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第14話:初クエスト

「ミンスさん。このクエストお願いしていいかな」

「はい。薬草採取のクエストですね。了解しました」


 オレ達はギルドに着くと素早くクエストの紙を取り受付へと向かった。

 

 探す時にクエストをざっと見たけど、魔物討伐クエストが少なかったな。

 昨日とかに一気にクエストがクリアされたのかもしれない。


 良かった。今の時間帯だとやはり冒険者は少ないな。

 一日中呑んでいる印象のあるバックスもいないというのは、とてもラッキーなことだ。


 こんな早くにギルドに来たことがないから、ここまで静かだと逆に驚くな。

 昼から夜にかけての時間帯は賑やかというよりは騒がしいくらいのギルドがここまで静かになるとは。

 ギルドは朝人が少ないから次からはクエスト受注を早めにしに来よう。


「行ってらっしゃませ」


 ミンスさんともあまり会話をせずにすぐにギルドから出て行った。


「ユーリさん、薬草って何の薬草ですか?」

「ああ、今回はポーションの材料になる薬草じゃなくて、かすり傷とかを治す塗り薬用の薬草を集めるクエストだよ。薬草はこんな感じのやつ」


 薬草の大まかな絵が描かれた紙を見せた。


「これは似ている毒草があるから気をつけてね。触るのは大丈夫だけど、もし間違って使ったらヤバいことになるから。似ている毒草との違いは葉の先の形。薬草の方は先が丸くて、毒草の方は先が尖っている。それくらいしか見分ける方法がないからよく見てね」

