14.ルチアーノの敗北と更なる肉調達
ルチアーノが違う意味で瀕死になり、小夜子が元気に艶々となった頃、ドロップ品である黄金は拾い終わった。
かなり時間も経っているために、早々にダンジョンを出ようとマークが声を掛けた。
「小夜子様、ルチアーノ様、そろそろ戻りませんと」
その言葉に小夜子が我に返った。
「そうだよね。セロちゃんが待ってるし!」
あ、ルチアーノ様がセロに負けた。
そう心の中で皆呟く。
「セロ、寂しがってないかな」
「サラが見てくれてますから、大丈夫ですよ」
「そうだよね。でももっふもふを味わった後だから、小さなもふも堪能したくなっちゃった。みんなにお肉も食べて貰いたいし、早く帰ろう!」
「ええ、早く帰りましょう」
帰る途中もルチアーノにかける声が見つからず、微妙な雰囲気だったが、小夜子が疲れて寝てしまっていたので、なんとか皆耐えることが出来た。
唯一声を掛けることが出来るのは、年長者であるマークぐらいだ。
「これでわかりましたよね?ちゃんとルチアーノ様を見て頂く努力をしなければ、間違いなく毛並みがいい人なら誰でも大丈夫なんてことになりますよ?このままだとルチアーノ様は完全にペット枠です」
「だよな」
「ええ、男性と意識されていたら、幾ら小夜子様が子供の体になられたからと言って、妙齢の女性があのような行動をとられるとは思いません」
「努力する」
そうルチアーノが決意をするも、戻ってすぐに宴会をしてお腹いっぱいになった小夜子は、セロを枕元に侍らせて、早々に寝付いた。
ルチアーノの最大のライバルは、まだ小さい毛玉…小夜子に引っ付いている1歳になったばかりのセロだった。
***
寝るのが遅くなった次の日、小夜子はぼんやりしながらお昼近くに目覚めた。
「おはようございます。体調は如何ですか?」
「うん。大丈夫」
既にセロはご飯を食べ、元気いっぱいに走り回っていた。
朝食兼昼食を準備してくれるサラにありがとう、とお礼を言いながらも、まだ小夜子はボーっとした頭で考える。
レベル3になるために、何をすべきか。
やっぱりまずはあの金を売って、色んなものを外から取り入れることかな。
でも、先にそれをしてしまうと、足元見られて摂取されるだけの様な気がする。取引は優位に動けるためのカードが必要。
その為にこの国にだけあるもの、特産品を作ること。
すなわち、この国に何があるのか知ることだよね。
頭の中であの画面の軌道を念じると、早速目の前に現れた。
まず、この国の国土の地形を見る。今いる場所は山に囲まれた平野で、森の資源と水が豊富なのが見て取れる。これなら、水田は問題ない。他に色々あった種も、問題なく育つという感覚があるだけに、心配はしていない。
岩塩もあるみたいだし、イノシシはウザいほどいるのが分かるし、食べる物は困ることはない。
砂糖は欲しいから、サトウキビは植えるけど。
海…ないなぁ。
ある意味険しい山に囲まれていたから、ここまで攻められてないのが分かる。唯一隣国に繋がる道は、今は封鎖されている。
じゃあ、この山を越えた何も映し出されていない場所には何があるのだろう。
その場所をタップしたところで、画面は無言のままだ。
その場所に何があるか、行ってみるしかないよね。
まずはみんなで体力を回復に努めましょう!
まずは、肉の調達だよね。
ルチアーノとマークさんに言って、まずは森に行こう。
ご飯を食べて動きやすい服装に着替え、ルチアーノを呼んだ。
返事はルチアーノではなく、片づけをしていたサラから返ってきた。
「ルチアーノ様なら、肉の解体に行きました」
なるほど。昨日食べたのは1匹だったし、残りは早く解体しておきたいのは分かる。肉、とても重要ポイントなのは、昨日で良く分かった。
明らかに黄金よりも、反応良かったし。
外に出るとかなり沸いている場所がある。
内容は間違いなく、『肉』についてだ。
「ルチアーノ、他の動物も何がいるか確認しに行こう?」
「そうだな!」
いい返事。
じゃあ、行こう!と言いかけたら何故か、ルチアーノはみんなにジト目で見られていた。
「みんなも行きたい?なら順番に行ってもいいと思うよ」
「いえ、そうじゃなくて。確かに肉は大事ですが、小夜子様…そんなに働かなくても」
「働く…というか。地図を埋めたいというのもあるし、機動力を上げるための足も確保したい」
「まあ…それなら。まあ…肉は大事ですし」
「まあ、肉は大事だよな」
繰り返される『肉』その前の生活が分からないから何とも言えないけど、食への要求は強い。
「お酒になりそうな蜂蜜とか、果物もあれば嬉しいでしょ?」
「「それは勿論です‼!」」
読んで頂きありがとうございました。




