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第8話:決闘

「ジェイク君、ルールは君が決めていいよ」


 訓練場の真ん中にはオレとジェイク君、それとバックスがいる。

 そして周りにはシーナちゃんとミンスさん、それにジェイク君のパーティーメンバーと野次馬がいる。


 そういえばジェイク君のパーティーメンバーはジェイク君みたいにうるさくはないな。

 でもシーナちゃんを殺すことに同調しただけで、ぶっ潰す対象になる。少なくともリアならそう言うだろう。オレもそう思うからな。


「舐めないでください。決めるのは審判でいいです」


 生意気なガキがまともなこと言ってるな。

 お前がまともなこと言ったとしても、殺人未遂を起こしたことに変わりはない。


「じゃあ決めてやろう。【邪魔者のユーリ】は魔術使用禁止。ガキはそうだな、なしでいいだろ。どうせソロランクもパーティーランクもFランクだろうしな」


 バックス、お前はオレをそんなに負けさせたいのか。

 あとそんなに挑発したらますますやる気をだしてしまうだろ。あえて挑発して隙を作らせる作戦なのか?


 どっちでもいいが挑発するのはやめてほしい。

 良い方向に転ぶか悪い方向に転ぶか分からないから怖いんだよ。


 まあいいか。ここはバックスの挑発に加えてオレも挑発しておこう。


「オレはソロランクがBランクの冒険者だから、そのくらいのハンデはあげるよ」

「【邪魔者のユーリ】……そうか有名パーティーに追放されまくった奴か。そんな奴に負ける訳ないだろ。仲間のおかげでソロランクも上がったんだろうしな」


 は? この子、頭大丈夫?

 パーティーランクなら仲間のおかげかもしれないけど、ソロランクは一人でしか上げられないから協力なんてできないだろ。


 でもジェイク君はオレのこと知ってるのにシーナちゃんが知らないのは不思議だな。


「はぁ、じゃあどうして欲しいの? オレが魔術を使ってもいいわけ?」

「そういうこと。一つしかできることがないのにそれを取ってしまったら酷だしな」


 いや、オレ別に魔術だけが取り柄って訳じゃないから。

 むしろ今回魔術を使う気ないし。

 だって魔力欠乏症を起こした後なのに魔術使えるわけがない。短剣と弓を使って戦うつもりだから、魔術を封じられても何の問題もない。


「ならば殺すこと以外は全て良い。じゃあ、始め!」


 きゅ、急にだな。

 まあいいか。殺さない程度に痛めつけると……いやプライドもズタボロにしてやろう。


「行くぞ、弱者!」


 弱者って。有名パーティーを離脱してきたとはいえそれなりのところまではついて行ってたんだからある程度の実力は持っていると思うぞ。


 ジェイク君は二本の剣を持ちこちらへと突進してくる。


 二刀流か。

 でもただ突っ込んでくるだけでそれ以外は何をするのか考えているような感じはない。


 じゃあオレは特注の弓で戦うことにするか。

 ただ矢も特注だから補充もしてないし。五本しかない。五本でジェイク君を仕留める。

 勝手に自分の行動に制限をつけて戦う。馬鹿みたいなことしてるけど、それを知ったらどれだけ絶望するかな。

 まあ弓矢が特注ってとこだけは救いになるかもしれないんだが、それが残念だな。


 二刀流対弓矢(特注だが本数五本)


 さて、どちらが勝つのでしょうか。


「よっと」

「はあ? なんだよその弓! なんで壊れねぇんだよ! 剣で弓が壊れないなんておかしいだろ!」


 同時に剣を叩きつけてくるジェイク君。それを弓であっさりと受け止めるオレ。

 反撃されるかと思ったのか、慌てて後ろに下がったようだ。


 いやだってこの弓加護をつけてもらっているからな。


 まず鉄で出来た弓だし、おまけに加護もついてるし。

 まあ剣を受け止めるくらいはできるしな。


「ああ、そうか。有名パーティーにいたから金は持ってるんだな。だから武器だけは良いんだろ? 結局武器だけ良くて実力はなしってところか」

「まあ、否定はしないかな。でも実力は君よりはあるけどね」


 挑発しまくるオレ。それに対して怒りを露わにする。


 金は持っているのは確かだ。本当に有名パーティーにいたんだから金はもらえるし、いなくなったときにも大金をもらうときもあったからな。

 やっぱりオレはメンバーに恵まれていたんだ。


「舐めるなクソカスおっさん! 俺様よりカスの弱者の分際でぇぇぇえええ! 死ねぇぇぇえええ!」


 いやいや本性丸出しだぞ。

 あと自信過剰過ぎだろ。これだったら覚醒したシーナちゃんの方がよっぽど強いぞ。

 それにしてもよくこんなリーダーについていけるもんだなぁ。仲間も同じくらいクズいんだろうな。


 あとおっさんじゃない。そこもあとで訂正させないといけないな。

 見た目は確かに大人っぽく見られる時はあっても、実年齢は見た目よりも遥かに若いんだよ。


「うん。そうだな。オレと追いかけっこしようか。オレはこの五本の矢で攻撃する。この矢がなくなったらオレの負けでいいよ。それとオレに少しでも触れたら勝ちでいい。手でも足でも剣でもなんでもいいよ。弓に触れても負けでいいしさ」