「はい、分かりました」


 薬草採取とはもう何年振りだろう。

 初めて組んだパーティーで何度かやったくらいだ。


 あの時は同じクエストで薬草と毒草の違いが分からず大変な思いをしたんだったな。

 結局は薬草に詳しい冒険者に聞いてから採取したんだっけ。そして三日かけてクリアさせたんだよな。

 今となれば懐かしい思い出だ。アイツらは今どうしているんだろうな。他国に行ったという噂を聞いた後は全然情報が来ないからな。

 まあ元気にやっているだろう。


「でもどこで採取するんですか?」

「まあ決まっているスポットがあるんだけど……特別にオレだけが知っているところに案内するよ」


 薬草がある場所はこの紙に記載されているのだが、別にここにだけしかないというわけではない。


 オレは昔見つけたことのある薬草採取に適した場所に行くことにした。


「あそこは色々な薬草があるんだけど、その分毒草もあるから注意してね」

「はっ、はい! 注意します」


 一種類の薬草には必ず一つ以上の毒草が一緒に自生する。

 今回行く場所は色々な薬草があるため、それよりも多くの毒草が自生している。


「ここだよ」

「えっ、意外と近いですね」

「そうでしょ。ちょっと脇道に行っただけなのにこんなところがあるとは誰も思ってないからね」


 着いた場所は人気のない裏通りをそれたところにあるから、あまり気づかないらしい。

 久しぶりに来てみたが、雑草もなく綺麗に薬草と毒草だけが自生している。


「綺麗ですね」

「そうでしょ。薬草とか毒草がこんなに綺麗に見れるところなんて滅多にないから」


 そもそも薬草や毒草は花を咲かせない。緑一色に見えるが緑でも種類が違うだけで全く違うように見える。

 色々な薬草毒草があるからこそ綺麗に見えるのだろう。


「じゃあ採取を始めるよ」

「どこら辺に生えているんでしょう?」

「こっちの方だね」


 オレは今回の目当ての薬草がある場所へシーナちゃんを案内した。


「ここら辺だったはずだけど……あったあった。これが薬草で、これが毒草」


 見本として近くにあった薬草と毒草を取ってシーナちゃんに見せた。

 シーナちゃんは最初に薬草をじっくり見て、次に毒草をじっくりと見た。


「確かに。葉の先が違いますね」

「そうでしょ。新人がこのクエストを受けると苦労するんだよね。他にも薬草のクエストがある中でこれを選ぶ子達は運がないと言ってもいいくらいだから」


 そう。オレは運がなかったのだ。

 だって似た毒草があるなんて記述どこにもなかったんだから、あのクエストを出した奴はそうとうの卑怯者だな。絶対に。


「そうなんですね」

「シーナちゃんは薬草のクエストって受けなかったの?」

「はい。ジェイクが「冒険者は魔物討伐以外やらないんだ」って言って、その手のクエストは一切受けなかったんですよね」

「はは。確かに、ジェイク君なら言いそうだ」


 冒険者は確かに魔物を討伐するっていうイメージの強い職業だ。だけど実際は護衛や薬草採取、探し物の手伝いなど仕事は色々とある。

 護衛クエストを専門にする冒険者は結構な数いる。薬草採取や探し物の手伝いなんかは駆け出しの新人冒険者のためのクエストって感じだけど。


「じゃあ早速始めようか」

「頑張ります!」


 そして最初はシーナちゃんが分かりづらいのか一度だけ確認しに来て理解したようだ。

 そのあと話をしながら薬草だけを取り続けた。


「こんなものでいいかな。シーナちゃんはどのくらい取れた?」

「これだけしか取れませんでした」


 シーナちゃんがオレに見せてきた薬草の量はオレの三、四倍の量はあった。

 シーナちゃんのこれだけは普通に考えたらめちゃくちゃ取れてるんだけど、何か似たようなことしたことあるのかな?


