第10話:解決
シーナちゃんの記憶
「や、やめましょうよ」
「うるせぇ! 俺様に逆らうな!」
ゴッドドラゴンズがジャングの森に入ろうとするところをシーナちゃんが止めようとした。
するとリーダーであるジェイク君が大声でシーナを叱る。
シーナちゃんがまともで良かった。
ここで止めるのは正しい選択だ。なんだったらシーナちゃんだけ森に入らないっていう選択肢もあったんだが、まあ依存していた部分もありそうだし仕方ないか。
「うっ……すみません」
パーティー内で上下関係が確立されている。
パーティーは平等。強いて言えばリーダーがリーダーして上の立場があるくらい。
でもそれを乱用してはいけない。リーダーは責任を負う立場なだけであって、横暴に振る舞っていいわけではない。
このパーティー、このまま続けていたら死ぬな。それも確実に。
「さっさと行くぞ」
ちょ、なんで仲間は止めないんだよ。
このパーティー、確実にリーダーのジェイク君に従うクソパーティーになっているな。
その後、偶然か魔物に出会わずに進んでいった。
そうしてオレとシーナちゃんが出会った開けた中心地に着いた。
「チッ、なんだよ。魔物に全然出会わねえじゃないかよ! クソがっ!」
いや、良かっただろ、出会わなくて。
もし出会ってたら死んでてもおかしくないんだから。
……? でも流石にそれはおかし過ぎじゃないか? オレが入った時は異常なくらい多く魔物がいた。
魔術を使って魔物が避けているんじゃないか?
魔物が避けるようにする魔術……〈回避結界〉か。
あれは質は悪くなるが初級魔術に一応分類されるからそれを使ったのだろう。
魔術を使ってくれていたのだとしたら、その仲間はジェイク君だけには優しいな。
シーナちゃんに対してはクソみたいな態度をとっているから、オレにとっての評価は変わらないけど。
「シーナが遅いから、出会わなかったんだぞ!」
「す、すみません」
いや、遅いなら魔物の餌食になりやすいから逆に良い点だと思う。
まあそれでシーナちゃんを獲物として扱っていたのならこの場で殺すことも厭わなかったんだけどな。
「こんな開けた場所に魔物がいるはず……!? で、デーモン!」
おお、馬鹿でも魔物の種類は知っているのか。
冒険者の常識である行方不明届は知らないのに、初心者が知る必要のないデーモンは知っているのか。
やっぱり都合がいいな。
「に、逃げましょ、えっ? 痛っ」
シーナちゃんが逃げることを提案しているといきなりシーナちゃんが倒れた。
そう、シーナちゃんから見ればそう見えるが、明らかにこれは押されている。
「ははっ、じゃあな、シーナ」
「えっ、待って!」
「せいぜい俺様達を生き残らせるために協力してくれ。恩返しとしてな」
恩返しって、まずは恩を売らないと返してもらえないぞ。
お前みたいな奴が恩を売ったとは到底思えないんだが。
「早く逃げるぞ!」
「待って! 待ってよ!」
シーナちゃんのことを振り返ることもせず、走って逃げ去った。
そこで魔道具が停止し、シーナちゃんの記憶が終わった。
「うっ、うっ……」
「シーナちゃん、大丈夫?」
シーナちゃんは必死で泣くのを我慢している。
そりゃあそうだよな。仲間に裏切られ、それを改めて見させられたんだから。
女の子を泣かせることが最低だとは思わない。だけど正しい行いをしている者を泣かせることは最低だと思う。
しかもそれが弱者だからという理由で。
「シーナちゃん。少し休んでていいよ」
「は、い。ありがとうございます」
オレはシーナちゃんの元へ行き、魔術で眠らせた。
「〈睡眠誘導〉」
シーナちゃんはすぐに眠る。
この魔術はあくまで眠気を促すだけ。その魔術でここまで寝てしまうということは、疲れが溜まっていたのだろう。
「なあ、ジェイク君?」
「な、なんだよ」
オレがジェイク君の方を向き名前を呼ぶと、少し怯えているようだ。
