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5.鑑定スキルとルチアーノの事情

向こうの世界のことは、取りあえずこれでいい。

後は自分がゆっくりとこの世界を受け入れることだ。

さて、と。

小夜子は気持ちを切り替え、涙を手のひらで拭いた。

泣いたことでスッキリしたし、覚悟も出来た。そうなると気になるのは、私の服。体が縮んだ時に服も一緒に縮んでピッタリサイズになっているけど、着た切り雀は流石に嫌だ。川の傍に生えていた、ふきのような葉っぱを重ねて着るとかも、見た目はともかく精神が27歳の私には、無理な話だ。ならば心労を無くしてくれるという生命樹に服を出してもらおう。

それに、地球のモノと植物も果物も全く違うので、どれが自分にとっていいものなのか、毒になるのかさえ分からないのはまずいと思う。鑑定が出来るようになりたい。

そう小夜子が生命樹に問いかけると、すぐに返答が来た。


『服などの生活必需品は全て家に揃っているし、鑑定は知りたいと願えば、見れる。守護者レベルが上がれば、そのグレードが上がっていくシステムになっておる』

ほーほー。

何事もレベルアップが必要と。

ならば一体どうやってレベルアップをするのか、一番知りたいことだと小夜子は生命樹に問う。


『守護者によって、内容は異なる。信頼関係、幸福度、住民の数、生活水準のアップ等、一定ではない』

「生活水準のアップって守護者のレベルアップに頼らず、食文化が進んだとか、家を大きくしたとか、そういうこと?」

『ウム。流石だ、守護者よ』


流石だとか持ち上げているけど、要は人によって違うから、わからないってことだよね。

でも、まあ…どうにもならなかったら、また考えればいい。

そう思うと気が楽になった小夜子は、お腹の空腹感が増してきた。本格的に何か口にしたいと、その辺りのモノを鑑定することにした。

疲れている時に食べるものは、甘い物が一番。

子猫たちと競うように果物らしきものを採りながら、1つ1つ確認し始めた。




****




果物を1つ1つ手に取って一喜一憂する小夜子を見ながら、ルチアーノはホッとしていた。

猫の国、アイルーロスポリスが消滅の危機にある。だから守護者を早々に見つけて来るようにと、生命樹から地球という場所にルチアーノは送られた。

戻る方法は1つ。

守護者と認めた者を連れて戻ること。


小夜子をこの世界に引き込むつもりはなかった。

いや、面白い人間。

良い人間。

可愛い人間。

だとは思っていた。だが、それはルチアーノをただの猫だと思っているからこその、態度で。

彼氏というのは人間の番のようなものだと認識しているが、それがいないことも独り言で知っている。

条件としては悪くなかったが、この地球という世界のことを彼女は嫌ってはいない。二度と地球に戻れないなっても悲観することなく、逆に喜ぶ人間の方が都合が良かった。あと、猫を嫌わない人間。

故に、猫が集まる場所で人間観察をし、守護者となる者探していた。


意外に条件に当てはまる人間はいない。

小夜子の前に一人該当しそうな人間がいたが、男だった。

ルチアーノはアイルーロスポリスの最後の王族。ルチアーノが女なら良かったのだが残念ながら男の為、

当然対象は女性となる。

そう、守護者はイコール、ルチアーノの番になれる者。

守護者の血を残すことで、国は保っていたのだ。


結果、小夜子の拉致ということになった。

ずっと煮え切らないルチアーノに生命樹が、しびれを切らしたのだ。

ルチアーノが1年もの間留守にしたことで、アイルーロスポリスは更に国土が削られ、小さきものが全て眠りにつくという事態にまで陥っていたのだ。


『お前がぐずぐずしているからだぞ』

「わかっている」

『わかってなかろう!番に振られることが怖くて、見ているだけの奴が何を言っておる。とにかく誠意を示せ、誠意を‼!』


ここまで国が衰退したのは己の不甲斐なさ故。

そのことをこの国に戻って来て嫌というほど知り、反省をした。

――にも関わらず、小夜子が何故選ばれたか、守護者とは何かということを話せないでいた。この小さな空間で小夜子に嫌だと言われたら、王をやっていく自信がなくなる。

ルチアーノの初恋は、生命樹が強行しなければならないほど拗らせていたのだ。


『不甲斐ない、これがあの大国だったアイルーロスポリスの王か!』

「すまなない」

『そう思うなら、何度もいうが小夜子に尽くせ。お前は王の前に、一人の男として…愛を乞え』

「はい」

『情けない。ほんに情けない』


ルチアーノは一年もの間、小夜子を見つめることしか出来なかった。触れられたら、そのまま意思を確認しないまま連れ去ってしまいそうだったからだ。

だが結局、この世界が待つことを許せる時間は過ぎ去り、拉致してしまう結果となった。

わかっている。

わかってはいるんだ。

子ども扱いじゃなく、女性として扱うべきだと。


ルチアーノの拗らせた初恋は、実ることが出来るのか。

その結果が分かるのは、それなりの年月を要することになる。


『大馬鹿ものが』

生命樹も悪態付くほどルチアーノは戦いには強いくせに、番にはめっぽう弱かった。


読んで頂きありがとうございました。

ストックがキレたので、まったりと更新。

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