中央山岳地帯ジュノ、05貧しい村に来たお客が怒った
「昨日は見苦しい所を見せ、誠に申し訳ない・・・」
「いえ、我々に謝るのではなく、被害にあったノアの家族に・・・」
隊長は気丈に振る舞っているが、俺達は我慢の限界に来ている。
結局、バウルの竜騎士装備が着れない事で、出撃が遅れ農作業をしていたノアさんが喰われた。
バウルはそんな失態をしたにも関わらず、晩飯はきっちり3人前を平らげ、酒樽も半分空けた。
これで大蛇討伐成功となったとしても、両手を上げて喜べない心情だ。
そんな不穏な空気の警備小屋に、あの旅の格闘家がひょっこり現れた。
「なあ、ちょっといいか?」
「なんでしょう」と、帽子を忘れたカールが対応していると、格闘家は大蛇の巣を見つけたと言う。
「それは本当か!」
「別に、這った跡を追って山に入ってったら巣までたどり着いただけだ。普通にいたぜ、デカいのが、あと」
「えー!巣って、山のどの辺ですか!」
格闘家の指差す地図を見て、カールが頭を抱える。
その場所は、村の中でカールの家が一番近かった。
それにしても、旅の格闘家は余程竜騎士のチート技が見たいらしい。
最後何か言いかけた気がするが、すぐにドラゴンドライブという技が早く見たいぜとか、技のスピードがどうとか、威力はどれくらいとか独り言でブツブツ言っている。
隊長と俺は、顔を見合せバウルへ詰め寄る。
「バウル殿!」
バウルも俺達の言いたいことはわかってるはず。
「よ、よし、わかった。討伐に出掛けよう!とりあえず装備を着けるので・・・すまないが手伝ってくれないか?」
「おい、おっさん!そんなもんいいから大槍持って出発するぞ!」
旅の格闘家が、俺達の思ってることをストレートに代弁してくれた。
「な!き、貴様、無礼だぞ!」
「いえ、バウル殿、こちらから見てもその装備は貴方のサイズに合っていません・・・ですからここは」
「隊長殿も、な、なんてことを言うんだ!」
憤慨するバウルだが、ドン引きしてる俺達は擁護に回りたくもないし、なんなら装備を着けるのを手伝いたくもない。
「噂に聞きし竜騎士なんだろう?大蛇ごとき爬虫類、敵じゃねーだろ?」
旅の格闘家が煽る。
「そ、そうだが・・・万が一を考えてだな・・・」
「なんだ、竜騎士ってのは防具着てねぇと、あんなちいせぇ蛇1匹倒せねぇのか」
「貴様!竜騎士を愚弄するきか!」
「別に、グズグズ言ってるから、王都の竜騎士共も大したことねぇなぁって言ってんだよ」
「貴様!言わせておけば、他の竜騎士までも愚弄するきか!よし、わかった。竜騎士の秘技、見せてくれるわ!」
旅の格闘家が煽りに煽ったお陰で、やっと大蛇討伐に出発してくれた。