「シーナちゃんって薬草採取の経験はないんだよね」

「はい。でも家の手伝いで村の近くの野草を取ってました」

「それなら納得だな。でもその量は驚きだ。そこまで取れるとは思ってもいなかったよ。凄いね、シーナちゃんは」


 シーナちゃんにも意外な才能があったな。

 魔物との戦いでももっと才能を発揮するだろうから、オレとの才能の差が浮き彫りになるんだろう。

 オレのせいでシーナちゃんを縛り付けるようなことはしないようにしなければ。


「いえ、これは慣れなだけであって、そんな誉められるようなものではないですから」

「ううん。凄いことだよ。慣れってことはそのくらいやったことがあるってことでしょ。それは褒められるべきものだよ」


 慣れるまでには時間が必要だ。慣れるくらい時間を費やしたことだろう。たとえそれが家の手伝いだとしても。


「ありがとうございます。えへへ」


 ちょっと照れた感じで笑ったシーナちゃん。


 可愛いな。やはり結構冒険者をやってきたからか、可愛いと思っても恋愛対象とかとしては見れないな。

 まあ元パーティーメンバーやリアとかも恋愛対象に入らないんだけど。


 オレってこんなんだからモテないんだろうな。

 女性を基本的に恋愛対象として見ないから。


「笑ってくれてよかったよ」

「?」

「シーナちゃんってなんか遠慮してる感じがあったからさ。パーティー組んだんだからもっと仲良くなりたいって思ったんだよね。だから笑ってくれた時、嬉しかったよ」


 パーティーに遠慮なんてものは必要ない。

 あのパーティーにいたからパーティーメンバーに遠慮することを覚えてしまったのだろう。洗脳と言ってもいいかもしれない。


「シーナちゃん。オレに対して遠慮とかしなくていいから。オレのことも呼び捨てでいいよ、ユーリって」

「え、えっと……ユーリ。でいいですかね? わたしのこともシーナって呼んでいいです」

「し、シーナ」


 うん。改めて女の子の名前を呼び捨てで呼ぶと照れるな。

 リアや元パーティーメンバーの女の子達は平気で呼び捨てしてたから違和感はなかったんだけど。


「はいっ! ユーリ!」


 シーナちゃん……じゃなくてシーナは慣れるのが早いな。

 オレもさっさとなれるか。こんなので照れるなんてオレらしくない。


「シーナ。じゃあ敬語もなしね」

「はい」

「それ敬語」

「分かり……分かった。改めてよろしくね、ユーリ!」

「よろしく、シーナ」


 そうしてギルドへと戻った。


###


「ミンスさん。薬草取りすぎちゃったんだけど、大丈夫かな?」


 オレは袋二つをカウンターに置いた。

 両方とも薬草が詰まっている。


「た、確かに凄い量ですね」

「買い取ってもらえるかな?」


 こんな量の薬草を持ち込んだ冒険者なんているのだろうか。

 いたとしたらそいつもシーナちゃんと同じ薬草採取の才能があるってことになるな。


「はい、大丈夫ですよ。査定に少し時間がかかりますけど、よろしいですか?」

「お願いするよ。ありがとう」


 やっぱり時間がかかるか。

 袋二つではあるが、サイズが大人の男性一人が入れるくらいのサイズなのだ。

 そう考えればシーナちゃんがどれだけの量の薬草を採ったかがわかる。


「す、すみません。ユーリさん」

「ん? なにが?」


 オレが査定を待つためにシーナちゃんのところに戻ると、いきなり謝られた。


「わたしが多く採ったから時間がかかるんですよね。ユーリにもやることがあるのにこんなことのために時間を割かせちゃってますから」


 そんなことで謝ってきたのか。

 ここは少し説教をしておいたほうがよさそうだ。


「シーナ、まず敬語はダメだよ」

「あっ、すみま……ごめんなさい」


 謝り癖がついている感じがする。それに加えて謝る時は敬語になってしまっている。

 他人相手ならそれでいいかもしれないが、パーティーメンバーであるオレに対してまでその口調は改善させたほうがいいな。


「最初に言っておくけど、オレはシーナに対して怒ったりはしてないよ。多く採れたならその分多くのお金がもらえるって考えればいい。それに待ってる時間、シーナと話せるなら十分有意義な時間だとオレは思う。だから謝ったりしないでいいから。オレはシーナに対してこう思うよ。ありがとうって」


 今オレが思ったことを全て伝えた。

 これでわかってもらえるだろう。


「そう思ってくれて嬉しい。わたしもユーリと話すの好きだよ」


 良かった。オレと話すのが嫌とか言われたら傷ついて立ち直れなくなってたところだったよ。

 でもこれでまた一歩、シーナに近づけた気がするな。


「ユーリさん。査定が終了しました」

「はい、今行きます。ちょっと行ってくるね」

「待ってるよ」


 オレはシーナちゃんに一言伝えて席を立ち受付に行った。


「トータルで銀貨二十枚分です」

「ありがとう、ミンスさん」

「いえいえ。それにしても仲良くやっているようですね。今回は一線を引いてないように見えますから」

「? どういうことですか?」


 今回は一線を引いていないって言い方、今まで引いていたように見えていたというのか?

 そんなつもりはないんだけどな。


「別れが来るのを分かっているからか、本当のところには踏み込ませないようにしていたようでしたので。今回は本当に楽しそうにしていて良かったです。初めの頃みたいですね」

「はは。そうかも。それもこれもシーナがいるおかげですかね」


 ミンスさんからはそんな風に見えていたのか。

 オレが冒険者になった頃からいたから色々と見られていたのだろう。

 でも今回はそういう風に見られるようなパーティーを組めたということか。良かったな。


「じゃあ失礼します」

「また来てくださいね」


 受付から戻ったオレは、シーナに報酬が入った袋を見せた。


「今回の報酬。取り分は二割オレ、八割シーナね」

「えっ!? そんな多くもらえないよ」

「今回はシーナが活躍したんだから、活躍に見合った報酬を受け取るのは当たり前だよ」

「そ、それなら。ありがたくもらおうかな」


 今回は間違いなくシーナが活躍したと言っていいだろう。

 オレは薬草採取のクエストが苦手なので、シーナがいたおかげで予想の数倍早く終わることができた。


「じゃあ、このあとどうする?」

「えーっと、武器屋に行きたいんだけど、ついてきてくれない?」

「武器屋……いいよ。おすすめの武器屋紹介しよか?」

「はい! ぜひ!」


 そうして報酬を分け、二人で武器屋へと向かった。

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