「はぁあ? 舐めんなっつってんだろうがぁあ!」

「良い提案だったと思うけど。まあオレ一人で実行しておくよ」


 どうせ一本目で終わるんだから、ちょっとくらい遊んであげてもいいかな。


 数十分後。


「はぁ、はぁ、はぁはぁ。逃げ回ってんじゃねぇよ。それでも男かよ」


 叫ぶ元気はどこに行ったのやら。

 ただ逃げてるだけだし。しかも触れられるようにわざとギリギリまで逃げないようにしてあげてるのにさ。


 動いてる時間的には変わらないんだから、もっと体力つけないといけないだろ。


「ねえ、ジェイク君。二刀流剣使いが魔術師に負けるってどうなの? 基礎体力大丈夫? そんなんじゃすぐ死んじゃうよ。冒険者って職業はさ、生きるか死ぬかの二択しかない。君、冒険者に向いてないんじゃない?」


 オレは魔術を使わずに逃げ回っている。

 魔力が尽きた時のために、最低限は動けるようになっておかなくてはいけないと思い特訓した結果だ。


 剣使いは魔術師に比べて動く量が数倍は違うと言ってもいい。

 前線で戦うのだから動けないと元も子もない。それに比べ魔術師は後衛で援護をする。だから圧倒的に剣使いが動けないといけない。


 いくら歴が違うとはいえこんな早くに疲れちゃダメでしょ。

 オレが新人の頃の方がよっぽど動けてたよ。


「あっ、ちなみに、今のところ矢使ってないから。ノロマな君に矢を当てることなんて簡単。いっそのこと楽にしてあげようか。ま、生きてる保証はしないけど」


 オレがいたパーティーの弓使いに比べればオレなんて素人レベルだ。

 でも薄々感じていたが仲間が化け物なだけで、オレはそれなりに弓を使える。比べる対象が間違っていただけ。

 アイツらに追いつくぐらいの技術は持とうなんて思っていたのは馬鹿だったと思ったからな。


「く、そ、が」

「じゃあ、さよなら」


 矢を放つ。

 矢が進む先にはジェイク君の頭がある。


「えっ?」

「おっと、触れちゃダメなんだった」


 オレはギリギリのところで矢を止めた。


 何故そんなことができるのか。それは弓に加護をつけているからだ。

 この弓で放った矢はオレの意思次第で自由自在に操ることが出来る。それは止めることは勿論、スピードなども操れる。

 ただ矢も弓に反応するものじゃないといけないから、特注の品になってしまうのだ。


 オレも錬金術師の力を使えるようになりたいな。


「あーあ、気絶しちゃったか」

「勝者、【邪魔者のユーリ】」


 バックスがジェイク君の気絶を確認すると、オレが勝者だということを宣言した。


 でもこういう時くらいは二つ名で呼んで欲しくないんだけど。

 そんなにオレの二つ名が気に入ってるのかな。


 すると一斉に拍手が巻き起こる。

 「本当は強かったんだな」とか「すげーぞ」とか、色々な声が聞こえた。


「ミンスさん。ギルド会議を開いてくれませんか?」

「なんでですか?」

「ジェイク君とその仲間に殺人未遂の容疑がかかっているからです」

「え!? わ、分かりました。至急ギルドマスターに掛け合ってきます」


 ミンスさんが急いで訓練場から出て行った。

 オレのことを信じてくれたから、すぐに行動してくれたんだろう。それと最初のやりとりを聞いていたからかもしれないけど。


 ふう。終わった終わった。

 ただただ疲れただけだったな。やればすぐに終わってたんだけど。


「ユーリさん!」

「シーナちゃん。ごめんね、勝手に話進めて」

「いいえ、わたしのためにやってくれたんですから嬉しいです」

「でも、会議するって」

「ああ、それはね。リアが戻ってきたらもっと面倒なことになるから、とっとと片付けておきたいんだよ」

「そうなんですね」


 リアが帰ってきてしまえばお仕置きと称してヤバいことをする可能性が高い。

 だから早めに行動しておかなければ。


「ミンスさんに言えばすぐに始まると思うよ」

「でも、よかったです。ユーリさんに怪我がなくて」

「心配してくれてありがとう」


 そうして決闘は幕を閉じた。

 そしてすぐに会議が始まることになる。

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