ピアノと共に青春を
4月6日、滝音中学校、入学式、心機一転がんばりますか。
4月7日
今日からいよいよ僕の中学校生活が始まる。小学校の卒業と同時に引っ越しをした僕は、小学校からの友達は一人もいない。なんなら小学校も引っ越しが多くて友達なんかできやしなかった。そんな僕が唯一友達と思っているのは、幼稚園から始めたピアノだった。いつだってピアノは僕の心を癒し続けてくれた。それに、僕が奏でてきた音は仕事で疲れた母や父をも魅了した。そう、僕はピアノを弾くことで自分の存在を際立たせてきた。
僕は1年1組に配属された。
今日はオリエンテーションがメインだった。みんな、個性あふれる自己紹介をしていた。特に面白かったのは、出席番号1番の相田君だ。おそらく小学校のころからクラスの中心にいたんだろう。ノリと勢いと声の大きさだけでみんなの心をつかんでいた。
ただ、僕が一番気になったのは出席番号23番の田中さんだ。メガネをかけていて、いかにも地味な見た目だが、僕が興味を引いたのは自己紹介で言ったある部分だ。
「特技というかなんというかわからないですが、絶対音感があります。」
絶対音感があるということは相当な音楽一家なはずで、田中さん自身も何か楽器をやっているはずだ。
もしピアノを弾いていたなら秋の音楽祭でライバルになる。どのくらいやっていたのか放課後に聞いてみることにした。