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第2話:出会い

 ギルドを出てから、門へと向かった。


 デーモンとは、闇魔法を得意とする魔物だ。

 魔物の中での強さとしては中の上といったところ。

 デーモンといえば強く恐ろしいとイメージするが、男爵級ならばDランクパーティーなら余裕で倒せる。

 しかも男爵級や子爵級が全体の七割を占めるため、デーモン自体の強さを下げている。

 だが王爵級や公爵級は数が少ない代わりに異常なほどまで強い。デーモンが強いと思われているのはこの王爵級や公爵級がいるからだ。


 デーモンの情報が書かれた紙を読みながら歩く。

 時々周りを見ると、大通りを歩いてるからかいつも通り賑やかだ。


 書かれていたデーモンの情報は大まかな居場所と位だけ。

 正直言ってもう少し正確な居場所の情報が欲しいところだが、まあ他の魔物達を見ればある程度位置は絞れるだろう。


「ジャングの森に居座っているのか」


 魔物は少ないが強力な個体が多い。

 そしてこの街の外れにあるため、もしものことが起こるかもしれない。だからジャングの森は魔物が出てこられないように魔術結界で閉じ込められている。


 まあ、稀にその魔術結界をぶち壊す魔物もいるんだけど。


「ここからジャングの森までは走って三時間、馬車で三十分か」


 馬車を使いたいんだが、あそこまで行ってくれる者は少ない。仮にあったとしてもとんでもない金額を支払わされる。


 一応近くにある馬車乗り場を見てみたが、ジャングの森行きの馬車は一つもなかった。


「今回は徒歩にするかな」


 疲れるから嫌だし道中色々なことを考えてしまいそうで徒歩は避けたかったが仕方がないことだ。

 だから魔術を使ってなるべく早くジャングの森に着くようにする。


 魔術は初級光魔術の〈速度強化〉と〈体力強化〉を自分に付与する。

 オレのジョブは全属性魔術師だが、使えるのは殆どが初級魔術。格好いいのは肩書きだけで、使い物にならないジョブ。

 実力者はきちんと上級や超級魔術を使えてる訳だけど。


 まあ低ランクの魔物なら全然余裕なんだけど、高ランクの魔物相手じゃ使い物にならないだろう。

 サブジョブがあるお陰でついていけるくらいのギリギリ状態だ。

 ただ闇魔術は中級まで使える。その中の一部だけど。


「この魔術を使って、最短十五分。長いな」


 十五分もあったら色々と考える時間になりそうだ。

 デーモンのことでも考えて気を紛らわそう。


「〈速度強化〉〈体力強化〉」


 詠唱し二つの魔術を同時展開した。

 そして門を出て、ジャングの森がある道を進んだ。

 ジャングの森までの道はきちんと整えられているので、進むのは容易い。


 デーモンは魔法を使ってくるから厄介なんだよな。人間と同じ魔術を使ってくれれば楽なのに。


 魔術は人間や亜人しか使えず、魔法は魔物しか使えない。

 だから魔術の研究がいくら進んでも、魔法の研究は絶対に進まない。証明出来ないのだから進むはずないしな。


 そんな風に適当なことを考えながら、さっさと走っていく。


 周りを見ても何もない。

 人も建物も、そして野生の魔物ですらいない。

 魔物は人よりも魔力に敏感だからなのか、ジャングの森周辺には低ランクの魔物は一切寄り付かない。


「着いたか。ジャングの森」


 デーモン公爵級は強いから体力も魔力も極力使いたくない。

 最低限で抑えるため、〈無気配〉を使おう。ついでに〈魔術強化〉を使って質は高めておこう。


「〈無気配〉〈魔術強化〉」


 ジャングの森を見ると、大量の木が生えており中を見通すことができなくなっている。

 その上魔力が溢れ出している。


 魔術師や魔術適正のある者は一般人に比べて魔力に敏感だ。

 だからここに来ると少し気持ち悪くなってしまう。途中から慣れていくが、それまではかなりキツい。

 まだ魔術を使えない魔術適正がある者は、これだけでも眩暈や吐き気を起こしてしまうらしい。


