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9.猫は肉食ということを、実感したよ

雑木と雑草の中に、山椒に似た葉がトゲトゲの植物を見つけた。近くによるとビー玉の大きさの赤と黒の2種類の実を付けていた。

赤が山椒で、黒が胡椒。

うん。ラッキー。

葉についている激しい主張をしている棘に気を付けながら、1粒も落とさない勢いで丁寧に摘む。美味しい食事の為に、絶対に欲しい調味料だ。


「小夜子様、赤も摘むのですか」

「うん。赤も調味料になるんだよ」

「今まで赤はハズレとして、捨ててました」

「ああ、まあ、使わない人は使わないからね。独特の臭いするし」


黙々と摘んでいく小夜子の様子を見て、周りの人たちも美味しいのかもしれないと採り始める。それを見た小夜子は、自分に出来ないことをしてもらおうと声を掛ける。


「あ、そこの足元にツノみたいに生えているタケノコお願い。それと木の実は相性がいいの」

そう言ったところで、家にあった醤油が少なかったことを思い出した。


「ねえ、ルチアーノ。醤油って作り方知ってる?」

「作る?あれはショウーユの実を潰したものだ。残念ながら家の近くの森にはなかった」


ない。

その言葉だけが小夜子の中で木霊する。

ダメじゃん!

良し、探そう。

鑑定が出来るのだ。見える範囲全て食べられるものをピックアップすればいい。

小夜子は醤油がないのは困ると、無意識に探索のスキルを使って探していた。目の前にそれなりの文字が見えるが、そこにショウーユの実はない。


「あ、ルディ。その大きな雑草みたいなのを引き抜いて。ゴボウだから」

「ルチアーノ、少しぬかるんでいるところに生えている茎を抜いて。生姜がある」


山の幸をそれなりに見つけて採ってみたが、見当たすところにショウーユの実はなかった。洞窟までたどり着くまでにも荷馬車の中から探してみよう。


「ルチアーノ達もショウーユの実、探してね」

「ああ、わかった」


そう言いながら、生姜とゴボウをなんだ?とばかりに見ている。ゴボウなんて、木の根っこを食うのかという感じだ。まあ、根っこには違いない。

同じような食事をすると言っても、猫人だからか(いや、顔も猫だしそう言っていいのか分からないけれど)あまり食べてなかったのだと思う。基本、肉食食動物だもんね。作ってみて、食べられなかったら、狩りにでも行って貰う方がいいかな。


「途中で動物が出たらお肉大事だと思うから、狩ってね」


小夜子がそう言えば、皆雄たけびを上げた。

おぉ。

肉に飢えてましたか。

先ほどよりもゴボウやタケノコを掘る速度が上がっているのだから、食事って大事。


肉を小夜子が意識したからか、画面に猪の文字が出た。どうやら生息している場所を教えてくれたらしい。


「ルチアーノ、この方向300m先に、肉(猪)いるよ」

いるよ、まで聞いてから行けよ。そう口悪く言いたくなるほど早く、居なくなった。結界内の為敵襲はないと言えども、護衛はどうした、護衛は!

荷馬車の護衛についてくれている兵士4人が、バツの悪そうな顔をして謝る。


「すみません、すみません。我々がずっと肉が食べたいとずっと言ってたもんで」


どうやら道中もウサギや蛇など狩りたいものが居たらしいのだが、小夜子がずっと体調悪く黙っていた為に言い出せなかったようだ。


「ごめんね。気づかなくて。これからは遠慮なく言って。食べ物、大事!!」

「はい!ありがとうございます!!」

戻ってきたルチアーノは、意気揚々と自分の何倍もある体を悠々と持ち上げながら戻ってきた。

「小夜子!獲ってたぞ!」

他のみんなからも歓声が上がるが、小夜子はそれどころじゃない。


いや、あまりそれらを見たいものじゃないから。

小夜子は肉なんてスーパーで切ったものしか見たことのない。それなのに、肉だからと言って、死体を嬉しそうに目の前に献上されても、困るだけだ。

これは猫が獲物を捕まえて飼い主に見せる、アレか?

それでも嬉しそうに褒めろと言わんばかりに見られたら、凄いね!と褒めるしかない。

でも、出来れば早くアイテムバッグに仕舞って欲しい。そしたら、拍手付きで褒めるから!


「血の匂いで他にも来られても困るから、仕舞おうか」

「そうか、そうだよな。解体は洞窟に着いてからするか」

「それは今日の成果として、皆の前がいいんじゃない?」

「それはいい!!」


小夜子は目の前で解体されるという、卒倒の危機を乗り越えた。

血の臭いと内臓の臭い、そして肉が切られるのを直視したら、倒れないわけがない。


ルチアーノがモテないわけが分かったよ。デリカシーがなさ過ぎる。あんた、地球で1年もいて、何を学んだの?

小夜子は子供に似合わない、深い…ふかーい、ため息をついた。



読んで頂きありがとうございました。

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