第24話:館
下に降りていると階段から多くの冒険者が見えた。
多くないか。減っていた時に慣れてしまったのかもと思ったけど、これは明らかに増えているな。
魔物が復活したからっていう理由で多くの冒険者が来たのか? それとも他領で活動している冒険者をスタンピードの対抗として呼んだのか?
まあどっちでもいいが、いずれ人は少なくなるだろう。
「英雄様が来たぞ!!」
「英雄様!」
「英雄ユーリ!」
オレの姿を見た冒険者達がいきなりオレのことを英雄と呼び、賑やかだったギルド内がもっと賑やかというか騒がしくなった。
これは本当にオレが英雄になっているみたいだな。
でもこれは流石に騒ぎすぎなのではないか。
「どういう状況なわけ?」
「魔族を倒したユーリを尊敬しているってわけよ。みんな知らない魔族っていう敵を倒したっていうだけで、尊敬する対象になるってわけ」
確かに知らない敵に挑むのは怖いし、セクスはあんな大量の魔物を操っていた敵に勝ったってだけで褒められる理由には十分か。
セクスがあんなに魔物を操ったっていうのがあるから英雄って言われるんだろう。
英雄って言われるのはむず痒い。それにオレが英雄と言われるのは、倒しただけでリアならもっと早く倒せたはずだから、そんな偶然で英雄と呼ばれるのはちょっとおかしいなと思ってしまう。
オレが英雄と呼ばれるのは偶然オレが戦って、運で勝てたところもあるから、偶然や運が重なった結果の英雄なんだ。
そのことは覚えておこう。
「これ、降りたらどうなると思う?」
「確実に波のようにユーリに押し寄せるでしょうね」
「わたしもそう思います」
階段を降りた瞬間で、全てが決まる。
二階に上がらないのは誰かに言われているからだろう。このまま二階にいるっていうことも候補の一つに入れておこう。
「ユーリ、ちょっと来てもらおうか」
上から聞こえた声はギルドマスターだった。
オレは駆け足でギルドマスターがいる二階のところまで来た。それに合わせてシーナとリアもついてきてくれた。
「こっちに来い」
ギルドマスターについていくと、以前シーナのことについて話したギルドマスター室に着いた。
ギルドマスター室にこんな短いスパンで入るのは初めてだな。
「まず一つ、ギルドから【エターナルオース】に報酬をやることはできない」
「なんでですか?」
ギルドから報酬をもらえないなら、見返りなしでこんな思いをして戦ったってことになるのかよ。
街を守れたのはいいことだが、それはオレ達の力で成し遂げたこと。
ギルドに頼まれてやったことなのに、本当にどういうことなんだ。理解ができない。意味が分からない。
「他の冒険者にはあげるんですか?」
「ああ、もう報酬は渡している。だが、お前達にも報酬はある」
「?」
ギルドから報酬が出ないのに、どこからもらえるというのだ。
それに他の冒険者達に渡せるのならオレ達にも渡せるくらいの金はあるだろう。それにあの魔族の魔石も返してもらったないんだが。
「ここに行けば、報酬を貰える」
地図を渡されたので、それを見てみると記されていたとこは一般人や冒険者とは縁のない場所だった。
その場所はこの街を治めている領主の館。
「ここに行くんですか?」
「ああ、そうだが、何か問題あるか?」
問題あるかって?問題しかないよ! なんで一冒険者が領主の館に行かなきゃならないんだよ! 意味が分からん!
