかったのだろうか?

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