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第17話:異常事態

 翌日。


「なんか騒がしいな」

「そうだね」


 ギルドに来たが、やけに騒々しい。

 お祭り騒ぎみたいな楽しそうな騒々しさではないようだ。どちらかといえば問題が起きた時のような。


 周りを見渡したところ、リアがいた。

 オレとシーナは歩いてリアの元へ移動した。


「リア、この騒ぎはなんだ?」

「それがね、魔物が姿を消したの」

「魔物が?」


 どういうことだ?

 魔物が姿を消すって。ここでは珍しいゴースト系の魔物が現れて姿を消したということか?


「魔物って全ての魔物がですか?」


 シーナはまだ他の人には敬語を使うんだな。

 オレがいたとしても。


 シーナが言ったことにオレは有り得ないと思った。


 魔物が一斉に消えるなんてことは有り得ない。

 一斉討伐が実施され一時的に魔物の姿をあまり見なくなるということはあるかもしれないが、それはあまり見なくなるというだけでいるのはいる。


 そんなことができる人間なんてこの世に存在しない。


「そうよ。ここら一帯の魔物全てがね。話によると千メートル前後の区域の魔物は全ていなくなったらしいわ」

「それは、本当の話か? 流石に信じられないんだが……」


 千メートル前後ということはあのジャングの森も含まれている。

 野にいる魔物が狩られすぎて消えた、なら分からなくもない。だけど全ての魔物がいなくなったなんて。

 到底信じることができない現象だ。


「周りの様子を見れば信じれるでしょ」

「確かに……。でもなんでだ? 起こった原因は分かっているのか?」


 原因が分かれば解決のために動き出すことができる。

 とは言ってもこんな前代未聞の事件の原因がすぐに分かるとは思えないけど。


「このことがはっきりと分かったのが今日で、一昨日辺りからクエスト先の魔物がいないっていう報告はあったみたい」

「それで野にいる魔物もいなくなったことが確認されたのか」

「そういうこと」


 これが長期間続けばここから冒険者達は去っていくな。

 オレ達もそれを考慮しなければならないか。


 でも魔物は魔力の素である魔素から生まれるはず。

 元々いる魔物の魔素と大気中の魔素が融合して魔物は誕生する。ただ融合する確率もあるらしいし、高位の魔物程新しい魔物が誕生することは少ない。


 魔物が全ていなくなったとすれば、新たな魔物も生まれることはない。


 つまり冒険者がいる理由がなくなったというわけだ。


「あと姿を消す前は魔物が群れやすくなってたらしいわ。ゴブリンやコボルトは勿論だけど、基本群れないウルフとかも群れていたんだって話。それどころか他種の魔物と群れる種族まで現れてたって聞いたわよ」


