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第5話:決着

「行くよ!」


 オレは木の上に隠れ、少女はデーモンに突撃する。

 同時に隠れる場所を移動する。


 隠れても意味がないのなら素早く移動して攻撃を避けるようにする。

 そしてデーモンと少女の戦いを見逃さないようにした。


「白き光よーーー」

「グギィ」

「はぁぁああ!」


 少女はきちんと型に則った剣術で攻撃する。

 だがデーモンはそれを簡単に受け流す。


 何度も何度も攻撃を仕掛ける少女。それを片手で受け止め受け流し攻撃を躱すデーモン。

 デーモンはまるで子供を相手するように攻撃を躱している。


 これは幻竜一刀流か。

 あれを習得するのは難しいと聞いたが、まだまだ粗いところがあるものの大事なところは押さえてある。

 だけどその粗さが弱点になっている。デーモンはいつでも攻撃することができる。遊んでいるようにしか見えない。


「〈鋭利化〉〈硬質化〉〈体力強化〉〈速度強化〉」


 剣と少女自身に強化をした。


 魔術は自分を強化するよりも他人を強化する方が少しだけだが消費魔力が多くなる。

 だがその少しも今は惜しい。

 しかししなければならないため、自分には〈魔力増幅〉を使った。


 〈魔力増幅〉は多大なメリットがある代わりに、それに見合うだけのデメリットも存在する。

 魔力が一定時間通常の倍以上になるが、時間切れになると魔力欠乏症が起こる。

 魔力欠乏症は死にはしないものの、強烈な痛みに襲われたり意識を失ったりする。しかも魔力量が少ない人ほど襲われる痛みが大きいという。


「美しき空から降り注げーーー」

「グギッ、ギギギギィ」


 強化しても少女の実力ではもうすぐで限界を迎えてしまう。

 デーモンはまだまだ余力を残しているようだ。


 オレと戦ったときとは違って魔法も使っていない。

 確実に舐められているな。


 魔術でどれだけ強化しても限界はある。

 強化ではなく回復をすれば良いが、それだと魔力が足りなくなってしまう恐れがあるから使えない。


「明るき陽よ天から照らせーーー」

「きゃっ」

「グゥギィィ」


 少女が完全に限界を迎え倒れてしまった。

 必死に戦おうとするが、思うように身体が動かない様子。それでも剣を地面に突き刺し、立ちあがろうとする。でも力が出なく立ち上がれない。


「ググゥ」


 デーモンが少女目掛けて魔法を放とうとする。

 恐らく最初に使った〈魔力弾〉に似た魔法だろう。


 オレが魔術を使うための詠唱時間とデーモンが魔法を放つ時間、早いのはデーモンだろう。

 ならば約束を守らないとな。


「ガァァアア!」


 オレは全速力で走り、少女の前に立つ。その結果デーモンの魔法がオレに直撃する。

 幸いというか意図的に急所には当たらないようにした。


「ぐっ、はぁ」

「大丈夫ですか!?」


 オレの腹から血が流れる。

 直撃はしたものの貫通はしなかったようだ。


 相手が少女だったから威力は加減して放ったのだろう。

 オレが割り込み、オレが攻撃を食らうとは思ってもいなかったようだ。


「え? だ、大丈夫、ですか?」

「ああ、大丈夫。……デーモン、死ねよ」

「グギ?」


 オレの言ったことの意味が分からないのか、と思ったがどうやら違うようだ。デーモンはオレの姿を確認した後に、「ギギギギギィィ」と面白がるように笑った。


 これほどの怪我を負っているのだ。

 今更どうこうすることは出来ないだろうと思ったんだろう。


 でもそれは間違いだ。

 だってオレは、上級魔術を使える全属性魔術師なんだからな。


「〈天光線〉」


 オレが詠唱を終わらせる。

 すると天から何も見えなくなる程に眩しい光がデーモン目掛けて降り注ぐ。


 目を瞑ると、デーモンの断末魔だけが聞こえた。


「グ、ガァァァアアアアア、ア、ア、ァァ」


 デーモンの姿は消え、拳よりも大きな魔石だけが残っていた。


「や、やりましたよ! 倒しました!」

「そ、う、だな」


 少女が喜ぶ姿を見て、出来る限りの返事をする。そして力尽き意識を失ってしまった。


 やりきったと思ったのと、単純に体力と魔力が尽きてしまった。

 だからか、痛みもあったが気持ち良く意識を失えたと思う。


###


「ここ、は?」


 見覚えのない天井。

 起き上がろうとすると腹部が少しだけ痛む。他にも動こうとすると身体中が痛んだ。


「あ、良かった。良かったです。目を覚ましてくれて」

「君がここまで運んでくれたの?」

「いえ、偶然出会った冒険者さんが手伝ってくれたんです。そちらの方が」


