第2話目(前半)
青年はおじさんの元で住み込みで働く事になった。
いずれ住む所も見つけてくれあげようと優しく約束まで貰っていた。住む所に苦労していた青年は保証人の話をすれば躊躇いもなくすぐに『いいよ』と言ってくれた事で青年にはおじさんの事を心こら信頼するようになっていった。
その上養子にならないかとも言ってくれた。
そんなおじさんの名前は野梅 秀男。青年は野梅社長と呼ぶ様になり次第に仕事を手伝うようになっていった。
次第に仕事に慣れ始めた頃、野梅社長から復讐目標の会社の名前と社長の名前、そして1人娘の名前を知った青年は野梅社長に「一度だけ、一度だけでいいので奴らを見て来ていいですか?」と頼みこんだ。
野梅社長は渋々ながら「騙されちゃいけないよ?」と青年に優しく囁いた。
そして青年は大きな会社『清水物産』の入口が見える物陰からジッと覗いていると、高級車から降りて来た男、清水物産社長『清水 善治郎』らしき男をその目に焼き付けた。野梅社長の様にふくよかな体型でいつも笑顔でいる姿とは違い、スマートな体型だが厳しい表情が印象的な男に見えた。
青年の中で『誰のせい?』とぼんやりしたものが心の中で鮮明になった。手は無意識に拳を作り血が滲んでいた。
清水善治郎の姿を見た事により人物を復讐対象と明確に意識するようになり、1人娘の姿を見る前から憎しみが一層強くなっていた。
青年は次に清水善治郎の娘である『清水 彩夏』を探しに向かった。
偶然にも青年と同じ年齢の清水彩夏は大学へと通っていた。自分とは関係の無かった場所。
普通の人生…………普通家庭なら自分もこの場所に通っていたのだろうかと思いもしたが、父のあの汚れた作業服姿に母の顔も知らないせいで想像は出来なかった。
何処にいるかもわからない。勢いに任せて野梅社長の元から飛び出す様に出てきた青年は姿も知らない相手を探す為、大学内を彷徨った。
大学に通う生徒達は自分とは違い何も失わずに生きているのだと思い知らされた。
そうして彷徨っていると匂いに誘われ食堂へと着いた。
時間も昼過ぎとなっていたせいか、まばらにテーブルで食事をしている学生や数人で楽しそうに座っている学生が見えた。ここに清水彩夏がいるかもと奥に向かった。進むと先で1人の綺麗な女性に目が止まった。清楚で優しそうな女性は友人だろう2人の女性と一緒に座っていた。
青年がその女性の座っているテーブル近くまで来ると、その女性達は立ち上がり食堂の出口、青年の方へと向かって来て、そしてすれ違った。
何気に彼女たちが座っていたテーブルをみると、その綺麗な女性が座っていた所に一枚のハンカチらしき物が置かれていた。忘れ物か…………そう思った青年はハンカチを持ち振り返り声を掛けた。
「すいません、あの、忘れ物ですよ?」そう言ってハンカチを差し出すと。
「あぁ、ありがとうございます。でもいいんです。」
「え?」
「汚れてしまったのでいらないですから」
汚れたからいらない?
その言葉を聞いてすぐに青年は野梅社長が教えてくれたあの理由を思い出した。
『小さな汚い会社なんて恥ずかしいからいらない』
青年が何も言わず固まっていると、待っていた友人らしき女性から声が聞えた。
「彩夏~何やってんの?時間遅れちゃうよ?」
「うん。今行くから~。」
彩夏と呼ばれた女性は青年に一礼して足早に友人へと向かって行った。
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