「前に来た時と変わらないな」


 以前来た時は初めてだったため浅いところまでしか行かなかった。

 浅めのところでも強力な魔物ばかりだったことを記憶している。


 中に少しだけ入る。

 すると一気に視界が暗くなり。まるで夜なのではないのかと錯覚してしまう。


 この濃い魔力。先が見えづらい薄暗さ。

 強力な魔物が好む条件が揃っている。


「進むか」


 一歩一歩慎重に進む。

 この魔力に慣れてきたので、木の上に登り飛び移りながら進んでいった。


 〈無気配〉のお陰で魔物に気付かれずサクサク進むことが出来た。


 デーモンは中心地付近にいると思われる。

 魔物が中心地に近づけば近づくほど少なくなっているからだ。

 中心地は開けているため、戦闘には適している。


 奇襲するのだったら森の中の方がいいが、オレは奇襲に長けた魔術はあまり使えない。

 奇襲に長けた魔術の多くは、魔術適性が高くないと使えない魔術だ。


 奇襲に長けた魔術の多くが闇魔術にあるが、オレが使えるのが限定的過ぎて使えない。


 もうそろそろで中心地に着くな。


「ひ、だ、誰か、誰か助けて……」


 微かに助けを求める声が聞こえた。

 オレは急いで声が聞こえた方に向かう。

 そこは偶然か、デーモンが居ると予想した中心地だった。そして今襲っている相手は、そのデーモンだ。


「〈水銃〉!」


 デーモンの標的をオレに変えるため、魔術で攻撃をした。

 この程度の攻撃じゃ、振り向かせるので精一杯だ。だが初級魔術じゃ下手したら見向きもしてくれないかもしれない。


 でも攻撃を食らったことに気づいて、こちらの方を振り向いたデーモン。


 風魔術だったらただ風が吹いただけかと思われたが、ここら辺には川や湖などがない。だから水を当てられただけで攻撃だということが分かったのだろう。


「グガ、ギャァァアア!!!!」


 大声で叫び、オレ目掛けて突っ込んできた。

 とても速い。

 オレが気づいた時にはもう十メートルを切っていた。瞬時に動いたからスレスレで躱すことに成功した。


 そして走って少女の元に行く。

 少女はビクビクしながらオレの方を見た。


「大丈夫か?」


 〈無気配〉と〈無認識〉で一時的にオレと少女の姿を隠す。


 少女は青みがかった銀の髪色をしており、エメラルドのような瞳をしている。

 まさに美少女といった感じだろう。


 少女は剣を持っている。ただもうボロボロの状態。

 これでデーモンから身を守っていたということか。


「は、はい」


 成人したくらいだろう。

 間違えてこの森に入り込んだ。若しくは、仲間に裏切られた、か。


「一先ず、ここに居て。動けるなら隠れて。オレはアイツと戦うから」

「む、無理です! あのデーモン、恐らく変異種です!」


 デーモンを指差して言った。

 確かに昔戦ったデーモンより放っている魔力は多いが、まだ変異種には至っていない。なりかけといったところか。


 変異種とは普通の魔物に比べて桁違いに強いと言われている。

 戦ったことがあるから、それが本当だということをオレは身をもって知っている。


 普通の魔物が変異種になるには多くの魔力を摂取している必要がある。


 ここは魔力の濃い森の中心。つまり一番魔力が濃い場所なのだ。

 そんなところに居座っていれば、変異種になりかけるだろう。

 それに初めて見たら変異種だと勘違いするのも無理はないこと。


「そうか。でも大丈夫。オレは全属性魔術師だから」


 安心させるためにこういうしかなかった。

 嘘はついていないが、ほぼ嘘をついているようなものだ。


「じゃ、サクッと倒してくるね」


 オレは〈無気配〉と〈無認識〉をもう一度少女に使った。

 そしてオレだけ離れ、デーモンに近寄る。


 短剣を取り出し、デーモンの真正面に立った。


「死ぬなよ、オレ」


 そう自分に喝を入れ、デーモンの目に向かって魔術を放った。

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