第1話目(前半)
たまにはこんな文面で書いてみるのもいいよね?
少年は泣いていた。それは父親が目の前に浮いていたから…………
小学3年生になった少年は父が死んでいるのがわかった。
頭の中で「何で?どうして?」が永遠の様に繰り返えされた。泣きながら息をしているだけで精一杯だった。
どのくらい時間が過ぎたのかもわからない。喉が渇いているのかお腹も空いているのかもわからない。
そんな少年にそっと肩に手が置かれた。
振り返ってみればそこには少年にとって見覚えのあるおじさんがいた。
「坊主…………悪かったな。俺がもっと早くにお前の父親に会えていれば…………」
そう言って少年を抱きしめた。
少年は父とこのおじさんがよく家の前で会っていたのを家の中から見ていた。父はいつもこのおじさんに頭を下げてお願いしている様だった。
学校から帰って来た時そのおじさんが家の前で待っていて少年を見つけて飴をくれた優しいおじさん。
少年は物心がつく頃には母親はいなかった。父に「どうして僕のお家にはお母さんがいないの?」と聞いても父は何も教えてくれなかった。
父が死に警察の人が沢山来た。少年は優しそうな女性に連れられ父が死んだ家に戻ってくる事は無かった。
それから10年が過ぎた。
少年は青年となっていた。施設で育ち18歳の誕生日を境に社会へと放り出された。
頼れるのは自分だけになった。施設の職員が偽善的に話してくるが保証人の話を持ち出せば遠回しに断られ、施設で貯めたお金を使い安い泊まれる所を転々としてバイト生活をするしか方法が無かった。
惨めとしか言えない状況に青年はいつも怒りを感じていた。『誰のせいだ?』
自分にはどうする事も出来ないこの状況に追い込んだのは『誰だ?』
父だとはどうしても思えなかった。父は無口だったが貧しいながらも父が愛情を持って接していてくれたと心から感じていた。母親は死んだのか?それとも父と自分を捨てていなくなったのか?どっちなのかわからないが、それでも母親のせいだとも思えなかった。
特定の住居を見つけれないままバイトの生活を続けていると、建設現場のバイトで見覚えのあるおじさんに見つけた。
青年はこのおじさんなら自分がこんな状況になった原因を知っているのでは?
そう思ってしまった。
無我夢中で見覚えのあるおじさんの前に立ち塞がり青年は自分の苗字を大きな声で伝えて、父の名前を叫んだ。
「…………あぁ、大きくなったね。あれからずっと心配していたんだ。よくおじさんの事を見つけてくれたね。何か困っていないかい?」
青年は俯き、泣きながら「教えてください!俺は誰のせいで…………誰のせいで…………」
「…………知らない方がいいと思うよ。君の為にもね。」
「やっぱり知っているんですね。どうしても知りたいんです。何でもします。お願いします教えてください!」
「……………………覚悟はあるんだね?」
「はい!」
「わかったよ、ここじゃ何だから落ち着ける所で話そう。いいね?」
「はい!」
そうして青年は街の中へと連れられて行った。