笑っているだろう。オレの表情は。でもオーラが怒りで満ち溢れている。だから怯えてしまったのかもな。
「これを見てどう思う?」
「どうって、これはシーナが捏造した記憶だろ? だから俺様達は悪くない」
捏造した記憶、か。
この魔道具は記憶とは言っても、確実なものを引っ張ってくる。
本当の記憶。捏造したり改変された記憶は浮かび上がってこない。そういう場合は記憶なしと判断され魔道具が発動しないのだ。
「そうか、確かにそうかもな。ちなみにこれは改変や捏造された記憶は映らない。そのことは覚えておいた方がいいよ。で、君達の言い分をもう一度確認しておきたい。シーナちゃんの記憶の間違っている点を教えてくれ」
「いいぞ、教えてやる」
ジェイク君が言った記憶の違いは主に三つ。
まずはシーナちゃんを強制して森に入れてないということ。
次にシーナちゃんを押したりしていない。勝手に自分で転んでしまったということ。
そしてシーナちゃんが「先に行って」と言ったからシーナちゃんを置いて逃げたということ。
「じゃあ、ジェイク君が今言ったことを意識してあの魔道具に触れてみて。それが事実じゃない場合は反応しないはずだから」
「事実だ! 嘘ついているみたいに言うな!」
いや、シーナちゃんの記憶が正しいから反応したんだ。今言ったことが合っているはずがない。
そこまでして嘘を突き通すなんて醜いにも程がある。
嘘はいつか暴かれるんだから。
そうしてジェイク君は魔道具に触れる。
でも全く反応しない。
「はあ? これ壊れてるんじゃないのか?」
「そんな訳ないだろ。さっきシーナちゃんが触れた時反応したんだから」
やはり馬鹿だ。
なぜ先程使えた魔道具がすぐ使えなくなったという発想に至るんだ。
「だったら魔力が無くなったんだ! そうに決まっている」
「ギルドマスター、魔力切れですか?」
「いいや。十分にあるぞ」
一回で魔力切れを起こすんだったら不良品だろう。
そんな不良品をギルドが使うわけがない。
「ジェイク君。君、醜いよ。負けず嫌いは別にいい。でもこういう場合は負けず嫌いとは言わない。ただ無様な姿を晒しているだけだ」
「なっ! 殺す! 俺様をコケにしやがって!」
「ギルドマスター。判決を」
オレはジェイク君の足掻きを無視して、ギルドマスターに判決を下してもらうよう促した。
「判決は、シーナを除くゴッドドラゴンズメンバーから冒険者資格を剥奪。そしてリストに載せてもらう」
ギルドのリストに載せるとは一生冒険者になれないということ。
これは全ギルドに情報を渡され、どこのギルドに行っても冒険者資格をもらうことはできなくなる。
「おかしいだろ! なんで俺様達が!」
「なあ、ジェイク君」
「なんだよ!」
「唯一だけ君達を救ってあげる方法がある。それはね、死んで神に許しを請うことだ。つまり死ねばいいのさ。だから……」
「ユーリ、やめておけ。コイツらはもう冒険者じゃない。ただの一般人に手を出すことは許されない」
止めをさしたな。
ギルドマスターの言ったことを覆す方法は無いと言ってもいい。少なくともコイツらが覆す方法は絶対に無いと断言できる。
「な、な、舐めんじゃねぇ!」
ジェイク君が剣を取り出し、オレに向かって突っ込んできた。
「人生終了だね」
オレはそう言って、大人しくジェイク君に刺された。
「は、はは、ははははは! やった! やったぞ!」
「そうだね、やっちゃったね。ギルドマスター。お願いします」
「ああ、分かった。ジェイクを取り押さえろ!」
「「「はい!!」」」
観客である冒険者達が急いでジェイク君及びゴッドドラゴンズのメンバーを拘束した。
「〈回復〉」
オレは光魔術を使い傷を治した。
「無茶をするな」
「ははっ、大丈夫ですよ。もう治ったんで」
「そうか」
「後のことは任せてもいいですか?」
「分かった。で、どうするんだ?」
「シーナちゃんが起きるまで近くにいます」
そう言ってシーナちゃんを抱き抱えギルドを去った。