 仮に群れないウルフ達が群れたのはいいとして、他種族同士で魔物が群れることはない。

 今までで確認されたことのない出来事だ。


「千メートル圏内を探す探索隊のメンバーを募集してるみたい」

「探索隊って、魔物を探すんですか?」

「そうなるね。まあこの感じだと十中八九見つからないだろうけどね」


 ただし見つかる可能性としては二つある。


 一つは消え損なった魔物が残っている。

 ただこれは発見したところでその魔物しか見つからないから、見つけても意味がない。


 もう一つは一箇所、または複数の箇所に消えた魔物が隠れているという可能性だ。

 これは大規模パーティーで行かないと、発見して戦闘になった時対処できない。かといって、大規模パーティーで行けば魔物達に気づかれて発見できない可能性がある。

 だったら小規模パーティーで行けばいいのではと思うかもしれないが、見つかった時に下手したらパーティー全壊の可能性があるため実行に踏み切ることが難しい。


 冒険者だって人間なんだ。

 自分の命がなくなる可能性の高いところに飛び込むなんてする奴は少ないだろう。

 死にたがりのヤバい奴か考えなしの馬鹿な奴くらいしか行かないと思う。


「でも見つからないとしたら、ここから冒険者達がいなくなるんじゃないんですか」

「そうなるね。早ければあと二日くらいでここを去る冒険者も現れると思うよ。遅くても一週間ほどでほとんどの冒険者はいなくなるだろう」


 冒険者は情報が伝わるのが一般人より早く、一般人よりも正確だ。

 その分判断力も早い。判断が早いというよりは見切りが早いと言った方が今回には合っている。


「アタシは四、五日くらい待つつもりだけど、二人はどうするつもりなの?」

「わたしはユーリについていくって決めてます」


 シーナからの信頼が厚いな。

 嬉しいことだが、選択が重要すぎて決められないんだけど。


「オレは一週間は待とうかなって思ってるよ。長年ここで活動してきたし、一週間程度なら生活できる金は持ってるから、薬草採取でもしながら待っとこうかなって」

「でもいいの?」

「ん? 何が?」


 オレの予定を言ったら、急にリアが意味深なことを言ってきた。


「魔物が急に現れたりしたらどうするの? ここには知り合いとかもいるんでしょ?」

「魔物が急に現れるって、そんな可能性低いで……」


 いや待てよ。

 リアからゴブリンの巣のこと聞いた時思ったじゃないか。

 魔物を操れるのは魔族だけって。


 魔族なら魔物を自由自在に操れるんだから、どこかに消えさせてまた現させることだって可能かもしれない。


「どうかしたの?」

「いや……あくまで憶測の段階だけど、魔族が関わってるんじゃないかって思って」


 魔族は衰退しているはずだ。

 そんなことがあったら騒ぎになるどころじゃないぞ。


 魔族はこちらの言葉を話せる。だから知能はそれなりに高い。

 けれど強くないらしい。何故なら魔王のスキルと思われる効果で強さが数倍ほど引き上げられるらしい。


 まるで【育成者】の特殊能力を使っている状態みたいだ。


 魔族が仮にスキルを持てたとしよう。

 それでも同じスキルは存在しない。

 もしかしたら魔族だから人間とは別で同じスキルを使えて存在もしている。もしくは【教育者】の上位互換のスキルがあるのかもしれない。


「そういう考え方もあるのね」

「でも魔族なんて現れるはずないだろうけどな」


 魔族を見たことあるのは長命な亜人や老いた人間くらいだろう。

 オレ達からすれば魔族がどんな姿をしているのかが分からない。だから戦いようがないんだよな。


 どうしたものか。


「それもそうね。でも魔族が現れたとしてもアタシが一発でぶっ倒すから大丈夫だけど」

「ははっ。頼もしいな、リアは」


 確かにリアがいれば魔族も倒せるだろう。

 なんたってソロランクSの化け物なんだから。


 まあ魔族が現れるよりは一斉に魔物が復活して街を襲う方が確率的には高いと思うけど。


 どっちでもいいか。オレはシーナを守ることを第一に考える。そしてアイツらに追いつくことを考えればいい。

 それがオレの一番の目標だ。


「ユーリとリアさんは参加しないんですか、探索隊」


 探索隊か。

 正直言って参加するメリットがないんだよな。

 それにオレがいたら場の雰囲気が悪くなるだろうし。

 他パーティーと組むタイプのクエストはなるべく避けてきた。

 どうしても【邪魔者のユーリ】という二つ名がついてきてしまい、他パーティーから邪険にされてしまう。


 だからパーティーメンバーが他パーティーと組むクエストをする時は、オレは参加しないことにしていた。


「オレは性に合わないんだよね」

「性に合わないんじゃなくて、遠慮とかしてるんでしょ」

「まあないとは言わないけどね」


 ないわけじゃない。でも性に合わないのも事実だ。


 空気が悪くなるとオレも相手も嫌になってしまう。

 それに空気が悪いだけで、実力が発揮できなくなってしまう。その上微かにできるかもしれない連携も確実にできなくなってしまうのだ。


「アタシの場合は、他人がアタシについてこれないから組む気がなくなるってだけ」


 そりゃあリアの実力と同等の奴なんて数少ない。

 それこそ五芒星のメンバーくらい。

 パーティーランクSの奴らはパーティーとして完成しているため他人を入れても邪魔にしかならない。


「そうなんですね。じゃあ魔物が見つかるまではどうするんですか?」

「ああ、オレは旅の準備をしようと思ってるよ。シーナが行ってもいいって言うならだけど」


 旅先は王都以外の冒険者活動ができる場所だ。


 オレはまだ王都に行く資格はないと思っている。

 王都に行くためには最低でもBランクになってからじゃないと、今までパーティーを組んだ奴らに合わせる顔がない。


「わたしは大丈夫ですよ」

「そうか。それなら食料や旅に必要な物の調達にでも行こうか」

「そういえば、ユーリって他場所を拠点にして冒険者活動したことあったっけ?」

「ううん、ないけど。護衛クエストで遠くに行ったことはあるから、ある程度の勝手はわかるよ」


 護衛クエストとは商人などについて行き、いざという時に護るというクエストだ。

 いざという時とは、端的にいえば魔物や盗賊などに襲われた時、それを倒すこと。


「それならいいわ。でも気をつけた方がいいことが二つあるから、これには注意しておいた方がいいわよ」

「それはなんなんだ?」


 気をつけた方がいいことって、旅をしていることか?

 それならわかるって言ったんだけどな。


「活動先のことでだけど、一つはそこ独自のルールみたいなものがある場所があるから、そういうところには注意した方がいいわ」

「独自ルールか」


 独自ルールってことは、暗黙のルールが存在しているってことになる。

 ここにはそんなのはないが、他の場所ではそんなルールがあると聞いた覚えがあるな。


 確かに。

 そういうところには気をつけておかないと痛い目見ることになりそうだ。


「もう一つは、ユーリだからこそなんだけど。冒険者達の間では、たとえ顔を知らなくても特徴は知られているってこと」

「ああ、そういうことか。オレの特徴と二つ名が知られているってことになるわけか」

「そういうことね。冒険者は情報通だから」


 冒険者は冒険者内の話はどんな凄い情報屋よりも詳しい。

 つまりオレには一生【邪魔者のユーリ】という二つ名が付き纏うから、それには注意しておいた方がいいっていうことか。

 ありがたい忠告だな。


「まあ、今日のところは戻ろうか。探索隊がなんらかの情報を見つけるまでやることはなさそうだから」

「そうね。旅支度でもしながらゆっくり過ごそうかしら。じゃあ先に失礼するわ」


 オレとシーナが返事をする前に去っていってしまったリア。


 相変わらずいなくなるのは早いな。

 それこそ魔術でも使っているんじゃないかってくらいに。


「わたしたちはどうしますか?」

「うーん。まあ今日のところは一先ず自由行動でいいんじゃないかな。それとも魔術の練習でもする?」

「はい! ぜひ魔術の練習したいです!」

「そうか。ならギルドの地下訓練場で練習しようか」

「えっ、訓練場じゃないんですか?」

「ああ、うん。人が少ない地下の方が集中できるでしょ。さっさと行って始めようか」


 そう言って地下訓練場へと足を運んだ。

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