 少女が見た方向には一人の女性がいた。

 赤髪短髪高身長美人で、いかにも気の強そうな女性。

 その女性をオレは見たことがある。


「リア!」

「ユーリ、無茶したみたいね」


 壁にもたれかかっていたリアは、オレが目を覚ましたのに気付いたらこちらに近づいてきた。


 リアはオレの幼馴染。パーティーを組まない一匹狼の冒険者。この世の五人しかいないソロランクがSの冒険者だ。

 槍使いで風魔術にも長けている。

 ソロSランクの五人を五芒星と言い、リアは五芒星の中の【槍嵐のリア】と呼ばれている。


「お前が助けてくれたのか」

「そうよ。この子が自分の持ってるポーションを全て使って、アンタを助けてるところを見つけてね。二人を連れて空中移動をするの大変だったんだから」


 ポーションを全て使ったって、低級のポーションでも銀貨一枚はする。

 全てということは少なくとも二つ以上は使ったことになる。あとでその分のお金を支払わないとな。


「そういえば名前を言ってなかったね。オレの名前はユーリ、さっきリアが言ってたから分かったと思うけど」

「は、はい! でもお礼を言うのはこちらの方です。二度も命を救ってくれたんですから。あ、わたしの名前はシーナです。助けていただきありがとうございます」


 命を救ったなんてそれは大袈裟な気がする。オレも救われたんだから一方的にお礼を言われるのはダメだな。


 シーナちゃんがいなければデーモンを倒すことも出来なかったと思うし、死んでいたとも思う。


「こちらこそありがとう、シーナちゃん」

「いっ、いえ、こちらこそです」


 深々と頭を下げるシーナちゃん。

 その姿を見てオレも頭を下げる。


「お礼は済んだでしょ。それよりも、またパーティー離脱したって聞いたけど」

「そうだよ。またしばらくはソロ活動かな。もしかしたらずっとになるかもだけど」


 リアはオレがパーティーを抜けることを離脱と言ってくれる。

 元パーティーメンバーからしたら離脱とか脱退になるんだけど、周りから見たら追放になるらしい。

 だからパーティー離脱と言ってくれると分かってくれている気がする。


「ユーリさんってパーティーに所属していたんですね」

「あ、うん、そうだよ。オレのこと知らないかな? 結構有名だと思うんだけど」


 有名だと思う。悪い方向でだけど。

 まあ仕方ないことだ。

 六回もパーティー離脱すれば悪い噂の一つや二つ出るに決まっている。事実じゃない噂もあると聞いたが、内容は詳しく知らない。


 オレは言うのが少し嫌だったが、いずれ知ることになると思ったからか言うことにした。


「こう言った方がいいかな。【邪魔者のユーリ】って二つ名で呼ばれてるよ」

「【邪魔者のユーリ】? 聞いたことないですね」


 オレの不名誉であり事実でもある二つ名に聞き覚えないというのは珍しい。

 でも冒険者歴が短いのならば知らない可能性があるかもしれないな。


 途中から邪魔者になってしまうから、二つ名に邪魔者をつけるのは正しい判断だと感じる。


「シーナちゃんって冒険者歴どのくらい?」

「えっと、三ヶ月くらいです」


 三ヶ月であの森に入るなんて無謀だろう。


 あの森に入る理由としてはパーティーリーダーやメンバーが余程の馬鹿か、ベテランの冒険者がついていたかのどちらかになる。


 でも前者の場合、ギルドの受付の人達が止めてクエストを受けさせてもらえないはず。だって新人冒険者なのだから。

 後者の場合、ベテランの冒険者がいるから受付の人達は許可を出す可能性がある。


「ソロであの森に入ったの?」

「い、いえ、パーティーで行ったんですが、メンバーと離れてしまってあそこに着いたんです」


 何か隠してるみたいだけど、聞かない方がいいな。


「シーナ。アンタもしかして囮にされたんじゃないの? デーモンの公爵級に出会ったんだから、新人なら逃げるでしょ」


 リア、どストレートに聞くなよ。

 シーナちゃんが聴かれたくなくて隠しているのに、それを聞ける神経が凄い。


 でもなんでパーティーがベテランのいない新人だと思ったのだろう?

 まあリアの思考はオレには理解できないことが多々あったからな。今回も理解しようとは思わない。


「少し話すだけでも楽になると思うから、話してみたらどう?」


 シーナちゃん、やめておいた方がいい。

 もしも囮にされたとか言ったら、リアがその囮にしたパーティーメンバー達を殺しにいくぞ。


「じゃあ、聞いてくれますか?」

「勿論」


 シーナちゃん、覚悟しておいた方がいいよ。

 言葉に出したらオレが痛い目に遭うから言わないんだけど。

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