行きたくないよ。そんなところに行くような服も持ち合わせてないし。
いやでもシーナとリアがいてくれれば。
特にリアならそこら辺は気にしないから、少しは気が楽になるはず。
「勿論シーナとリアもですよね、ギルドマスター」
「ん、あ、ああ、シーナは一緒だ。だがリアはその場にいなかったのとパーティーではない、それに戦っていないため除外された」
「え? マジで……」
最悪だ。本当に最悪。
リアがいてくれたら多少は大丈夫だと思ったのに。
無理矢理にでも風邪ひいて休もうかな。
でも確かにオレとシーナだけで魔族と戦ったから領主から報酬を貰うのは二人だけっていうのは納得だな。
だけどわざわざ領主からじゃなくて、ギルドを経由すればよかったのにな。
「そうだ。ちなみに、迎えの馬車がもう来ているぞ」
「え!? なんで?」
いつの間に来たんだよ。
オレはたった今起きたばかりだというのに、何故もう馬車が来ている。
誰かが知らせたのか? それにしては早すぎる気がしなくもないが、ずっと待ち伏せているわけもないし。
「お前が風邪をひいたとかで休む可能性があるからだよ。ギルドでパーティー呼び出しした時も、お前来なかったからな。その旨を伝えといた」
余計なことをしてくれたな。
それにパーティー呼び出しで休んだの一度だけだし、それはガチの風邪で休んだんだから仕方ないだろ。
しかも別に伝える必要ないでしょ。オレはそんな重要なことを休んだりはしないから。
さっきまで風邪ひこうと思ってたのは魔が差しただけだし。
「さっさと行ってこい」
「リア、ついてきてくれないか?」
「無理ね。領主の館に招待されたのはユーリとシーナなんだから」
「そうだよな」
もう逃げ道がないな。完全に追い詰められた。
今逃げ出したらあとでギルドマスターに叱られるだろうし、領主からも目をつけられかねない。
「分かった。行こうか、シーナ」
「はい、行きましょう」
オレは覚悟を決めた。
もう逃げようがないんだ。ここは堂々としておこうじゃないか。そして報酬だけ受け取って、すぐに帰ろう。
それが最適解だ。
「それとユーリ」
「なんですか?」
「これを渡しておく。魔石は領主に渡したが、その他の片眼鏡は返された」
好きに使えってことか。それとも価値がないからいらないってことかもな。
どっちでもいいけど、これが国家を揺るがすほどの物だということが知られないで返されてよかった。
「裏口を使え」
「分かりました」
「じゃあな、行ってこいよ」
「行ってらっしゃい、二人とも」
オレはギルドマスターとリアの見送りを聞いて外へ出た。
ギルドマスターから言われた通り、裏口から出ることで冒険者から見つからずに外に出ることができた。
外へ出ると一人の冒険者から話しかけられた。
「【邪魔者のユーリ】」
「バックスか、どうしたんだ?」
「今回の件、お前のおかげで解決したと言ってもいいくらいだ。だからお礼は言っておく。ありがとな」
驚いたな。まさかあのバックスがオレにお礼を言ってくれるなんて。
でもお礼を言うのはこっちもだ。
「こっちこそ、ありがとうな」
「そう思うなら、酒の一杯でも奢ってもらうからな」
「一杯だけだぞ」
そう言って男同士の約束と呼べなくもない約束をし、オレとバックスは別れた。
「ユーリ様、シーナ様、こちらにお乗り下さい」
裏口を出てギルドの敷地から出たところに一台の馬車が停められていた。
そこにはきっちりとした格好の女性がいて、女性の指示に従いオレとシーナは馬車に乗った。
「ユーリ、わたし、礼儀とか作法知らないんだけど大丈夫かな?」
「構いません。ビーゼジル様はそのような些細なことは気にしないお方です。安心して下さい」
オレが答える間もなく、女性がシーナの質問に答えた。
へえ、貴族って礼儀とかを重んじるお堅い奴らだと思ってたけど、そうじゃない奴もいるんだな。
気にしないことは本当に良かったと思う。
「あっ、ありがとうございます。えーっと……」
「失礼しました。わたくしは執事のキサエルです。以後お見知り置きを」
執事のキサエルさんか。
勝手なイメージだけど、執事って男性だけだって思ってたな。女性の執事もいるんだな。
「よろしくお願いします」
「はい。もうそろそろ館に着きますので、ご準備を」
速いな。
馬車ってこんなに速いイメージなかったんだけど、やっぱり馬とか馬車の質がいいってことなのか?
「あの、服装ってこれでいいんですか?」
「そちらは大丈夫です。お洋服ならこちらで用意しておりますので」
そうか、それは良かった。
だがしかし、オレ達にサイズは合うのだろうか。合っているとしたらいつどこで服のサイズを測られたのかがとても気になるのだけれど。
「こちらが館でございます」
馬車から降り、目の前の景色は凄かった。
大きな門がありその奥にはお城かもと思えるような高く大きい家があったのだ。
「ここが、領主の館……」
「そうです。ではついてきて下さい」
オレとシーナはキサエルさんぼ言われるがままについていき、領主の館へと足を踏み入れた。




